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図書室と先輩~ネオ!~  作者: にま
彼の迷走、彼女の葛藤
20/102

その2 彼女もハードル走は苦手です。

「ねえ、今日も高橋先輩に会いに行くの?」


 昼休み。

 ワタシがお弁当を食べ終わると、寺山芳樹(カレ)が着席するなり購買パンを机に並べる。

 焼きそばパンにアンパンにカレーパン。あと牛乳。

 胸やけしそうなラインナップ。

 机に突っ伏したまま見ていると、パンが次々と口の中に消えていく。

 ちゃんと噛んで食べようよ。野菜食べようよ。栄養のバランス考えようよ。

 こういう姿を見ると、お弁当を作ってあげたくなる。

 そういえば、お弁当を持ってきているの見たことないな。

 頭ではそんなことを考えながら、口は関係のないことを言葉にしていた。


「新開さん? 誤解を生むような発言は控えてくれませんか」


 ワタシは起き上がるのも億劫だったので、そのままの姿勢で彼と応対する。


「えー、本当のことでしょう?」


 そうとしか思えない。いいえ、絶対そう。


「あー、新開映子さん? 今日は当番ではないですが、委員としての責務があるのです。不測の事態に対応できるよう体制を整えておくのもその一つです。もしかしたら今日の当番がいろいろな事情で来られなくなるかもしれません。そのような時、僕がいれば代行できます。また司書の先生からも何か指示があるかもしれません。このようなことも踏まえたうえで、自分ができる最良の行動とは何かを熟考した場合、図書室に足を運ぶという選択肢を第一にすることは合理性があると考えます。また仮に高橋先輩がそこにいたとしても、それは付随的な結果であり、いわば不可抗力なのです」


 ゴメン、よくわからないけど、結局は高橋先輩に会いに行くってことだよね。


 彼の図書室通いは続いている。やはり、あの先輩に会うためだろう。

 先輩は彼のことを後輩男子としてしか見ていないと思う、勘だけど。

 でも彼はどうなんだろう。

 態度や言葉のはしばしに、ワタシに向けてくるものとは違うものを感じる。

 年上に憧れるのは男子も女子も変わりない。

 そして今は恋愛感情ではないとしても、それが発展する可能性が無いとは言えないのだ。

 あの日以来、彼とはわだかまりなく話せるようになった。

 最近の不和状態は、もとはといえばワタシが原因。女友達も増えて付き合いもそちらに偏りがち。

 そこに割り込んで来いというのは、さすがに無理な注文というものだった。

 素っ気なくしていたのはワタシのほう。勝手に勘違いして彼のせいにしていた。

 素直に謝れなくて「あんたバカァ?」で締めくくっちゃったけれど、本当のバカはワタシ。

 ごめんね。

 でも、だからこそ彼が先輩に会いに行くことには少し抵抗がある。

 いや「かなり」だ。

 ここで問題になるのは……。

 彼の気持ちがどこにあるのかがわからないということ。

 嫌われてはいないと思う。

 けれどワタシと同じ熱量とも思えない。

 あと一歩。いいえ、あと一手が必要なんだけど、それが具体的に思い浮かばない。

 ワタシはどうすればいいのだろう。


 ・


 ・


 ・


 ちょっと待って。

 こうなったら、いっそのこと「告っちゃう」ってはどう?

 ずっと前から好きでした。今も好きです。

 そうよ。こういう時の為のもじもじ恥じらい攻撃よ。

 それには弱そうだしイケるんじゃない? 多少強引にでも付き合い始めちゃえば……。

 あーダメダメ!

 こんなヤケになってたらうまくいくはずないし。

 ハァ……。 

 それに告るって言ったって、いつ? どこで?

 体育館裏とかに呼び出すの? 机に手紙を入れて?

 無理無理! 絶対無理! ワタシにはハードル高過ぎだよ。



「ヤキモチ?」

 束の間の沈黙の後、彼がぼそりと呟いた。

 ドキッ! 



「バカッ!」



 反射的に顔を背けたワタシ。

 えっ? ばれた、マズイ、ヤバイ! 

 見抜かれたショックが思考回路をメチャクチャに走り回る。

 そうよ、ヤキモチよ、ヤキモチ。嫉妬よ、嫉妬! 

 なによ! それのどこか悪いって言うのよ!

 あー、告白どころではなくなってしまった。

「勘違いしないでよね」とツンデレってみる?

「ヤキモチ焼いちゃってごめんなさい」と正直素直路線で行く?

 うーん……、ドツボだ。どちらにしろドツボだ。

 彼がまだ見ている気がする。


 うぅ、こんな時はどう切り抜けたらいいの?


 誰か助けて!


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