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十和の時  作者: 樹月
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3/10

少しの幸せ

付き合って1年とちょっと。

長期休み近くになるとよく考える。

イツキとの関係のこと。

イツキは、冬休みや夏休みは実家に帰る。

その間、地元の友達と遊んでくるのが楽しいらしく、

その後は当分十和と連絡を取らなくなる。

十和は反対を押し切って出てきた為、帰る実家もなく、

バイトしかすることがなく、ただ待つだけ。

メールしても返事はない、電話をしても出てもらえない。

このままいけば、自然消滅。

それが怖いのか、もう少し待ってみようという考えがあるのか、

付き合うのか別れるのかはっきりしない状態が続く。

十和はもちろん、好きだから一緒にいたい。

でもイツキはそうではないのかもしれない。

考えながら、自宅へ帰りついた。

「ただいまぁ・・・」

静まり返った真っ暗な部屋に、電話の留守電ボタンが光るだけ。

本当に一人なんだな、と思う。

いつもバイトでくたくたになって帰ってから、次の日の準備、片付け。

本当に寝に帰っているだけのような部屋。

きっと一生こんなのが続いていくんだろうな、と毎日思う。

疲れていない日は恐怖だ。

眠ることができず、ただ時間がたっていくだけ。

今日はその日だ。


「ブッブッブッブッ」

夜1時に電話のバイブで起きる。

「はい・・・」

寝ぼけながら、誰からかも確認せずに出る。

「十和?寝てた?」

イツキだ。

イツキから電話がくるなんてことは1ヶ月に2回ほどしかない。

その日が今日とは。

起きていればよかったと、後悔し始めた。

でもまぁ、電話に出れたからよかった。

「寝てた・・・」

「そうなの?十和のクラス文化祭は何するの?」

「メイド喫茶・・・」

片言しか出てこない。

「眠い?」

「眠いけど、もっと話したい・・・」

「そっか。俺のところシンデレラするんだって」

「王子でしょ?克己ちゃんから聞いた・・・。なんでイツキからじゃなくて克己ちゃんから聞くんだろ・・・。いつもいつも・・・」

少しわがままっぽく言ってみた。

寝ぼけてるし、もうこうなりゃ何でも言っちゃえ。って気分で

思ったことを少しずつ言い出した。

こんなのはわがままにすぎず、

たまにしか連絡がこないイツキに何言ってるんだろうと思いながら。


気づいたら電話を出てから1時間たっていた。

ひたすら文句やわがままを言いつつ。

イツキが疲れてるのを知っておきながら

こういうことばかりするからあまり連絡がこなくなっちゃうんだ。

わかってはいるけど、思ったことをすぐ口に出すタイプの十和は

とめることができなかった。

「イツキ」

「ん?」

「好きだよ・・・」

「うん・・・」

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