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図書室と先輩~ネオ!~  作者: にま
彼の欠点、彼女の短所
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その23 彼はそろえます。

 あれは天国だったのか地獄だったのか……。って何でやねん! 

 あー、危ないところだった。一瞬だったけど本当に意識飛んじゃったよ。


「凄かったわ、大原さんの変則肩固め。新開さんの腕ひしぎもお見事」


 自分のことを棚に上げている人がいるんだが? それに引き換え……。


「ごめーん、そんなつもりじゃなかったの。ホントごめんね」

「ごめんなさーい。まさかこんなことになるなんて思ってなくてー」


 この二人のかわいいことかわいいこと。うん、二人はお姫様でいてね。決して魔女にはならないで、お願い。


「あー大丈夫大丈夫。逆に肩も肘もすっきりした感じ。ありがとね」


 それにね、あのプニュ感の代償だと思えば、うん、安いもん。


「ダメよー二人ともそんなにいじめちゃ。気持ちは分かるけど」


 それ、どういう気持ち? 分からんでください、そんなもん。


「今オレをいじめていたのは誰でしたっけね」


 変則過ぎるフロントスリーパー。肘が首筋に当たっているとは思ったけど、まさかあの体勢で絞めてくるとはな。口も鼻も塞いでの頸動脈か。……下手すりゃ死ぬじゃん、おいっ! 


「私は二人みたいに関節極めたりしてないでしょ。やだぁ、そんな顔、し、な、い、の!」


 いや先輩? そんな指チッチされてもですね……。

 くぅ、ダメだ、これは何を言ってもドツボにはまるだけだな。下手に言い返そうものならさらに手痛いしっぺ返しをくらうのがオチだろう。経験に学んだとは言え、これはこれで悔しいものがある。だけどなぁ、それ以上にいい思い? したような気もするし。先輩の胸の感触、……正直に言おう。いかった! すっごくいい香りもしたし、天国ということにしておくか? 極楽でもいいかな? ただ下半身への伝導率が低めで、ネタにはできないっつーかしないっつーか、でもとにかくいかった!

 

「ここはお礼を言うところなんすかね? でもまぁ、そうっすね、滅多にできない体験でした。アザース」


 先輩なりに慰めてくれたのだと思えばね、まぁ腹も立た……ないということにしておこう。


「よしよし、素直でよろしい。直接は大原さん担当みたいだからそっちに頼んでね」


 それやめて。ちょっとやばいです。


「先輩! 泉美は別にそっちの担当じゃありません!」


 ほら、映子がいきり立っちゃったじゃないですか。やめてくださいよ、もう。


「芳樹くーん、言ってくれればいつだってブラ外すよー」


 だからね、泉美もそこでノらないでくれる? あーほら、顔真っ赤にしてるじゃん。


「泉美! あんまり調子に乗らないで! そんなこと言うならワタシだって!」


 バシッ!  

 顔を両手で挟まれたオレ。上目遣いで睨んでくる映子。

 痛いですよ映子さん? 何すんの? しかも眉間に皺寄っているんですが?

 あ、マズイ。これはアレだ。引くに引けなくなってヤケになっているパターン? 

 泉美はおっぱい、映子はキスって言ってたなぁ。……まさか? お、おい、目を閉じるなぁ! 顔を近づけるなぁ!


「はい、そこまでー」

 

 後3cmというところでオレと映子の唇の間に、いつの間にかカウンターから出てきていた先輩の手が差し挟まれた。勢い余って映子はそのまま先輩の右手の甲に唇を押し付ける形となり、おそらくその目論見は不発に終わった。オレはというと……。


「いひゃい、いひゃいっす! はじゅえゆっす!」


 顎関節? さっきあんなに細くて綺麗と感じた指に顎をガシッと捕らえられていた。猛禽類どころではない。これは恐竜の爪だ。アイアンクローならぬダイナソークロー? 痛いですぅ!

