その後の日常12
【無職は今日も今日とて迷宮に潜る4巻】
8月20日に出版されます!
既刊1巻〜3巻下巻もよろしくお願いします!
活動報告に表紙を載せております。
口絵も載せております!是非見てください!
SNSを見ると、発光する天使の目撃情報が数多く上がっていた。
メディアでも取り上げられており、ニュースでは目撃した人のインタビューが流れている。
救われたという声から、被害を受けたという声まで幅広く取り扱われている。
被害と言っている奴は、適当にいなされただけだろう。
根源を消滅させる力を持った奴が攻撃したら、一般人なんて弾け飛んで終了だ。とてもではないが、大袈裟に言っているとしか思えない。
……なら何で、俺には攻撃して来たんだ?
ちょっと解せないんだけど。
アミニクが調査しているけれど、まだ発見出来ていないようだ。
もしかして死んだか?
そう心配するが、相手はヒナタ並みの強さがあるのは伝えているので、そこまでの深追いはしないだろう。
とりあえずは、報告待ちだ。
いざとなれば直ぐに動けるように、準備はしておこう。
というわけだから、日向機嫌直してくれないかなぁ?
俺な、そろそろ働かないと社会的に死んじゃうんだよ。
日向と遊んでいたいけど、そうもいかないんだ。
分かってくれよぉ〜。
えっ、マリンは働いてないって?
……おいマリン、テメーも働け。
「働いてるって、ほら昨日なんてデイトレで一千万稼いだよ」
今日は人の足のマリンが、スマホの画面を見せて来る。
そこには、嘘くさい桁の数字が並んでいて、明らかに加工した物だと分かる。
つーかこの場合、金の問題ではない。
金を稼ぐだけなら、俺だって稼ぎ終わっている。
この世界ではな、社会と関わらなければ人生損をしてしまうんだよ。
「だから働いてるって。はい、モデルやってる雑誌」
マリンが渡して来たのは、マリンが表紙を飾っているファッション誌だ。俺でも聞いたことあるような有名な雑誌で、表紙には毎回女優や一流のモデルが起用されていた。
中身を見てみると、最初の10ページがマリンの写真で、日常の一コマのように写されていた。
……ここまで加工するなんて、ある意味尊敬するわ。
「本物だって⁉︎ 主様疑い過ぎじゃない⁉︎ 日向っちからも言ってやってよ‼︎」
おい、日向を巻き込むな。
俺から生み出されたお前が、こんなに成功してたまるか。
これが本当なら、俺は嫉妬して死んじまうだろうが。
そう告げると、マリンは「うわぁ……」とドン引きしていた。
前々から思ってたが、フウマもマリンも俺へのリスペクトが感じられない。創造主に対して、もっと尊敬の念を抱くべきではないだろうか。
……いや、それはいいや。
こいつらからそんな目で見られたら、そっちの方が気持ち悪い。
日向に幼稚園行こうなと手を伸ばすと、ギュッと掴んでくれる。
怒っていても、これは前から変わらない。
母ちゃんに行って来るよと伝えて、日向と一緒に家を出る。
最近は自転車を使うようになっていて、後ろに日向を乗せて出発だ。
今日は天気も良くて、朝のヒンヤリとした空気が気持ち良い。
他の保護者ともすれ違い、軽く会釈をして挨拶をする。
もう少しで幼稚園だなぁという所で、予想外のお客さんが現れた。
俺は自転車を止めて上空を見る。釣られて、日向も見上げる。
そこには、発光する天使の姿があった。
おいおいここでかよ……。
そう、ガチめに焦る俺。
仕掛けられる前に、速攻で潰すべきか?
何もされないのを祈って待つべきか?
ここで暴れたら、どれだけの被害が出る?
森羅万象を使えば、被害は抑えられるか?
どこか、別の場所に移動出来ないだろうか?
排除する手段と、被害とを天秤にかけて考え、全てを却下する。
もしここで何かあれば、俺達の日常は終わりだ。
日向も幼稚園に通えなくなるし、奇異の目を向けられるようになる。
考えに考えて……ここは、知らんぷりして幼稚園に行こうと現実逃避した。
「オヤジ、あれ」
そう日向が指差すが、あれは見ちゃいけない物だからと教えておく。
幼稚園に到着すると、幼稚園でも騒ぎになっており、あれは何だと園児達が指差しているのだ。
日向を自転車から下ろして、千里におはようと挨拶をする。
千里は「あれ大丈夫なの?」と発光する天使を気にしているようなので、全然大丈夫じゃないけれど、大丈夫だと言っておく。
だって敵意は無いし、魔力に揺らぎもなく動く気配も無い。
だから大丈夫。
なんて言い聞かせていたら、突然動き始めた。
こっちを見ている。
以前とは違い、微かな意思を感じ取れる。
発光する天使は動き出して、こっちに向かって来る。
焦る。
どうするべきだと並列思考で考える。
消すのは難しくない、被害が出る前にやるべきだ。だが、この天使に悪意はなく、寧ろ……。
天使は俺の隣に降りて来ると、足音もなく着地する。
ゆっくりとした動作でしゃがむと、日向と目線を合わせた。
ジッと見つめ合う二人。
周囲も黙ったまま、その様子を見守っている。
しばらくすると、日向が困ったように俺を見上げる。
俺もどうするべきなのか分かっていない。
だが、悪意を感じないので、日向に危害を及ぼすとも思えない。
なので、日向の好きにさせようと決めた。
いざとなれば、光よりも早く消滅させてやる。
俺が頷くのをみると、日向は発光する天使に一歩近付く。
そこは天使の手が届く距離。
天使はまたゆっくりとした動作で手を伸ばすと、ヒナタの頬に触れる。
すると、光の中の天使が微笑んでいるように見えた。
警戒は怠らず、天使の動きを観察する。
だが、これも杞憂だったようだ。
天使はスッと離れて、その場から飛び退いた。
次の瞬間、上空から赤髪の天使が槍を突き刺す。
アミニクだ。
追撃するように発光する天使に仕掛けるが、まるで初めからそこに居なかったかのようにフッと消えてしまった。
虚空に槍を突き出したアミニクは、『逃しましたか』と残念そうに呟く。
それから振り返って、俺に何か言おうとしたので、風属性魔法で遠くに吹き飛ばした。
アミニクが驚いて『えっなんで?』みたいな顔をしていたけど、これは仕方ない。
こんな所で、巷で噂の天使と知り合いとか言われたら目も当てられないからだ。
悪いが、俺達の平穏の為に、ここはお暇してもらいたい。
振り返って、千里に日向をよろしくと預ける。
千里が、「いいの?」と困惑しているが、いいのいいのと適当に言っておく。
日向に頑張ってこいよと頭を撫でると、困ったような顔で口籠っていた。
どうしたんだ? と尋ねると、「……あのひとと、あったことある」と呟いた。
それはどこで? と再び尋ねると、分からないと肩を落としていた。
忘れたのなら仕方ないなと、頭を撫でながら慰める。
天使関連は、日向の前世に関係している。
それはつまり、今の日向には関係の無い話しだ。
もし日向の平穏を邪魔するのなら、何者であろうと容赦するつもりはない。
たとえ、日向に愛情を抱いていたとしてもだ。




