第21話 「仲間募集中」
あれから数日が過ぎた。
シルヴァーナ近郊に構えた拠点は、相変わらず簡素なままだ。
木組みの小屋が一棟と、物資を置くための天幕が二つ。四人で過ごすには、決して広いとは言えなかった。
「人が足りねぇ」
朝、地図を広げながら、思わずそう呟いた。
「は?」
リオンが、寝起きの顔で首を傾げる。
「人が足りねぇって、何の話だよ」
「ギルドの話に決まってるだろ」
地図の上に広げた、これまでの依頼の記録を指差す。
「村の魔物討伐、商人の護衛、街の雑用。依頼はどんどん増えてるのに、受けられる人数は俺たち四人だけだ。このままじゃ、いずれ手が回らなくなる」
「なるほどな」
ロビンが、腕を組みながら頷いた。
「確かに、昨日も断った依頼が二つあったな」
「でしょう」
メイが、淡々と続ける。
「現状、私たちの対応能力には、明確な限界があります。ギルドとしての規模を広げるのであれば、新たな人員の確保は、避けて通れない課題です」
「つまり」
リオンが、にやりと笑った。
「新しい仲間探しってことだよな? よっしゃ、任せとけ! 俺が町で見つけてきてやるよ!」
「お前が町に行くと、だいたいロクなことにならねぇんだよな」
ロビンが、半目でリオンを見る。
「失礼な! 人材発掘には定評があるんだよ、俺は!」
「お前の言う定評、大半が酒場の女の子だろ」
「それとこれとは話が別だ!」
リオンが、必死に反論する。その様子を見て、思わず苦笑してしまった。
「まあ、冗談はともかく」
気を取り直すように、改めて口を開く。
「本気で、新しいメンバーを探す必要がある。戦闘要員だけじゃねぇ。拠点の管理とか、情報収集とか、色んな役割が必要になってくるはずだ」
「それなら、誰でも良いというわけではありませんね」
メイが、静かに付け加える。
「星屑の誓約の理念に、賛同してくれる人物であることが前提です。力だけがある人材を集めても、それは神託連盟と変わらなくなってしまいます」
その言葉に、深く頷いた。
「そこは重要だな。強さより、人柄だ」
「言うのは簡単だけどよ」
リオンが、腕を組みながら言う。
「そんな都合のいい人材、そうそう見つかるもんかね」
「見つけるしかねぇだろ」
地図を畳みながら、立ち上がった。
「街に出て、困ってる奴を探す。今までずっと、そうやって信頼を積み上げてきたんだ。仲間探しも、やり方は変わらねぇよ」
「つまり、いつも通り、ってことか」
ロビンが、小さく笑う。
「ああ、そうだ」
剣を腰に差しながら、答えた。
「困ってる奴を助けてりゃ、自然と、仲間になりてぇって奴も出てくるはずだ」
「ナンパ戦術ってことか」
リオンが、茶化すように言う。
短く、しかし確かな語気で返した。
「人を口説くんじゃねぇ。信頼を積み重ねるんだよ。地道にな」
「分かってるって、冗談だよ」
リオンが、両手を上げて降参のポーズを取る。その軽口に、ロビンとメイが、揃って小さく笑った。
四人は、改めて拠点の外へと出た。朝の光が、シルヴァーナ近郊の森を柔らかく照らしている。
「それじゃ、手分けするか」
提案すると、メイが頷いた。
「ええ。街の情報収集は、私とリオンで。マスターとロビンは、依頼の処理に回ってください」
「了解だ」
ロビンが、盾を担ぎながら答える。
「困ってる奴がいたら、片っ端から助けて、ついでに勧誘もしてきますよ」
「ついでは余計だけどな」
苦笑しながらも、その言葉に、確かな期待を感じていた。
この世界に転移してから、まだそれほど時間は経っていない。それでも、ギルドという形で、少しずつ、この世界に根を張り始めている実感がある。
(仲間が増えれば、できることも増える)
それは、単に戦力が増えるという意味だけではなかった。
信頼できる仲間が増えるということは、この世界で生きていく上での、確かな支えが増えるということでもある。
「よし、行くか」
改めて、皆に声をかけた。四人は、それぞれの方向へと、歩き出していく。




