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図書室と先輩~ネオ!~  作者: にま
彼の欠点、彼女の短所
45/102

その1 彼は改名します。

「寺山ぁ……君」


 向かい合って弁当を食べ出してから、新開映子(カノジョ)が突然オレのことを君付けで呼んで来た。コンビニパンを危うく床に落としそうになってしまった。大原も驚いたように箸を持つ手を止めている。

 くん? なんだ、いきなり。


「何よ、あんたのこと、君付けで呼んじゃダメなの?」


 いや、そういうわけじゃないんだが、今までずっと呼び捨てだったでしょ。


「ワタシも色々考えることがあってさ、これからはちゃんと君付けで呼ぼうと思って」

 

 何考えたの? というか、何企んでいるの? 疑惑の視線を返すと彼女はほとんど半ギレ状態。


「だからぁ、色々あるの! それとも何、今までみたいに呼び捨てのほうがいいの?」


「いや、もう呼び捨てが定着してるから、逆に落ち着かないというか、誰? って感じで」


 正直そうなんだからしょうがない。だがこれ以上言うと、半ギレどころじゃすまなくなる。もうすでに眉間に皺だし、ここは大人しくしよう。


「オレ的にはどっちでもいいんだけど、新開さんが決めたのならそれでいいのではないでしょうか?」


 微妙な言葉遣いになってしまった。

 呼び捨てだったことは本当に気にしていない。それどころか、彼女が呼び捨てにするのは男子ではオレくらいだったから少し特別感みたいのもあった。それを考えると残念ではある。


「ちょっとひっかかるけど、まぁいいわ。じゃ、これからはあんたのことは君付けで呼ぶから」


 うーむ、宣言されてしまっては仕方がない。でもなぁ、大丈夫なんだろうか? 無理は体に毒ですよ、新開さん。


「じゃ、私はー?」


 かまってちゃん全開の大原が会話にするりと割り込んでくる。


「オーハラはオーハラでしょ」


「えー! 私も私もー」


「何よ、大原さんとでも呼べばいいの?」


「ううん、そんな他人行儀じゃなくてー、下の名前で呼んでくれたら嬉しいなー。できればイズミンでー」


 イズミン? いやいや、アニメじゃないんだからそれはやめようよ。さすがに彼女もこの希望は即座に却下した。


「それは勘弁して。……そうね、じゃあ泉美(イズミ)ちゃんでいい?」


「ちゃんはいらないよー。泉美だけでいいからー。あ、寺山君も私のことは泉美って呼んでー」


 ぶっ! あぶねぇ、鼻から牛乳になるところだった。


「ちょっと、オー……、泉美ってば、寺山ぁ……君に無理言わないの!」


「いや、新開さん? それだと微妙に「テラヤ、マー君」に聞こえるんですが? もうちょっとどうにかして欲しいです」


「しょうがないでしょ! ワタシだってまだ慣れてないのよ!」


 結局キレられた。


「あ、マー君ってかわいいかもー」


 大原さん、そこで茶々を入れないで。


「確かに。いいかもしれないわね」


 えっと二人とも? オレ「芳樹(ヨシキ)」だよ。マサキじゃないよ。


「マー君じゃダメ?」


 なんでそこでうるうるお目目をしているのかな、大原さん? 危うく「いいよ」と言いそうになったじゃないか。


「ダメ。勝手にオレの名前変えないで」


「じゃ「よっくん」って呼ぶー」


 ぶふっ! また鼻の奥に牛乳が……。何言いだすの、この子は。


「ちょっ! オー、……泉美ぃ。いきなり何言ってんのよ。寺山ぁ……君も困ってるでしょ」


 オレはマー君になるわ、大原は大泉になるわ、もう誰が誰だか。

 あ、鼻牛乳たれてきた。


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