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図書室と先輩~ネオ!~  作者: にま
彼の目算、彼女の誤算
101/102

その5 彼は眩みます。

 あかん、何が悲しゅうて、日曜日なのに早起きせにゃならんのだ。

 いや、何故だか自然に目が覚めてしまっただけだが。

 セットしていない目覚まし時計は六時を示している。二度寝をしようにもやけにハッキリサッパリ。あるんだよな、異様に目覚めがいい朝って。

 まぁ何だな、こうなったら仕方がない。いろいろやることもあるし、早いけどやっちゃうか。

 とりあえず掃除、洗濯はもう大丈夫。んじゃ後は()()だ。さぁて、ちょっと気合を入れますかね!

 


 午後一時ピッタリにインターホンが鳴った。続いて「「コンニチハー」」の声が。

 モニターを見ることなしにオレは玄関に向かいドアを開ける。と、そこには初めて見る私服姿の二人。

 映子はデニムジャケットに……、何その胸元ギリギリの服は? 下はキュロットスカートというのか、かなり短めつまり生足の露出度が……。微エロでカッコいい。 

 で泉美はというと……。何故にゴス? こげ茶色をベースにフリル少な目コーデ。日傘まで持っているし。

 これがまた、まぁ何の違和感もない。本当お人形さんみたいだ。素材がいいから可愛さ倍増。ガラスケースに入れて飾っておきたいくらいだ。


「いらっしゃい」


 制服姿とのギャップに心の中で「萌」の字を飛ばしていると、映子が早速口を尖らせてきた。


「ねぇ、何か一言あってもいいんじゃない?」


 映子? そう言いながらもじもじするのはやめて。まぁその様子も含めてモロどストライクだよ。 


「ねぇねぇどうかなぁ、芳樹君の趣味に合わせてみたー」


 泉美? オレにそういう趣味は……、これから持ってもいいぞ。


「うん、二人とも良く似合ってる」

 

 オレの返事に手を取り合ってニンマリする二人。

 でもお二人さん? それって勉強する恰好じゃないよね。


「えーと、とにかく上がる?」


 いや、中に入ってもらわないと勉強出来ないだろ。何言ってんだオレ?


「あ、そうね。上がらせてもらうわ」

「お邪魔しまーす」


「リビングでいいよね。飲み物とか用意するから、適当に座ってくれる?」


「「はーい」」


 部屋の中でキョロキョロする二人。大丈夫だよな、女の子に有害なものは片付けたはず。窓全開で換気もしたし、変な匂いはしない……と思う。実はこれが一番の心配の種。家の匂いって住んでいる人間は慣れちゃっているから気付かないもんなんだよなぁ。もう戦々恐々。後で何か言われませんように。


「そう言えば二人とも昼メシは?」


 いきなり探索を始められるかと思ったが、そんな様子は全くなし。そりゃそうか、二人ともいい大人? だもんな。でも、オレがもし友達んとこ行ったら……、うん、やるな、確実に。


「大丈夫。早めに済ませてきたから」

「私もー」


 うーん、いつものリビングなのに、何故こんなにも違って見えるんだ? 部屋が喜んでいる? 殺風景な室内に色が付いた、そんな感じ。


「そう言えば泉美、コーヒー苦手って言ってたから紅茶用意したんだけど、アールグレイじゃなくてもいい?」


 二人とも好みがうるさそうだからなぁ。

 

「あ、覚えていてくれたんだー。嬉しい、ありがとぉー。何でも大丈夫だよー」


 と、そこで何故だか膨れる映子。


「何?」


「ちょっとぉ、何でワタシには聞いてくれないの?」


「あれ、映子はダージリンじゃなかったっけ? だからそれ用意したんだけど」


「あ、そうだったんだ。ありがとう」 


 と、今度は泉美がむくれる番。


「えー、映子ちゃんばっかりずるーい」


 いや、そんなこと言われても。そうなると違う茶葉にするしかないんだが。


「じゃあ他のにする? と言ってもアールグレイは切らしているからセイロンかアッサムになるけど」


 何を隠そう、オレは紅茶マニア……じゃなく、親父が一頃はまっていたので、結構な種類の紅茶があるのだ。


「芳樹君が好きなのは?」


 ニコニコ顔の映子が聞いてくる。本当、表情がコロコロ忙しいな、この二人。


「あ、オレはコーヒー派だから」


 その後のブーイングは置いといてと。


「とりあえず、勉強しよう。一緒の科目? それとも各自?」


「ワタシ数学やる、一番苦手だから。分からないところ教えて」

「じゃあ私もー。次のテストでは絶対百点取りたいから教えてー」


 いや、オレのほうこそ教えてください。

 と、二人はさっさと教科書を取り出し、お勉強モードに移行。あ、意外とやる気満々?

 その後オレ達は、予想外にも静かに教科書とにらめっこ。時折互いに教え合ったりして、テスト範囲になるであろう部分をクリアしていった。 

 やるときはやる真面目な二人。すごいな、集中力がよく持つものだ。オレなんざ10分でギブアップしそうだったのに。

 映子の胸元は見えそうで見えないを繰り返すから、もう気が散って散って。思わず覗き込みそうになるのを必死で我慢。

 泉美は服のデザインのせいか胸の大きさが際立って、それがテーブルの上に乗っているし……。消しゴム取るふりして触ってしまおうかなどと不埒な考えがちらほらと。

 しかも、二人ともいい匂いはするし。 

 

「こんなものかな?」

「そうだねー」


 一通り片付くと二人が小休止を宣言。なんだかんだで一時間。長かった……。視覚も嗅覚もやられてくらくらしっぱなし。勉強したことより、誘惑に打ち勝った達成感がほうが大きい。よく耐えた、エライぞオレ!


