その後の日常13
【無職は今日も今日とて迷宮に潜る4巻】
8月20日に出版されます!
既刊1巻〜3巻下巻もよろしくお願いします!
活動報告に表紙を載せております。
口絵も載せております!是非見てください!
河川敷まで吹き飛ばしたアミニクに会いに行くと、めっちゃ不機嫌そうにしていた。
何であんなことするんですか? と丁寧だが怒気を含んだ念話が伝わって来る。
一応、事情を説明するのだけれど、今更隠してどうするのか? と言われてしまった。
いやいや、隠さんといかんでしょう。
隣に力で全てを解決出来る奴がいたら、そりゃみんな怖がるだろう。
え? もう知られてるって?
やだーもう、そんなわけないじゃん。昨日だって、お隣さんと普通に会話したし、子供達だって「やーい無職ぅ〜」とか生意気言って来たんだよ。俺がやべー力持ってるって知ったら、絶対無理でしょう。
そんなこと言われてたのって?
いつも通りだけど、なんか問題あるか?
おい、可哀想な奴を見るような目をするな。マジで傷付く。
それよか、あれは何だ?
何となく予想は付いてるけど、本当にあり得るのか聞いておきたい。
そう話を変えると、アミニクは現代人の姿へと変えて、場所を変えましょうと提案して来た。
他人に聞かれたらまずい話しなのかと、緊張感が増す。
河川敷から家に帰り、粗茶ですがとインスタントコーヒーを出す。
ここには母ちゃんとマリンもいるが、まあ問題あるまい。
と思っていたら、空気を読んだのか、二人ともいそいそと出掛けてしまった。
厄介ごとに巻き込まれるのを嫌ったんだろうな。
それじゃあ教えてくれと、アミニクに話を促す。
すると、予想が一つ当たっていたのと、思っていた遥か斜め上の事態に陥っていた。
まったく、どうしてこうなるかね。
そう思わずにはいられなかった。
_____
日向のお迎えを終えると、ちょっと遅めに活動する。
空を飛び、ミンスール教会に向かう。
目的は二号のお墓を作っているのか尋ねにと、アミニクから言われた内容についてだ。
お墓については、正直難しいと思っている。
中身は二号ではないとはいえ、二号の体を使った奴が騒動を起こしたせいで、犯罪者のレッテルが貼られている。そんな奴のお墓なんて建てたら、批判の的になるだろう。
でも、もしかしたら、こっそりと作っているかもしれない。
そんな淡い期待をしている。
ミンスール教会本部に着くと、そこは割と静かな場所になっていた。
以前来た時は、人集りが出来るほど大勢集まっており、中に入るのもやっとだった。
でも今は、ほとんど人の姿が無い。
もう、潰れてるんじゃないかと思うほど、人の姿が無い。
一応中にはいるのだけど、どうにも様子がおかしい。
ごめん下さいとチャイムを鳴らすと、幼い声が聞こえて来た。
扉が開くと、そこには声の通り幼い子供達がいた。
顔を覗かせた子供達は、最初は笑顔だったけれど、俺の顔を見た途端曇っていき、ダーッと奥に引っ込んでしまった。
開いた扉から中を覗いてみると、そこには大人になった厨二野郎がいた。
よお、久しぶり。そう子供達に囲まれたカズヤに挨拶をする。
顔を顰めていて、例に漏れず俺のことが誰か分かっていない様子だ。だから、俺だよと名前を言おうとすると、その前に言われてしまう。
「お前は……もしかして田中か?」
おっ……おおーっ⁉︎
お前で三人目だぞ、俺が田中だって分かったの⁉︎
え? 魔力にユグドラシルの物も混ざっているから分かったって?
ええー……。カズヤって、魔力で人を判別する奴だったの?
