その2 彼女は点火します。
バカ騒ぎした日の放課後、恐る恐る常盤さんに話し掛けた。
「常盤さん、昼休みはありがとう。それにごめんね、巻き込んじゃって」
さぞや迷惑だったろうな。けれど常盤さんはワタシの顔をしげしげ見ると
「別に。面白かったし、みんなも楽しんでいたみたいだからいいんじゃない?」
と意外な返答をしてきた。と、そこですっと泉美が駆け寄って来る。
「大丈夫だよー、ナルミンは顔は怖いけど優しいんだからー。映子ちゃんのことも気に入っているしー」
ナルミン? なにそれ?
「私とナルミンは仲良しだったんだよー。中二の時ナルミンが転校しちゃってイズナルコンビは解消しちゃったけどー」
「泉美ぃ。顔が怖いって何よ! それにナルミンはいい加減やめてって言っているでしょ。恥ずかしくてしょうがない。まったく、せっかく離れられたのに、高校でまた一緒のクラスになっちゃうとか、ちょっと頭痛いわ」
憎まれ口ながら口調が柔らかい。仲が良かったというのは本当みたい。
「あの、気に入っているって……。ワタシ、嫌われていると思ってた」
「ええ、脳内お花畑のコは嫌い。私より胸の大きなコもね。それに私より頭の良いヤツも嫌いかな」
ゔっ。お花畑って……。否定できない自分が恨めしい。
常盤さんはニヤニヤ。意外に意地悪っ子? でも何だか親近感。
って、あれ? 胸が大きいのは泉美のことだよね。でも頭の良いヤツって誰? この流れだと……。
ウソッ! 芳樹君のこと?
「知らなかったの? 寺山君もとい二股君は、あれで成績良いのよ。前の中間試験は学年15位だもの」
「「えっ、ホント?」」
「浦和先生にプリント届けに行ったら、成績表みたいの作っていてね。こっそり覗いたら……。まったく嫌になるわ。青春こじらせ野郎に成績で負けていたなんてね。ホントむかつく」
あ、なるほど。それもあって「なんかむかつく二股野郎」だったんだ。
学業優秀だと知って、またまた芳樹君を見直すワタシ。何だかいろいろ出てくるのよね、ビックリ箱みたい。中学の時はそれほどじゃなかったと思うけれど、多分地頭が良いんだろうな。
なので、またまた気分がハイ。
「ねぇ、明日か明後日デートしよっ!」
「映画行ったりーカラオケ行ったりー」
他にもプリクラとかね。泉美と一緒に考えたさりげなくスキンシップを取れるデートコース。手を握ったり、体を寄せあったり。
けれど芳樹君は返事は……。
「明日は忙しいから無理かな。日曜は午後からなら」
「えー、忙しいって何で? バイトしている訳じゃないでしょ」
「午後だけなんてイヤだー。もっと一緒にいたいー」
ちょっとぉ、こっちはもう火が点いちゃったんだよ? 一緒に燃え上がろうよ。
「ほら、もうそろそろ試験でしょ。このままじゃ進級できなくなりそうだから勉強しないと」
誓いのキスは失敗したけれど、今度は逃がさないんだから。
「嘘つかないで。ワタシより成績良いの知っているんだから」
「そうだよー、学年で15位だったんでしょ」
ふっふー、こっちは証拠を揃えているのよ。しかもソースは信頼できる常盤さん。
あ、そう言えば泉美との関係を知った時、余計な一言で常盤さんにまた睨まれていたっけ。
「ナルミン常盤か」
「寺山君? 今度それ言ったら卒業まであなたのことは「二股最低野郎」と呼ぶからね」
常盤さんの耳聡さにはワタシも肩を竦めるしかなかったけれどね。
「ほらー、浦和先生ってあー見えて結構ズボラなんだよー。パソコンで成績一覧表みたいの作ってて、そのまま開きっぱなしにしてたから、プリント届けに行ったナルミンが見ちゃったんだってー」
泉美の言葉を聞いてちょっとだけ嫌な顔をする芳樹君。知られたくなかったのかな? 自慢してもいいくらいなのに。
と、ここで思い付いた一つのプラン。うん、これなら高校生にピッタリじゃない?
「あ、そうだ。じゃあ勉強教えてくれる?」
「いいねいいね。どこでにするー? 映子ちゃん家? それともやっぱり芳樹君の部屋?」
やだなぁ泉美、そこは当然……。男の子の部屋って入ったことがないのよね。これもある意味初体験。
で、いずれはそこでムフフな初体験。うん、決定!
「じゃ日曜日は勉強会ということで芳樹君家に集合」
「私おやつ係ー。クッキーとか焼いていくー」
もし汚部屋だったりしても大丈夫、キチンと掃除してあげるから。そうしたら、一緒にいろいろなことをお勉強しましょ!




