その1 彼は進化します。
先日の一件で、オレは新たなニックネームを獲得した。それは「二股君」
しかも担任の先生からは「魔女の使い魔」の烙印を押された。
ふっふっふっ、羨ましいだろう。
……。
いや、まぁいいんだけどね、うん。
なにしろ、バスケ部でも「おっぱい魔人」の二つ名を頂戴しているから。
いや、最初は普通に「おっぱい星人」だったんだ。これを普通と言うのもどうかと思うが。
意外に球技大会のことを憶えている人が多かったのが運の尽き。体育館で一緒になる部活連中からそう呼ばれるようになって、もう恥ずかしいたらありゃしない。
で、いつだったかな、女バスの先輩何人かが自分の胸を両腕で「寄せて上げて」をしながら
「ねぇ、私達のおっぱいはどうかなぁ」
とか揶揄ってきやがって。うん、生きてて良かったと思ったけどね。
問題はその後。それを見ていた男バスの先輩から
「お前、「おっぱい星人」というより「おっぱい魔人」だろ」
とか言われて、めでたく進化? おっぱいサイコー!
……。
はぁぁ……。
ま、冗談はさておき、オレは部活でもなんとかうまく? やっている。意外にも中学ん時のこと覚えている先輩もいて、中途半端な時期の入部でもすんなり認めてもらえた。
サーキットトレーニングには参加させてもらえないから、マネージャー的なことを主にこなして、部にも馴染んできたところだ。
今はボールに触れるだけで楽しいし嬉しい。バスケサイコー!
ボールとおっぱい、どっちを選ぶと言われたら、今はボールと答えるぜ。
……。
すみません、嘘つきました、おっぱい触りたいです、はい。
で、だ。こんなふうに煩悩を暴走寸前にまで滾らせているところで、二人のカノジョは今日も今日とて……。
「ねぇ、明日か明後日デートしよっ!」
「映画行ったりーカラオケ行ったりー」
暗がりアンド密室。良からぬことを考えろと言わんばかりのチョイスはやめて。
「明日は忙しいから無理かな。日曜は午後からなら」
「えー、忙しいって何で? バイトしている訳じゃないでしょ」
「午後だけなんてイヤだー。もっと一緒にいたいー」
いや、お二人さん。オレにも都合というものがありましてね。毎週土曜日はたまっているものを片付ける日。これが結構大変。で、その疲れを癒すため日曜日は昼まで寝る日と決まっているのですよ。
「ほら、もうそろそろ試験でしょ。このままじゃ進級できなくなりそうだから勉強しないと」
学生の本分はやっぱり勉強だよな、うん。
「嘘つかないで。ワタシより成績良いの知っているんだから」
「そうだよー、学年でも15位くらいなんでしょ」
ちょっと待て泉美、何でオレの順位を知っている?
ウチの学校は試験結果を大々的に公表することはない。上位30名の順位表を掲示板に、なんて漫画みたいなことはないのだ。各教科の点数、学年順位、そして総合順位をまとめたものを配られるだけだ。もちろん、それを見せ合ったりしている連中はいるが、オレはそんなことは一切したことがない。
「ほらー、浦和先生ってあー見えて結構ズボラなんだよー。パソコンで成績一覧表みたいの作ってて、そのまま開きっぱなしにしてたから、プリント届けに行ったナルミンが見ちゃったんだってー」
ナルミンというのはクラス委員常盤大明神様のことだ。何でも泉美と小三から中一まで同じクラスで仲良しだったらしい。常盤が親の都合で転校してしまい、高校に入って再会したという。
「イズミンとナルミンでイズナルコンビだよー」と嬉しそうに話していたが、常盤にとっては黒歴史? のようだ。
それを聞いて
「ナルミン常盤か」
とオレがボソっと呟いた時、大明神のくせに地獄耳を発揮して
「寺山君? 今度それ言ったら卒業まであなたのことは「二股最低野郎」と呼ぶからね」
と凄まれてしまった。目力強し、とっても怖し。
それにしても、浦和先生ダメっしょ。個人情報漏洩? まったくあの人もなぁ……。
「あ、そうだ。じゃあ勉強教えてくれる?」
「いいねいいね。どこでにするー? 映子ちゃん家? それともやっぱり芳樹君の部屋?」
なぜ家じゃなく部屋に限定する?
部屋はダメだぞ。女人禁制だ。男子の性域なんだから。
「じゃ日曜日は勉強会ということで芳樹君家に集合」
「私おやつ係ー。クッキーとか焼いていくー」
ちょっと待て二人とも。あなた達、頭良いよね。教えるまでもないよね。




