第27章 閉ざされた扉の向こうの試着
文化祭の開幕を翌日に控え、学校の教室という教室は仕立て工場や装飾品の倉庫へと姿を変えていた。「2-A」の教室内には、塗料とドライフラワー、そして新しい生地の香りが漂っていた。百合ちゃんは美波ちゃんやマイちゃんと一緒に、今日の完成衣装の試着本部に指定された女子更衣室の入り口にバリケードを築いていた。女子たちは、この二週間のがんばりの成果をハンガーに掛け、誇らしげに並べていた。更衣室の引き戸が、控えめながらも確固たる音を立てて叩かれた。「どうぞ!」百合ちゃんは純白のエプロンを整えながら、楽しそうに声をかけた。引き戸が開き、不機嫌そうな佐藤くん、うなだれた田中くん、そして竜之介が室内へと入ってきた。前の二人がまるで断頭台へと引かれていく罪人のようだったのに対し、竜之介はその顎を強く噛み締めながらも、いつものように絶対的な、王者のような冷静さを保っていた。男子たちの手には、女子たちが彼らのサイズに合わせて几帳面に縫い上げた衣装が入った、厚手の衣服カバーが握られていた。「さあ、男子諸君、いよいよ時間だよ!」美波ちゃんは勝ち誇ったように手のひらを擦り合わせた。「早く仕切りの後ろで着替えてきて。容赦はしないからね、うちはドレスコードが厳格なんだから!」「俺の人生で最悪の屈辱の日だ……」佐藤くんは、段ボールで作られた高い仕切りの後ろへと絶望的に姿を消しながらぶつぶつと呟いた。田中くんも重い溜息をつきながらその後に続いた。竜之介はその場に佇んだままだった。若い少年の頭脳は、この瞬間の不可避性をとうに受け入れていたが、彼が百合ちゃんへと視線を移した瞬間、その呼吸が一秒間だけ完全に止まった。今回、女子たちがカフェのために選んだのは、現代的で可憐なスタイルのデザインだった。百合ちゃんは、しなやかな足をのぞかせるボリュームのあるミニスカートがついた、丈の短い紺色のドレスに身を包み、フリルのついたニーハイソックスと、ギャザーの寄った純白のショートエプロンを纏っていた。髪にあしらわれたヘッドドレスが、その佇まいを完成させていた。衣装は彼女の洗練された体つきに、非の打ち所がないほどぴったりと馴染んでいた。絵に描いたような完璧さだった。自分に待ち受けるこれからの屈辱の時間など、彼女のこの姿を目にするためなら、一分一秒たりとも惜しくはなかった。百合ちゃんは彼の眼差しに気づくと、優しく微笑みながら、綺麗なハンガーを彼へと差し出した。「りゅうちゃん、次の番だよ。私たち、りゅうちゃんの衣装には本当に力を入れたんだから。厚手の、すごく良いサファイア色の生地で縫ったのよ」竜之介は無言でハンガーを受け取ると、礼儀正しく一礼し、更衣室の奥にある試着スペースのカーテンの向こうへと姿を消した。五分後、仕切りの後ろから地を這うような呻き声とともに佐藤くんが姿を現した。女子たちは一瞬にしてお腹を抱えて大爆笑した。クラスのムードメーカーが、全く同じ現代的なフリル付きミニドレスを着こなし、ヘッドドレスを横にずらした姿は、あまりにも喜劇的だった。メガネをかけたままミニスカートを履いた田中くんは、厳格ながらもどこかちぐはぐな家政婦のようで、女子たちのクスクス笑いの新たな波を巻き起こしていた。しかし、竜之介の更衣スペースのカーテンが開いた瞬間、室内には水を打ったような、張り詰めた静寂が轟いた。美波ちゃんさえも、口を開けたまま完全に凝固していた。浅香竜之介という少年は、この喜劇的で際どい衣装を、絶対的な威厳を放つ儀式へと昇華させてみせたのだ。彼は他の全員と全く同じ現代的な衣装を身に纏っていた。ボリュームのあるミニスカートがついたサファイア色のショートドレス、レースのついたカフス、そして几帳面なフリルがあしらわれた純白のショートエプロン。レースのヘッドドレスは、彼の頭の上に一ミリの狂いもなく真っ直ぐに収まっていた。彼の背筋は堅牢な石像のように伸びたまま、その顔は恐ろしいほどに大真面目だった。女子用のデザインのドレスと、彼の持つ厳格で、他を寄せ付けない冷徹な眼差しとの強烈なコントラストは、見る者を圧倒する凄まじい効果を生み出していた。百合ちゃんは吸い寄せられるように彼を見つめながら、自分の両頬に深い紅潮が湧き上がってくるのを感じていた。りゅうちゃんは、いかなる状況にあっても、どこまでも自分を貫き通す男だった。竜之介は冷静に鏡の前へと歩み寄り、滑らかで正確な動作で手首の純白のカフスを整えると、百合ちゃんの方を正面から見据えた。「生地の品質は申し分ない。見事な仕立てだ、百合」十四歳の跡取り息子は、羞恥の影など一ミリも覗かせることなく、彼女の夏の空のような青い瞳を真っ直ぐに見つめながら、淡々と告げた。「あ、ありが、とう、りゅうちゃん……」百合ちゃんはかろうじて聞き取れるほどの声で呟き、自分の心の動揺を隠すように、慌てて自分のセーラーの襟元を直した。「よし、これで同学年の連中は全員、羨ましさで気絶すること間違いなしね」美波ちゃんがようやく息を吹き返し、感服したように首を振りながら言った。「男子たち、覚悟はいい? 明日の朝、いよいよ開幕だよ。僕たちの目標は、絶対的な大勝利だからね」竜之介は百合ちゃんを見つめながら、唇の端をほんの僅かに押し上げた。準備は全て整った。幕を開ける文化祭の舞台裏で、彼の中の龍はすでにその翼を広げていた。フリルとサファイア色のショートエプロンをその身に纏い、ありふれた学校のカフェを、二人だけの絶対的な、不壊の勝利のテリトリーへと変える用意を整えていたのだった。
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