救済3
【無職は今日も今日とて迷宮に潜る4巻】
8月20日に出版されます!
既刊1巻〜3巻下巻もよろしくお願いします!
活動報告に表紙を載せております。
口絵も載せております!是非見てください!
あれは仕方ない。
聖龍の骨は、どこもその地域のインフラと直結していたんだ。
水を出したり、農作物を豊作にしたり、火山の噴火を抑えたり、地震を抑えたり、人々に活力を取り戻させたりともういろんな効果を発揮していた。
あんなの回収したら、そこに暮らす人々の生命が危うくなる。
とてもじゃないけど、手出し出来なかった。
「ブルルッ‼︎」(情け無い! そんなことで世界が守れるか‼︎)
いや、そうは言うけどさ、責任取れないって。
「ヒヒーン‼︎」(責任なんて関係あるか‼︎ ワイは二個も回収したんやぞ‼︎)
自慢げなフウマは、俺の前に骨を二個転がす。
拾え負け犬。
そう言っているのだろう。
俺は、へへーと頭を下げながら骨を拾う。
ここでは、成果を上げた奴が絶対だ。フウマは二個で、俺はゼロだった。もう、それだけで優劣が付いてしまった。
拾った骨を手にすると、確かにト太郎の魔力を感じる。
「リミットブレイク」
能力を上昇させて、蘇生魔法を発動する。
すると、微弱ではあるが誰かの魂を感知する。
そこに手を伸ばして触れてみると、都ユグドラシルに似た街を見下ろしていた。
都ユグドラシルよりも小規模な街だが、地球のどの都市よりも発展した街。
そこに急降下して、ある人物の前に降り立つ。
その人は、青い髪の天使で、これまで見たことのない微笑みを浮かべていた。
俺はその顔面を無性に殴りたくなった。
ぼやけた魂から手を離して、俺の力を流してみる。
すると、魂の輪郭がはっきりとしてきて、ミューレに似た天使の姿を感じ取る。
だけど、ミューレのように力強さはなく、覇気のない弱々しい雰囲気だ。
天使はゆっくりと顔を上げて、俺を見る。
全身の毛が逆立つ。
これはヤバい⁉︎
「リミットブレイクバースト‼︎」
即座に蘇生魔法を解除すると、森羅万象を使い聖龍の骨を結界に閉じ込める。
だが次の瞬間、骨から先ほどの天使が出現し、根源を滅する力を手に襲いかかって来た。
動きを拘束しているが、残念ながら根源を滅する力までは防げない。
ならば仕方ないと、容赦なく天使を潰してその力を無力化する。
潰れた天使は煙のように消えてしまい、骨だけが残った。
再び骨を手に取ると、魂はまだ残っているみたいだ。
今のは、俺が注いだ力の分だけ動いたのだろう。
こりゃ、下手に力を込められんな。
とはいえ、薄っすらとだが可能性が見えて来た。
小さな小さな可能性でしかないが、何とかなるかもしれないという希望は抱けた。
とりあえず、骨の回収は続行だ。
_____
本日は土曜日。
お休みの日というのもあり、日向は大人しく絵本を読んでいる。
今時の子のように、動画を見せる為にスマホを与えてみたりもしたのだけれど、どうにも合わないらしく、「いらない」とポイしてしまった。
どうやら日向は本の方が好きなようだ。
そういえば、ヒナタもフウマが買い集めていた漫画を読んでいたな。
本が好きなのは、前世からなのかもしれない。
さて、と俺も出掛ける準備をする。
今日は、千里と遊びに行く約束をしているのだ。
少しは気合いを入れてセットして行こう。
そんな俺の動きを察したのか、日向も起き上がって準備を始める。
どうやら、一緒に遊びに行くという約束は覚えていたみたいだ。
日向は母ちゃんに言って、洋服を着せてもらっている。
予め、母ちゃん達には許可をもらっているので、遊びに行く準備はしていた。
「オヤジ、じゅんびできた」
おう、その服似合ってるぞ。
今日は遊園地に行こうな。
日向と手を繋いで玄関に向かっていると、父ちゃんが不安そうに「最近ご近所さんに、ハルトの子供だと勘違いされてるんだよ」と呟いていた。
そりゃ、全部俺に任せているからだ。
母ちゃんとイチャつくのは勝手だが、少しは日向の面倒見ろや。
歩いて待ち合わせの場所に到着すると、保育士の格好とは違う綺麗な女性が立っていた。
手を上げて挨拶すると、日向も倣って手を振る。
千里は笑顔で小さく手を振って迎えてくれる。その視線が日向に向かうのは、きっと仕事柄だと思いたい。
挨拶もそこそこに、レンタカー屋で車を借りて移動する。
車は買おうと思えば買えるのだけれど、それ以上の速さで飛ぶフウマという乗り物がいるせいで、必要性を感じない。
今後買うとしたら、所帯を持った時だろう。
バックミラーで後部座席を見ると、千里と日向が楽しそうに話をしている。
幼稚園での日向は、不思議ちゃんでトラブルメーカーらしいのだけれど、とてもそんな風には見えない。
千里に、幼稚園での日向はどんな感じなのかと聞くと、最近は落ち着いて来ているという。おかげで、フウマも幼稚園に来なくなって、普通の幼稚園児になったみたいだという。
普通?
