待つ。
「おっはよー!!」
泣いたために目が赤くなっていたのをひくまで図書館で待ち、
教室に戻ってきた。
イツキがなぜあそこにいたかも分からないし、
何時から一緒に回るのかも分からない。
いつも時間は決めてくれずに、イツキの都合で行動する。
デートでもそうだ。
結局は待つしかなさそう。
「クマはすごいけど元気いいね〜。何かあった?」
「ん?別に?」
イツキの行動で浮き沈みの激しい十和。
イツキがいなくなったときのことを考えると恐怖だ。
「ねぇねぇ、今日だよねぇ?」
後ろのほうで女の子たちが騒いでいる。
「なになに?何の話?」
機嫌のいい十和はその話にまざってみる。
「あの伝説だよー!!」
「伝説?」
一宮S校に伝わる伝説。
S校祭二日目の正午ぴったりに男女二人で
時計台の時計を見あげると、一生一緒にいれる。
見上げられる場所はただひとつ。
時計台の真下。
「そんなの、人が集まりすぎて無理だよ〜」
「そうだよ〜。中学も同じでしょ〜」
たしかに、どれだけの人数がここに通っているのか。
中学高校とあわせると、時計台の下には並びきれない。
十和も無理だな、と思い、メイド服に着替えだした。
今日もチャイムと同時に開始。
「わたし、10時にぬけていい?」
十和は、依織に小声で言った。
「いいよー。イツキくんの?」
「うん」
そう、イツキのクラスのシンデレラ。
王子様だって。
見るだけ見ないと。
「ただいまより、2年A組の演劇、シンデレラをお楽しみください」
ギリギリに体育館に入った十和。
息を切らしている。
1個イスがあいているのを見つけた。
そこに座る。
メイド服のまま来てしまったことに気がつく。
そろそろ王子が出てくるころだ。
「キャー!!」
王子が出た瞬間、みんなが騒ぎ出した。
王子の服をまとったイツキが、すごくかっこよかった。
騒いでいるのは中学生らしい。
生徒会長で、クールに見えるイツキは、
中学生みんなの憧れらしい。
美しくなったシンデレラは、すごい美人な子だった。
十和は負けたような気がして、
イライラして体育館を出てしまった。
キスシーンがあろうがなかろうが
自分には関係ない、と。
「あれ?十和はやかったね?」
10時から始まって10時30分に終わるわけがない。
10時30分に十和は教室に戻ってきた。
いらいらしながら。
「ちょっと休む!!コーヒーちょうだい!!」
「買ってきなさい」
「チーン・・・」
商品に手を出すな、と厳しいお叱り。
自販機はすぐ近くにあるので、あったかいコーヒーを買いにいくことにした。
放心状態で、買いに行く。
ボーっとしながら歩くのは好きだ。
「十和〜?買ってきたの〜?」
「うん。奥で休憩する・・・」
「これ、あげるわ〜」
受け取ったのは、小さく作ったパフェ。
大好きなチョコレートがかけられていた。
「どうしたの?」
「練習よ。練習」
練習したあとのパフェを十和に渡す依織。
小さく作ってあったのは、練習ではなく、依織の気遣い。
わざと作ってくれたものだった。
「おいしい・・・」
自分に自信がない十和はただただ、
イツキの連絡を待つだけ。
いつから一緒にまわるのだろう。
もしかして本当は一緒にいるのが嫌なんじゃ、と考えながら
依織の作ったパフェを食べていた。
「十和〜!ちょっと手伝って〜!」
お昼時になってきたので、お店のほうはお客さんがいっぱいだ。
飲食の出し物をしているクラスは同じようになっている。
すべてを忘れるかのように、忙しく働いてみた。
笑顔を振りまいて。




