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図書室と先輩~ネオ!~  作者: にま
彼の憂鬱、彼女の鬱憤
14/102

その14 彼女は時折角を生やします。

「意味?」


 高橋先輩が寺山芳樹(カレ)の質問に対して小首をかしげる。

 一度好意的な感情を持ったしまったせいか、あざといとも見える仕草も気にならない。

 それどころか、なるほどその角度か、と思わず参考にしてしまう。

 彼はもう何というか、デレデレ状態だ。

 どうして男の子ってこうなのかしらね?


 本を借りてから二日後、ワタシと彼はまた一緒に図書室に来ていた。

 その時に出された「ルール」について聞きに来たのだ。

 読書という行為をあれほどの苦行にするなんて、この先輩って何者?

 自分の好みではないものを読むのは苦痛。でも面白いもので苦悶するとは思っていなかった。

 まだ全部読み終えていないから、読後に鬱憤をため込む日々はもう少し続く。

 彼もルールを守ったららしい。

 そして忍耐力が擦り切れる前に、先輩に話を聞くことにしたそうだ。

 ワタシは迷うことなく同行した。

 カウンター内で机周りの備品整理をする先輩。すでに一枚の絵のような風景。

 もし先輩以外の生徒がそこにいたならば違和感しか生まれないだろう。

 そして彼が「ルール」について切り出したのでワタシも便乗させてもらう。


「ええ、何か深い意味があるのかなって気になっているんです」

  

 ネットでも調べたけどわからなかった。

 読書好きにとってこれ以上の精神攻撃はないだろうと思う。


「ページ数は自分で決める」「決めたページ数以上は読まない」というルール。

 なぜ、そんな読み方をワタシ達に求めたのか? それを聞きたい。


「守ってくれたのね。ありがとう」


 ニッコリと微笑む先輩。

 こういうところは流石だ。意気込むワタシ達の矛先を鈍らせる。

 変なテンションになっているのは自覚していた。

 おそらく、かなり切羽詰まった顔をしているのだろう。


「ふふ、大丈夫よ、そんなに警戒しなくても」


 これは彼に向けたものだったが、ワタシにも鎮静の効果をもたらせた。


「新開さんはともかく、寺山君も守ってくれたのは、ちょっと意外」


 ワタシアゲ彼サゲで、スムーズに次へとつなげていく。うまいよね。


「ごめんごめん。気を悪くしないで。君は私の予想を斜め跳びしそうだったから」


 オチで彼を斜めアゲ。ワタシも彼も掌の上で転がされている感じ。

 そう言いながら先輩はワタシに正面から向き直ってくる。


「そっか。そんなに気になったんだ」


 名前を憶えていてくれたことはある意味衝撃的で、親近感とは違う思いをこの先輩には抱いている。

 薦められた本は本当に面白い。

 同好の部分があると感じるのも不快ではない。

 これほど気になる上級生に会ったのは初めてだ。


 昨日ワタシは珍しく彼を質問責めにした。

「どういう人なの?」

「フルネームは?」

「何年何組?」

「身長は? 体重は?」

「付き合っている人とかいるのかな?」

 何を聞いているんだと思うものも口にしていたけど、彼が知り得ることはほぼ聞き出した。


 彼から入手した高橋先輩の情報は以下の通り。

 名前は「高橋アデル」

 ドイツ系のワンエイス。こんな言い方するの日本人だけよね。

 身長は158cm。ワタシより少し低い。

 体重とかスリーサイズ聞いて怒られたとか。バカよね。

 3年6組。孤高のボッチ。これが不思議でならない。友達多そうなのに。

 成績は下の中。これは絶対ウソ。学年上位30位には入っていると見た。

 カレシの存在は不明。いてもおかしくないし、いたらいたでおかしいと思える。

 個人情報というには少なすぎる内容。

 意外と思えるほどに彼は先輩について知っていることが少なかった。

 そのことは彼を責める材料にはならず、むしろワタシを安堵させた。

 それにしても、部活も委員会も関係のない「図書室の先輩」

 これはこれで、高校生活の面白いところよね。


 でも、彼のあのデレ顔だけは許せないかな。     

  

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