第32章 冬の夜明けと浅葱色の絹
一月の朝、東京は凛とした、水晶のような冷気に包まれていた。大晦日を終え、 慌ただしかった大都市は一瞬にして静まり返っている。オフィスは閉まり、 絶え間なかった工事の喧騒も止み、通りはうっすらと清らかな雪に覆われていた。日本人にとって一月の始まりは、古いものを後ろに置き、 清らかな心で未来を迎えるための神聖な時間だった。龍之介は、約束の時間ぴったりに屋敷の門の前で待っていた。彼の首元を温めているのは、百合の手編みによる目の詰まったサファイアブルーのマフラーだ。仕立ての良い黒のコートのシルエットが、白銀の路地を背景に際立っている。長野家の玄関の扉がようやく開いたとき、少年の動きが止まった。百合が姿を現した。彼女が纏っていたのは、前夜、桐の箱に納められて朝香家の配達員から密かに届けられた、息を呑むほどに見事な晴れ着の着物だった。極上の絹は、澄み渡る空を思わせる柔らかな浅葱色に染め上げられ、裾と袖には、ほころび始めたばかりの白い百合の、優美な手描きの手刺繍があしらわれていた。厚みのある帯は彼女の可憐な少女の体型を完璧に引き立て、ツインテールにはエレガントな髪飾りが輝いている。着物の裾からは、真っ白な足袋が恥ずかしそうにのぞいていた。百合は袖で着物の端を少し押さえながら、サクサクと音を立てる雪を踏み締め、少し照れくさそうに、しかしこの上なく幸せそうに彼へ微笑みかけた。「龍ちゃん……本当に魔法みたい。ありがとう。お母さんと一緒に、これ着るのすごく大変だったんだから!」龍之介は無言で歩み寄ると、彼女が玄関の木製の階段で足を滑らせないようそっと肘を支え、その着物姿をじっくりと見つめた。少年の理知的な頭脳は、その贈り物が完璧に似合っていることを静かに感知した。浅葱色の絹は、彼女の夏空のような色の瞳にこの上なく調和していた。「最高峰の職人が仕立てたものだ、百合。とてもよく似合っている」彼は淡々と、しかし穏やかに告げた。「車が待っている。行こう」朝香家の黒い高級リムジンは、エンジン音を静かに響かせながら滑らかに発車し、元旦の誰もいない通りを抜けて、初詣のために東京で最も古く、格式高い神社へと二人を運んでいった。彼らがどっしりとした木製の鳥居のふもとに到着したとき、ちょうど太陽が地平線から昇り始めたところだった。百合の浅葱色の着物は、朝の最初の光を浴びてまるで内側から発光しているかのように輝き、行き交う参拝客たちの感嘆の視線を集めていた。龍之介は、いつもの王者のような冷静さを保ちながら半歩前を歩き、 彼の連れへと向けられる余計な視線を無言で遮断していた。境内の敷地内は、お正月の厳かな活気に満ち溢れている。甘く温かい甘酒の香りが漂い、 篝火からはうっすらと煙が立ち上り、足元では心地よく雪が踏み締められていた。晴れ着姿の市民たちの短い行列に並んだのち、二人は本殿の祭壇へと進んだ。龍之介と百合は呼吸を合わせ、賽銭箱に五円玉を投げ入れた。良きご縁と、 素晴らしい運命を願う象徴だ。それから二回深く頭を下げ、神様の注意を引くために二回大きく柏手を打ち、胸の前で手を合わせて静かに目を閉じ、無言の祈りを捧げた。百合は、両親の健康、三月に控えた卒業試験の合格、そして龍ちゃんとの、不思議だけれどとても頼もしい絆がいつまでも途切れないことを祈った。一方で龍之介は、神仏に対して自分のための願い事は何もしていなかった。彼はただ、上流階級のどんな謀略からも百合を守り抜くことを、心の中で誓っていた。参拝を終えると、二人は最後に一礼し、新しいお守りを買うために授与所へと向かった。「見て、龍ちゃん、破魔矢だよ!」百合は、絵馬や鈴が飾られた、白い羽のついた神聖な木の矢を嬉しそうに指さした。「お母さんが、今年一年のお家を守るために絶対に買ってきてって言ってたの」「二本いただこう」龍之介は淡々と告げ、神職に紙幣を差し出した。彼は、邪悪な災いを打ち砕く二本の矢を丁寧に受け取ると、それを百合へと手渡した。それから彼らは、恒例のおみくじを引いた。百合が丁寧に紙を広げると、嬉しそうに声を上げた。彼女のツインテールが楽しげに弾む。「大吉! 一番良い、最高の大当たりだよ! 龍ちゃん、見て。学業も恋愛も、完全な大勝利って書いてある! 龍ちゃんの方は何だった?」龍之介も自分の紙を広げた。そこには「小吉」という、控えめで、平穏な運勢が記されていた。しかし少年は全く落胆していなかった。その唇に、彼女にしか分からないほどの微かな笑みの陰が浮かぶ。彼には、神様からの個人的な幸運など必要なかった。今年一年のすべての絶対的な強運が、あの眩い浅葱色の着物を纏った百合の元に訪れたのなら、それだけで十分に事足りるのだった。車へと戻る二人の後ろには、神社の香の香りと、守護の矢についた鈴の音が微かに響いていた。太陽はすでに冬の澄んだ空に高く昇っている。冬休みは間もなく終わり、この先には中学校生活で最後となる、最も過酷な三学期が待っている。しかし、この新しい年の最初の日、お正月一色の東京の中心でしっかりと手を繋ぎ合いながら、二人は確信していた。自分たちの共有する物語は、これから訪れるどんな未来の試練も乗り越えていけるのだと。
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