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図書室と先輩~ネオ!~  作者: にま
彼の欠点、彼女の短所
49/102

その5 彼はそこを目指します。

「私は泉美って呼んで欲しいなぁ」


 今まで積極的に発言してこなかった大原が、両手で顔を挟むように頬杖をしながらオレに言ってくる。

 何そのポーズ? 破壊力抜群なんですが? 


「あ、そうだー! 芳樹君っておっぱい星人だったよね。これ聞いてくれたら、不肖この私のおっぱいを触り放題ってのはー……、やっぱりダメね」


 彼女が先程とは打って変わった表情で一睨み。こえぇ。

 

「泉美ぃ。あんまり調子乗ってると怒るかんね!」


 声は出さずにテヘペロで誤魔化す大原。まったく何を考えてんだか。でも魅力的な提案ありがとう。一瞬素敵な夢を見たよ。もう一つ言わせて貰うと、すでにオレを芳樹と呼んでいるけど、それ反則だからね。


「じゃあさー、このままじゃ埒が明かないしー、もう一発勝負で決めちゃわない?」


 一発勝負? 


「何やろうって言うのよ、泉美?」


「こういう時はやっぱりジャンケンでしょー。恨みっこなしの一回勝負ぅ。どう?」


「三人でやるの?」


「ここは名前呼びしたい映子ちゃんとされたくない芳樹君の一対一のタイマン勝負でしょー」


 いやタイマンて……。


「泉美だって名前で呼ばれたいって言ってたじゃない。ワタシだけにしないでよね」


「だって私は今じゃなくてもいいしー、いつかでいいんだもん」


 はっ? 五日? いつの?


「はいはい」


 彼女がそのセリフをスルーしたので、オレも追求はしないことにした。彼女達の会話にはついていけない部分が多すぎる。

 こうしてオレは彼女とのジャンケン勝負に挑むことになった。たしかにジャンケンなら勝つにしろ負けるにしろ、納得せざるを得ない。後悔はするだろうけど。

 二人を説き伏せる自信などないからな。これはこれで仕方がない。要は勝てばいいだけだ。


「じゃあいーい? 最初は、でいくからねー」


 オレ達三人はその場で立ち上がる。緊張した面持ちの彼女。横には飄々とした感じの大原。今誰かがこの場を目撃したとしてどう思うのだろう。よくよく考えれば、バカバカしいことをしているなと自分でも思う。毅然として突っぱねればいいだけのことだったのに、優柔不断だからなぁオレ。

 オレ達は互いに右手を腰にあて左手でそれを隠すという某アニメの必殺技を髣髴させるような姿勢となる。「最初は」の代わりに「カメハメ」と言いそうだ。彼女も気合が入っているようで、目が真剣そのものだ。繰り出すタイミングを計っている。

 時間にすれば三、四秒のことだったろう。相撲の立会ではないが、呼吸が合ったのを感じた。二人で声を合わせる。いや、合ったというのが正解だろう。


「「さーいしょはっ!!」」


 近年のお約束に従い、オレは握った拳をそのまま突き出した。


「グー!」

「パー!」


 そして即座に次を繰り出すために手を引っ込め……。

 あれっ? 

 最初はグッ、ジャンケンポン! だよね。なんでいきなりパー出してんの新開さん? 


「やったー、勝ちぃ!」


 ええーっ!


「ちょっと待ったー! 普通最初はグー出すよね。お約束だよね」


 目の前でピョンピョンと飛び跳ねている彼女にオレは抗議する。だが聞こえていないフリで彼女はそのまま欣喜雀躍。ずる過ぎるだろぉー!


「審判! 言ったよな、最初はグーって」


 オレは抗議の相手を大原に変更し勝負の無効を訴える。だが、大原はこれまた飄々と、まさにぬかすという表現がピッタリの口調で勝負の成立を宣言した。


「えー、「最初は」って言ったけどグーとまで言ってないよぉー。勝手に勘違いしたのは芳樹君だよー。はーい、そういうことでー、この勝負は映子ちゃんの勝ちぃ!」


 そのまま拍手までする始末。こいつはー!

 そしてハイタッチで勝利を祝った二人は、これ以上はないというくらいの笑顔をオレに向ける。そしてトドメとばかりに声をそろえて。


「「よろしくね、芳樹君!!」」

 

 うわぁ、嫌なイメージが浮かんじゃったよ。藁をも掴む思いで突き出した右手もトプンという音とともに敢え無く沈み、オレはそのまま……。デロロロローン。暗い曲調の音楽が流れておどおどろしい画面にBADENDの文字が……。 おいおい、それは勘弁してくれ。

 目の前では手を取り合って跳ね回っている美少女二人。「かわいい×2」じゃなくて「かわいい二乗」?

 よくよく考えれば、二人のこんな姿を見られるのって不運どころか、かなりの幸運じゃね?

 そんなことを思ったら、ふっと何かが解けた。どうでもよくなった、とも言うな。

 もうこうなったら底無し沼の底を見つけるまで沈んでみるのも悪くない。意外と金銀財宝があったりしてな。気分はトレジャーハンター。

 もしかしたら、反対側に突き抜けて別天地が開ける可能性も無きしもあらず。人生終わるわけでなし、明日は明日の風が吹く。ガンガン行こうぜ、オレ。

 防衛機制が働いているせいか、もう逆にハイテンション。反動形成だったっけ、これ?

 あ、そうだ、今なら誰もしないし、ちょっと試しで……。


「こちらこそよろしく。映子、泉美」


 うおぉぉ、やっぱり恥ずかしいな、おい! 顔熱くなってきたぞ!  

 ……って、あれ? えーっと、どうしました、お二人さん? 動きが止まってますが? で、しかも何、ボッと音がしたかと思うほど顔が真っ赤になったんですが? えっ、もしかして怒ったとか? 


「「やだぁ、いきなり!」」


 バシッ!! 二人はそう言うや否や、ひねりを利かせてオレの肩を左右からほとんど同時に平手打ち。

 痛い、痛すぎるって! 関節のやっこい女の子が繰り出す平手打ちは、ほとんど鞭だからね。わかってる? それに名前で呼んでって言ったの、あなた達だよね。オレ、素直に言うこと聞いただけだよね。この仕打ちはないと思うよ? 

 彼女は真っ赤な顔でソッポを向いて仁王立ち。大原は大原で両手で顔をはさんでクネクネ踊っているし。

 新開さん? とってもかわいいけど、先輩の影響受けないで。

 大原さん? あなたの場合、妖しいじゃなくて怪しいになっちゃうから。

 うーん、ちょっと違う、何かが違う。

 二人とも、とりあえず一つ言わせてもらいたいんだけどね、うん、一つだけ。女の子に対して理想と幻想と妄想を抱き続ける、へたれ男子の希望というかお願いというか戯言なんだけどね、いいかな?

 そこ、できればモジモジ恥じらってくれないかな?


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