違う? 最初は痩せていて分からなかったって? ほとんど勘だったと。
おまっ⁉︎ そんなガッカリさせること言うなよ〜。
何だかんだ、知り合いから誰? って言われるのキツいんだよ。
そんな愚痴を吐いていると、カズヤは「で、何の用で来た?」と仏頂面で、まるで俺を邪魔者のような目で見て来た。
まあお邪魔したのはこっちだし別にいいかと、さっさと用件を告げる。
どうやら、二号のお墓はあるようで、教会の中でも奥の方に立てているという。誰かに知られて、文句を言われるのを嫌ったからなのだとか。
カズヤの後を付いて行くと、子供達も同じように移動する。
なあ、この子達ってここに住んでいるのか? そう尋ねるのだけど、仏頂面はそのまま教えてくれた。
どうやら、半数が今ダンジョン探索している人達の子供で、もう半数がここで育てているという。
本来なら、ギルドが運営する児童養護施設に預ける方がいいのだが、この子らの亡くなった両親からの要望で、ここで面倒を見ているらしい。
こいつ、変わったな。
前は厨二のアホの子だったのに、しっかりしている。
ただ、その顔はやめといた方がいい。
子供の中には、カズヤから距離を取っている子もいるから。
それを、その仏頂面やめろとストレートに伝えると、カズヤは立ち止まり顔を手で覆った。
そんな顔してたかって?
してたよ。不細工な面が、更に不細工になってたわ。
やかましって、教えてやったんだろう。
ああ、気にしてたんだ。
へー、周りの奴らから侮られないようにしてたら、そんな風になったのか。
「気を張っていると、どうしても顔に出てしまう。まったく、厄介な物だ」
そう言って手を離すと、そこには懐かしいカズヤの顔があった。
まだ社会人になりたての歳。
いくら前世の記憶があるとはいえ、既存の組織のトップに立てば反発も大きいだろう。
たとえ、二号や大道が認めたとしても、大量にいる信者が従うかはまた別だ。
そこで気付いた。
だから、ダンジョンを50階まで潜ったんだなと。
少しでも、実力と実績を積んで、批判の声を退けたいのだろう。
こいつも大変なんだなぁ……。
まっ、俺は何も出来ないけどね。
自分で選んだ道なんだから、頑張れとしか言えない。
ただ、どうにもならなくて助けを求められたら、出来る限りのことはしようと思っている。
カズヤに連れられて、世界樹の枝を祀っている祭壇の前を通る。
そこには、大人たちがいて、他の子供の面倒を見ているようだった。
付いて来ている子供達を預けると、祭壇の奥に向かった。
暗い廊下。
その突き当たりの壁には、魔法陣が浮かび上がっていた。
どうやら強固な結界のようで、プロの探索者レベルでは、ここは突破出来ないだろう。
その魔法陣に、カズヤは魔力を流し込むと、壁はスライドして開いた。
凝った仕掛けだと思うのだけど、それよりも今は、目の前のお墓だろう。
中庭というには狭い場所。
中央にポツンとお墓があり、吹き抜けの天井から明かりが差し込んでいた。
近くに、小さな木が植えられているのは、二号が寂しくないようにという思いからだろうか?
その小さな木には、小鳥が止まっており俺達の姿を見ても、逃げようとはしなかった。
……これ、お前の召喚獣か?
そう問い掛けると、カズヤは頷いた。
右腕に嵌めているブレスレット。そこから魔力の繋がりが見えるので、スキルではなく魔道具から生み出された物だろう。
どうやら、外にも放っているらしく、周囲に目を配っているという。
ふーん……ストーカーとかすんなよ。
「誰がするか⁉︎ さっさと墓参りしろ‼︎」
カズヤに促されて、お墓に手を合わせる。
ここに二号の遺灰も、魂も無いことは知っている。
それでも、ここにしか二号のことを思ってやれる場所は無い。
二号を偲びながら、いろいろと報告をしよう。
思っているだけじゃ伝わらないだろうから、口にする。
カズヤが背後で聞いているけれど、気にしてもしょうがない。
ユグドラシルとも繋がっているんだし、いずれ何らかの形で情報は与えられるだろう。それが早まっただけ。そう考えておこう。
二号に一通り報告を終えると、カズヤがガン見して来る。
おい近寄んな、離れろ、だから顔近づけんな⁉︎
俺は世界樹じゃないの⁉︎
お前に注目されたくてやってんじゃねーんだよ⁉︎
もう一個、大事な報告があるんだよ! 大人しく聞け‼︎
そう言うと、カズヤは大人しく引いてくれた。
いや、背筋がピンとしているから、これまでと違ってはいるだろう。
でも、いいや。
ミンスール教会には、治癒魔法使いが多く所属している。もしもの時は、こいつらに頑張ってもらわないといけないからな。
俺は、背筋を伸ばしたカズヤに向かって告げる。
「このままだと、地球がダンジョンになる」
アミニクに言われた内容を、そのまま告げた。