そんなこと言われると、これまでがどんなんだったか気になる。
そう聞くと、日向が千里に「せんせーいわないで!」と力強くお願いしていた。
その気持ちを汲んでか、千里も喋らない。なので、俺もそれ以上聞かなかった。でも、また別の時にでもこっそり聞こうと思っている。
これまでの日向が、どんな子だったのか知りたいから。
車を走らせること一時間、目的の遊園地に到着した。
地元の遊園地はそこまで大きくはなく、週末というのに人もまばらな状況だ。ここまで人が入っていないと、閉園しないかと心配になる。
俺が幼い頃は、家族でよくここに遊びに来ていた思い出の場所だ。
いつまでも残って欲しいけれど、時代の潮流には逆らえない。他の施設も閉園していると聞くし、ここも遠くない日にそうなってもおかしくはない。
そう考えると、今のうちに楽しもうという気持ちになる。
たくさん遊ぼうな、そう日向に呼び掛けると、元気よく「うん!」と頷いていた。
遊園地は、うんまあ、人が少なくて待ち時間無しで乗れるのはとても良かった。
アトラクションは、俺と千里は探索者で、素直に楽しめる物ではなかった。日向も、アトラクションよりもデンジャラスなフウマの背中に慣れてしまっているので、ボーッと乗り過ごしていた。
これは遊園地が悪いのではなく、俺達が悪い。
それでも、楽しめる所はある。
鏡の迷路なんて、千里や日向は頭をぶつけていたし、大人も遊べるボールも楽しかった。コーヒーカップなんて、日向が喜ぶほど楽しめた。景色を見ながらの食事も悪くはなかったし、ソフトクリームも美味しかった。
だから、割と満足している。
一通り回って、今は子供用の小さなメリーゴーランドに乗る日向を見ていた。
残念ながら満足していないようで、日向はブスッとしている。
そんな日向を見て、俺と千里は笑ってしまう。
一通り笑うと、少しだけ雑談をする。
楽しい時間に、こんなこと話すべきではないのだけれど、千里には全て伝えておこうと思った。
世界がダンジョン化するかもしれないというのと、あの発光する天使が日向の前世の母だと説明する。そうなっている原因も、簡単だけど知らせておく。
千里は黙って聞いてくれて、「そっか、じゃあこれから忙しくなるんだ」と日常の延長のように言う。
思っていた反応と違って、つい俺も「これからしばらく、出掛けられなくなるかもしれない」と乗ってしまった。
まだ余裕はあるから全然遊べるんだけど、まあノリだ。
「そうなんだ。……それで、次はどれくらいの待てばいい?」
寂しそうな目だった。
それでやられてしまった。
もう、無意識だった。
「千里、結婚しよう」
二度目のプロポーズをやっていた。
指輪なんて用意してないけれど、それは今後全力で準備するから許して欲しい。
あっでも、収納空間にはダンジョンで手に入れたアクセサリーがある。その中には指輪タイプの物もあったはずだ。
ここは代用に使って……。と考えて収納空間に手を突っ込んでいると、千里の反応がおかしいことに気付く。
嬉しいとかではなく、単純に驚いている。
もしやこれは、断られるパターンだろうか?
一気に不安になり、冗談だと言おうかと迷ってしまう。
でも、千里の次の言葉が衝撃的だった。
「私達って付き合ってたの?」
……。
……………ん?
…………………………あれ?
……………………………………そういえば、告白した覚えがないな。
悲報、俺達付き合ってなかった。
休みの度に遊びに行っているから、てっきりもうそういう関係になっていると思っていた。
日向がメリーゴーランドから降りている中、改めて告白して付き合えるようになった。
結婚はまあ……、まだ先になりそうだなぁってなった。