「そうだ、私クッキー作ってきたー。一緒に食べよー」

 

 泉美が可愛いバッグからオシャレな袋を取り出した。あー、そんなこと言ってたな。


「ワタシも作って来たんだけど……」


 何、映子が! お菓子作りするんだ、ちょっと意外。が、それが顔に出たのだろう。


「ちょっとぉ、ワタシだってお菓子くらい作るわよ。というかこれからは料理だって頑張るんだから」


 すみません、そんなつもりじゃなかったんです、はい。

 オレが皿を出すと、そこに並んだのはハートやら猫の顔やらのクッキーと……、ベビーカステラ?


「最初マフィン作ろうと思っていたのよ、そうしたらたこ焼きプレートしか見つからなくて……」


 思い切りギャグなんだが? あーでも、ここは生温ーくスルーしておいたほうが良さそうだ。 

 恥ずかしそうに言い訳する映子がこれまた可愛い。うん「よく頑張ったで賞」をあげよう。

 そして、その一つずつを口に運ぶ。


「うん、うまい」


 クッキーのサクサクとカステラのシットリ感。飾り気のない味というのだろうか。ホッとする。

 二人も楽しそうに味見を始めた。


「猫さんのクッキー、可愛い」

「ベビーカステラって久し振りー。縁日以外じゃ見掛けないもんねー」


 互いに作ったお菓子を褒め合いながら、顔をほころばせている。いいな、美少女二人の笑顔。しかもそれを独り占め。ハッピー過ぎる。

 そうだ、早めのお昼って言っていたから、アレ出しても大丈夫かな? もういい感じになっているだろ。


「二人ともお腹大丈夫? ケーキ用意してあるんだけど食べる?」


「「食べる!」」


 どうして女の子ってケーキという単語にこうも食い付きがいいんだろうね。小腹がクッキーとカステラだけでは満足しないと見える。目がキラーンって輝いたし。


「バナナケーキのほうは焼き立てだよ。レアチーズも多分うまく出来ていると思う。どっちがいい? てか両方出すな」


 そう、昨日の買い物でケーキを作ろうと思わず材料をふんだんに買い込んだのだ。早起きしてしまったのでレアチーズにも急遽挑戦。結構すんなり出来た。


「ちょっと待って。焼き立てって? もしかして作ったの?」

「芳樹君、ケーキとか作れるのー?」 


「時々な。この頃はあまり作らなかったんだけど、ちょっと張り切ってみた」


 皿とケーキを型ごとテーブルに運ぶ。


「あ、バナナケーキは半分がチョコで半分がアーモンドね」


 あれ、喜んでくれるかなと思ったんだけど、二人は運んだケーキを前に目を丸くしたまま沈黙している。何かマズったか?


「「うっそぉー!」」


 ひっ、ごめん!


「ねっねっ、コレ本当に芳樹君が作ったの?」

「すっごーい。私なんかよりずっと上手ー」


 あ、良かった。見た目はパスしたみたいだ。形が崩れないように慎重に皿に移しナイフを入れる。


「映子がレアチーズ好きみたいだったから。泉美、ごめん。モンブランはちょっと材料なくて……」


「ううん、バナナケーキも大好きだよー。ありがとー」


 映子を見ると……。

 なっ! ちょっとちょっと、何泣きそうになってんの?


「だってー、これってアレでしょ。この間のこと覚えていて、わざわざ作ってくれたんでしょう。こんなの嬉しくて泣いちゃうに決まっているじゃない」


 泣くほどではないと思うが、まぁ喜んでくれたのは嬉しい。ただ問題は味だ。二人の舌を満足させられるかどうか。


「とりあえず味見してくれる? もっと甘い方がいいとか、そういうのあったら今度作るときの参考にするし」


 それぞれを小皿に取り分けて、バナナケーキには生クリーム、レアチージケーキにはベリーソースを少し垂らす。うん、見た目はバッチリだ。


「さ、存分にご賞味あれ」


 少し気取って両手を広げる。趣味とまでは言えないが特技ではある。ケーキ作りが好きだった母親の手伝いをしていたら、いつのまにか覚えて自分でも作れるようになってしまった。

 道具も残っているし、使わないともったいない。ちょうどいい暇潰しだし。


「「うっまーい!」」


 おっ、大丈夫そうだ。


「ちょっとちょっと、どうやったらこんなの作れるの?」

「これじゃまた太っちゃうー」


 ケーキを食べている時の女の子って、どうしてこんなに幸せそうで可愛いんだろうな。こっちまでほんわかしてくる。


「良かったよ、美味しいって言ってもらえて。ほら、作るのはいいけど他の人に食べてもらう機会ってあまりないから、実は心配だったんだ」


 オレの味覚も世間一般に通用するみたいだ、安心安心。


「ねぇ、そう言えばさ、今日はご両親って? お仕事?」

「帰ってきたら食べてもらえばいいのにー」


 あ、そうか。これ言ってなかったっけ。


「ああ、オレん()、父子家庭ってやつ? なんだよ。で、親父は今出張中でね。月に一度帰ってくるかどうかでさ」


「「えっ!」」


 二人のリアクションがいつもより大きくて、逆にこっちがビックリ。そんなに驚かれるようなこと言ったか?


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