その後の日常6
【無職は今日も今日とて迷宮に潜る4巻】
8月20日に出版されます!
既刊1巻〜3巻下巻もよろしくお願いします!
活動報告に表紙を載せております。
話を聞き終えると、全員拘束して探索者監察署に向かって飛ぶ。
こいつらが俺を襲った理由は、フウマにあった。
原因はフウマだけど、召喚主である俺の責任だろうと言われたらその通りなのかもしれない。
納得出来ないけど、そうなのかもしれない。
こいつらは、『お庭番』とかいう裏の世界の人達らしく、今は跡目争いの真っ最中らしい。
対立する勢力が、フウマっていう超絶ヤバめな召喚獣を仲間にしたせいで、今にも負けそうなのだとか。
この状況を打開すべく、召喚主である俺を殺してフウマという存在そのものを消そうと画策したらしい。
アホかと思ったので、一発殴っておいた。
召喚主の俺が、フウマより弱いわけないだろうが!
そう抗議すると、普通は召喚獣の方が強いと言われた。
召喚系スキルを持つ奴は少ないが、そいつらは総じて召喚した召喚獣より弱いという。
例外としては、装備品やアイテムにそういう能力があった場合だ。
この場合は、短時間力を発揮出来るが、時間経過と共に消滅するらしい。
フウマを見る限りそういう兆候が無いから、俺のスキルによって生み出された召喚獣なのだと誤解したらしい。
最後に、俺のことを知らなかったのかと聞いてみる。
数年前、地球で大暴れしたのもあり、俺は危険で警戒すべき存在だと見做されていたはずだ。
デカいドラゴンとの死闘の映像は、今もネットの海に残っていて、勝てないことくらい分かりそうな物だ。それなのに、こうして俺を襲った。まるで意味が分からない。
奴らの返答は、
「日本の未来の為だ。我らはその為だけに生きている」
そう強い意志を込めた目で言われてしまった。
不覚にも、ちょっとだけカッコいいなと思ってしまった。
まあ、だからといって容赦するつもりはないけどね。
探索者監察署の本部があるタワーに到着すると、気を失った奴らを引き摺って中に入る。
以前にも来たことがあるので、勝手知ったる他人の家よろしく地下に向かうエレベーターのボタンを押す。だけど、反応しない。何度押しても反応しない。
あれ? もしかして引っ越した?
下に人の気配はあるから、それはないはずなのだけれど、ボタンが反応しない。
エレベーターが壊れたのか? そう疑問に思っているとエレベーターが上がって来た。
チンという音と共に開いた扉の向こうには、憎たらしい顔があった。
チッ、いきなりテメーかよ。
「久しぶりだというのに、酷い言われようですね」
そう言いながらも、そいつは笑みを浮かべており気にした様子は無い。
黒一。
この世で一番嫌いな奴だ。
黒一は、その方達は? と拘束した奴らを見て尋ねて来るので、ちゃんと仕事しろよな! と言いながら引き渡した。
一応、こいつらは『お庭番』とかの組織で、俺を襲って来たということは説明する。どう対処するかは任せるけれど、次俺の前に現れたら、容赦するつもりはないとも伝えておく。
用事も済んだので帰ろうと背を向けると、黒一から呼び止められる。
なんだよ?
そうぶっきらぼうに尋ねると、黒一は笑みを浮かべていた。
「ダンジョンを減らしていただき、ありがとうございます。私としても、混乱する世の中は好みではないので、とても助かりました」
感謝の言葉。そのはずなのに、含みがあり過ぎて素直に受け取れない。つーか、こいつの言葉は聞くだけ無駄なので、ああそうかよ、と適当に返しておく。
まともに相手してたら、血管がブチ切れそうだ。
あとはこいつらに任せて、俺はフウマの所に向かった。
_____
黒一は、出て行く田中ハルトの背中を見送る。
「嫌われたものですね」
それは昔から変わらないので、別に気にしていない。
感謝の言葉も受け入れてもらえないのも理解している。
とはいえ、黒一は本心からハルトに感謝していた。
ダンジョンが無数にある世界を、黒一は望んでいない。
探索者が暴れて、混沌とした世界になるのも悪くはないが、それだと魅力的な人物が埋もれて消えてしまう。
それは、余りにももったいない。
黒一はただ、足掻き輝く人がどん底に落ちて行く姿を見ていたかった。
ただ、それだけなのだ。
拘束された男達を見る。
「それにしても、御庭番ですか。話には聞いてましたが、まだ存在していたとは……」
表には出て来ない、探索者協会の成り立ちの資料。
その中に、御庭番の名前が出て来る。
多くの探索者を手にかけたが故に、多くの恨みを買い、世樹マヒトと天津平次の手によって壊滅した組織。
「表に出て来なければ、私も関わる気はなかったんですがね……」
よりにもよって、田中ハルトを襲撃した。
それは、あってはならないことだ。
襲った者、組織が消されるだけならまだいい。だが、下手をすれば日本どころか、世界まで破滅に向かう危険があるのだ。
とてもではないが、放置出来なくなった。
こうなった以上、御庭番という組織には消えてもらうしかない。
「正体不明の天使に続いて、仕事が増えますね」
仲間達には申し訳ないが、残業続きになるだろう。
特に死者との対話が可能な宮塚影美には、頑張ってもらう他ない。
「さあ、尋問の時間ですよ」
満面の笑みを浮かべて、拘束された男達に告げた。