 

「新開さん? ここが図書室だってことわかってる? 大原さんもこんなところでブラ外そうとしないの!」


 どの口が言うんですかね? ま、それはいいんですけど離して下さい。このままじゃ、メシが食えなくなりそうです。躊躇なくクロー攻撃くらわすとかやめて。てか、何でオレがこんな目に?


「よーしーきー。あなたも隙があり過ぎよ」


 えー、それはちょっと納得いかないんですが? あんなことしてくるとか普通考えもしないですよ?


「すみませーん」

「はーい。わかりましたー」


 二人も先輩に睨まれてシュンとなっている。ふむ、さすが図書室の主。貫録勝ち? 

 おっと、二人もまだ負けていない。


「あ、でも先輩だってハグしたじゃないですか?」

「そうですよー。ギュッっと抱きしめてたじゃないですかー」


 ハグ? ギュッ? そんなかわいいもんじゃなかったぞ、あれ。死に掛けたような気がするんだが?


「逆転したらって言ってましたよね。先輩だけずるいじゃないですか?」

「そうですよー。なら私達だってー」


 そういえばそんなこと言ってたなぁ。ここは二人に分があるか? さて、この抗議に先輩の反応は如何に? チラッ。

 すると先輩は腰に手を当て呆れたような顔を二人に向けていた。


「よく思い出してくれる? 逆転したらハグ。その次に何て言った?」


「えーと……、たしか100点取ったら「いいこと」って」

「さっさと本気出しなさい?」


「そうそう。だからずるくもなんともないわよ」


 ? 何だ、意味がわからん。いつオレが100点も取ったって言うんだ。それにあれが「いいこと」だったのか? まぁ確かにいかったが。


「先輩? 芳樹君が取ったの10点くらいですよ?」


 頭の横に疑問符を貼り付けたかのように首をかしげる二人。オレも多分同じ顔。


「期待以上の活躍してくれたしね、その頑張りに120点あげたわけ。でも最後でドジったからマイナス20点。はい、新開さん、差し引き何点?」


「ひゃっ、100点です」


 突然指名されてキョドる映子。ビクッと肩が少し上がるところがかわいいぞ。


「はい、せいかーい。……ということで文句はないわよね」


 一瞬唖然呆然。えっ、100点ってそっち? バスケの得点じゃなくて? 


「「「えーっ!」」」


 もうこれにはオレも思わず声を揃えてしまう。無茶振りとは思ったけどそう来るかぁ。


「「ずっるーい!」」


 二人が顔を真っ赤にして猛抗議するも先輩はどこ吹く風で。ダメだ。やっぱりこの二人でも先輩には敵わない。


「とにかく二人とも、ここであまりふざけないでちょうだい」


 どの口が言うんだか。でもまぁ言っていることは意外とマトモ。


「やるのなら書庫室にして。先生がいない時なら使っていいから」


 ……じゃなかった。


「この間、掃除したばかりだし」


 ちょっと待てぇ! 掃除したのオレでしょうが! 


「「え、いいんですか!」」


 おい、なぜそこで目を輝かせる? 先輩も! さすがにそれはダメでしょっ!


「ベロチューしようがおっぱい吸わせようが構わないわよ」


 こらぁ、なんちゅーことを! あれ、そういえば関先生って今いるのかな?


「先輩? 今日は関先生は……いますよね」


 何か嫌な予感……。


「むふふぅ。さっき職員室行っちゃったわよ。ちょっと時間かかるかもって言ってたから、当分は戻らないかな」


 手を口に当ててニヤニヤしている人のことは放っておくとして。

 さて、こんな場合……。


「お疲れ様ーっす。用事思い出したんでお先っす」


 逃げるしかないよな。

 

「二人とも女子会したいんだろ。書庫室使わせてもらえば? オレは先に帰るから後はよろしく」

 

 なりふり構わず、脱兎の如く。そう決め込んで一歩後ずさったのだが……。


「に・が・さ・な・い!」

「先輩の許可も下りたし、一緒に行こー」


 げっ、何そのフットワーク?

