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図書室と先輩~ネオ!~  作者: にま
彼の憂鬱、彼女の鬱憤
16/102

その16 彼女は明日に向かって撃て、です。

 そして……。

 見詰め合うワタシと先輩。うーん、こうやって見ると普通の人よね。

 だけど一昨日は衝撃だった。あれはいったい何だったのだろう。

 すべて受け止めてくれるような、すべてを許してくれるような……。

 オネエサマという単語が出てきたのには、自分でもイタいなと思ったけれど。

 先輩がコロコロと笑いだす。

 コレ難易度の高い技だと思う。ワタシには絶対できない。

 でもこの笑顔に誤魔化されちゃダメなんだよね、やっぱり。


「たいした意味なんてないって言ったら怒るかな?」


「そんなことはないと思います」


 ほら、こちらの考えを見透かしているかのように言ってくるし。

 とりあえず反論をしてペースをキープ。


「ねえ、寺山君? 新開さんってかわいいわね」


 あ、やられた。いきなり乱された。


「先輩! からかわないでください!」


 冷静でいようと思いつつも、挑発にすぐにのってしまった。

 すぐかっとなるところ直さないと。 

 で、なんです、それ? なんで仁王立ち? 

 それにしても細いなあ。軽そうだなあ。

 でも骨ばっている感じもないし、ちょっとうらやましい。 

 ワタシが羨望の視線を送っていると、先輩は突然ガックリとうなだれた。

 え、どうしたんです?


「うぅ、やっぱりおっぱいでは負けてるわ」


 ! 

 うわ、そっち?

 思わず胸を隠しちゃった。やだ、顔が熱くなってきた。

 いきなり「おっぱい」はないでしょ。もうちょっと言葉選んでくださいよ。


「先輩!」


 彼だったらわかりますけど、なんで先輩がそこに食いつくんですか?


「だってさ、毎日牛乳たくさん飲んで頑張っているんだよ。それなのに……」


 えっ? 


「かわいいしおっぱいおっきいし、新開さんてずるいよぉ!」


 えーっ? 

 ワタシは唖然。彼茫然。


 何なの、この展開。

 イメージ違うなあ。こういうこと気にする人には見えないのに。

 たしかにワタシ胸は小さくはないですよ。でも普通の範囲だと思うんですけど。

 クラスでもワタシより大きい子なんてたくさんいますから。

 でもこれ言ったらダメなんだろうな。

 それに先輩のスラリとした体型だってワタシからしたらズルイの一言ですよ。

 と、そこで下唇を突き出していた先輩が、少し舌をのぞかせる。

 そして、イタズラ心たっぷりなその顔をワタシに向け、彼をチラリ。

 えっ? あー、なるほど。そういうこと。なんとなくわかったような。


「あ、あの先輩。えーと、胸のことはひとまず置いといてもらえませんか」


 ここは先輩が立てている筋書にのってみよう。

 さて、どうするのかな? と思った途端このセリフ。


「私、小っちゃいから置けないもん、のっからないもん」


 ぶっ! これにはワタシも吹き出しそうになったけど、なんとかこらえ……。

 こらえて! こらえるのよ! 

 ……

 はあ、こらえきったー。よしえらいぞワタシ。

 ただ、隣の彼はやはりというべきか、吹き出したかと思うとこらえきれずに後ろを向いてしまった。

 しゃがみこんで肩まで震わせている。 あーツボってるツボってる。

 笑い声まで漏れてきた。こりゃ当分おさまらないな。

 見事にツボっているし、()()()()()()


 

「ねえ、こういう人ってどう思う、新開さん?」


 彼を陥れ(ハメ)た張本人は満足気ながらも、後ろ向きに座り込んだ彼に冷たい視線を送っている。


「最低、ですね」


 ここは同情する必要を感じない。ホント男の子ってしょうがない。


「少しお灸が必要かしら」


「むしろたっぷりのほうがいいんじゃないですか?」


 甘やかしてはいけないわよね。ワタシは減刑を求めることはしなかった。

 どうせ明日も何かやらかすんだし、その分も上乗せしちゃいましょう。


「そうよね。優しくしすぎたって反省してるわ」


 そこでようやく彼が振り向く。

 この時の顔は見ものだった。

 笑いすぎて真っ赤になった顔が一瞬にして青ざめたのだから。


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