 瞬間移動よろしく、二人は素早い動きでオレの両脇に回り込みガッシリと手首を掴んできた。うーん、侮っていた。

 しかも綱引きの要領で引っ張るものだから振りほどく暇がない。

 あっ、ちょっと待って二人とも! 

 身長差からか斜め前方に力がかかり、少し屈んだ状態で右足を踏み出してしまった。膝が曲がったままだったため踏ん張りが利かない。これはヤバイ! 

 そしてそのまま前のめりに倒れそうになった時だった。ガツン! と顎に衝撃を受けた。


「二人とも手を離しなさい! っと、さすがに男の子は重いわね。大丈夫? 膝抜けしたでしょ」 


 仰るとおりです。ここまで力が入らないなんて自分でも思っていませんでした。 

 って、えー! 何この状況?

 オレは勢いそのままに先輩に抱きつく格好になっていた。しかも膝が崩れたものだから肩に顎を乗せてもたれかかっている。腕はというと先輩を抱え込むように背に回していた。


「す、すみません」

 

「あわてなくていいわ。まずはゆっくり足に力を入れてくれる? それともこのまま私を押し倒す?」


 柔らかい声が耳元をくすぐる。冗談を忘れないのが先輩らしい。

 他に手をかける場所がなかったために、先輩の肩を掴みながら左足で踏ん張り、ようやく体勢を立て直す。

 オレ65kgくらいあるのに先輩って凄いな。この華奢な体のどこにそんな力があるんだろ。それに……、もっと筋張っているかと思っていたのに意外と肉付きがいい? とても柔らか。

 しかも凄くいい香り。映子も泉美もいいんだけど、なんだろ先輩のってちょっと違う。こんな時だけどドキドキしちゃったよ。


「ありがとうございました」


 離れ難い気持ちを振り切って礼を言う。あのまま嗅いでいたら本当に押し倒したくなったかも。そっち系で先輩を考えたことあまりないっていうのにな。嗅覚は煩悩を刺激するのか? オレ匂いフェチだったのか? 

 

「新開さん、何してるの、椅子を持ってきて!」


「は、はい」


 初めて聞く厳しい口調にオレもビックリしたが、それ以上に映子も泉美もあたふたとしていた。 


「ごめん」

「ごめんなさい」


 椅子に座ったオレに二人が神妙な顔で謝ってくる。映子なんか泣きそうだ。


「大丈夫だよ。ちょっと体勢が悪かっただけだから。そんな大げさに考えないで」


 別に二人のせいじゃない。あれしきのことに耐えられない膝が根性無しなだけ。

 昨日あれだけの動きが出来たからもう大丈夫かも知れない、そんな風に思っていた。でもやっぱりこの膝じゃもう……。

 はぁ、まいったな。


「ねぇ大丈夫? ごめんね、無理に引っ張ったから」

「痛い? 湿布とか持って来たほうがいいかな」


 倒れ掛かったのが相当ショックだったみたいだ。二人が気遣わしげに聞いてくる。やっぱりこういうところは普通の優しい女の子だよな。時折行き過ぎるけど、それも考えようによってはかわいいし。

 うん? 右膝を擦っていたら先輩の足がオレの前で止まった。

 あーそうだ、もう一度ちゃんとお礼言わないとな。なんだかんだで助けられてばっかしだ。その分酷い目にも遭っているような気もするが。

 そんなことを思いながら顔を上げると先輩が得意のポーズで腰に手を当てていた。

 まただよ。何で仁王立ち? しかも目付きが何か企んでいるって感じ。

 あーこれ、無茶振りの前兆だ。先輩がこのポーズとった時は碌な目に遭わないんだよなぁ。これは予感を通り越して予知に近い。この後オレは確実に災厄に見舞われる。うん、絶対。

 とはいえ、こんな状況で無理難題を押しつけられることもないだろう。多少の手加減はしてくれるはず。

 だが先輩の次の一言は、そんな期待をいとも簡単に打ち砕いてくれたのだった。


「芳樹、ズボン脱いで」


「「「えーっ!」」」

 

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