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今頃になって高校時代の彼女がNTRされていたと知ったけど、今の僕にはノーダメージ  作者: 遼魔


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14.思惑

前回、凛と冴香が夜遅くに食事に行った場面でのそれぞれの思惑です。

Side:凛


楠島冴香(くすしまさえか)という女性と会った時の印象は、美人なだけじゃなくて凛々しくて格好よくて、同性なのに見惚れてしまった。

背が高くて姿勢が正しいせいか、立ち姿も美しい。武道経験者かなという推測は当たっていた。落ち着きのある声で、歳は一つしか違わないのに、包容力を感じさせる雰囲気。きっと、男の人に依存するのではなく、パートナーとして寄り添える人。


そんな人がたかくんの今の彼女だと聞いて、「全然敵わないな」と思わされた。

たかくんと付き合っていた高二の冬。たかくんがバイト先の女子大生と帰っているのを見かけた時、ものすごい嫉妬を覚えた。それは私よりも女らしい魅力を感じたから。

でも、冴香さんには精神的な強さと人間的な魅力を感じて、嫉妬するより負けを認める気持ちの方が大きかった。


元カノである私と今カノである冴香さん。そんな二人で食事するなんて、普通ならあり得ない。彼氏を襲った女なんて嫌われて当然。私を押さえた時は怒りのオーラがバチバチに見えるほどだったのに、少なくとも今は平然としている。その精神はいったいどうなってるの?


私は戸惑うばかりだったけど、よっぽどお腹が減っていたのか、冴香さんは気にせずもりもり食べていた。


食べ終わった後はたかくんと私が付き合っていた頃の様子を知りたがって。スマホに残してあった写真を見せたら、冴香さんは目を輝かせて喜んだ。

その代わりに大学時代のたかくんのエピソードを聞かせてくれた。

いつの間にか私たちはたかくんの話で盛り上がっていた。もっとも、現在進行形なのは冴香さんで、私は過去の関係でしかないのだけどね。





食事を終えて店を出た時、20代半ばくらいのチャラそうな男二人が私たちに声をかけてきた。店内にいる時から、ちらちらとこっちに視線を送ってきたのに気づいていた。


「ねーねー、お姉さんたち。俺たちと遊ばない?」


男たちの粘りつくような視線が私と冴香さんの体に注がれる。特に私の胸をじっくりと見ているのがわかってうんざりした。


ふと私は冴香さんがどう対処するのか気になって彼女を見た。

冴香さんは話しかけてきた男二人を一瞥したけど、何も聞こえなかったように歩き出す。私は慌てて追いかけた。


「ちょっ、待てよ」

「おいおい無視すんなって」


車まで近づいたところで男たちは小走りで前に回り込んできた。さっきは笑みを浮かべていたけど、無視されたことで少し苛ついて見えた。


「邪魔だ。どいてくれ」

「いや、だからさ、俺たちと遊ぼうって」

「断る」


清々しいほどきっぱりとした断り方だった。だけど、男たちは諦めなかった。笑みを消して獲物を狙うような獰猛な表情と化した。まずいことに夜遅い時間で、周囲は暗いし人もいない。


「ったく、下手に出りゃいい気になりやがって」

「デカ女はいいや。そっちの巨乳ねーちゃんだけもらっていくか」


冴香さんを素通りした男二人がニヤニヤしながら私に近づく。


「さ、行こうぜ」

「え……やだよ……」


私は高二冬の苦い経験で、ガタイのいいチャラ男にトラウマがある。迫られただけで身が竦む。慌てて距離を置こうとしたけど、左右から挟まれて腕を取られた。冴香さんは黙って見ているだけ。男二人相手に臆して強く言えない私を見て、男たちは調子に乗ってきた。


「へへっ。いいカラダしてんな。朝まで楽しもうぜ」

「いやっ、離して!」

「いいからいいから」


両側から抱え込まれた私はなすすべもなく男たちが乗ってきたと思われるミニバンへと引っ張っていかれた。冴香さん、助けてとまでは言わないけれど、せめて誰か呼ぶくらいしてくれないの?


そうか。打ち解けたように思えて、内心では私に怒っているんだ。だから、私が酷い目に遭ったって当然だと思っている。

そうだよね。人の彼氏を無理やり襲った私。自業自得か。


男の一人がスライドドアを開いて私を押し込むのと共に背後から抱きすくめられた。もう一人が運転席に乗り込んでエンジンをかけた。

いったんは諦めかけた私だけど、車内という密室で男に抱えられた途端、昔の恐怖が蘇ってきた。


「でへへ、おっぱいでけぇ」

「やだっ! やめて! 助けてぇ!」

「おいおい、着くまで我慢しろよ。ん? なんだ?」


背後から胸を揉まれて抵抗していた私はすぐに気づかなかった。顔を上げると、笑顔の冴香さんが運転席の窓から呼びかけていたみたい。


「なんだよ。やっぱり一緒に来たいってか? まぁ、2-2になってちょうどいいか」


ガチャっとドアを開けて運転手が降りたと思った直後、「ぎゃあっ!」と情けない叫び、そして地面に倒れ込むような鈍い音が聞こえた。


それからはあっという間だった。

いつの間にかパトカーが到着していて、捕まった男たちは余罪有りとみなされて警察署まで連行されていった。その間、冴香さんが制服警官に状況説明していた。


「怖い思いをさせてごめんね。連れていかれるまで手は出せなかったから」


話が済んだ冴香さんはすまなそうに私に謝った。解放された私は放心したままで、声をかけられた途端にしがみついてしまった。いまだに震えている私を冴香さんは優しく抱きしめてくれた。


後で聞いたところ、私が連れていかれる間に通報していたらしい。

男二人を制圧した彼女の手際は見事で、現職警察官であると明かされて納得した。

ふと思った。きっとあの時、彼女だったら男に屈することなんか無かったんだろうな。





その後、さっぱりしたい気分になった私たちは郊外のスパリゾートに行くことになった。


改めて考えると、今日はいろいろあり過ぎた。

たかくんと10年ぶりの再会。別れの事情を打ち明けることができた。今でも好きだと告白して復縁を申し出たけど、結婚を考えている彼女がいるからと断られた。


いったんは諦めたけど、帰宅してからたかくんとの会話を反芻しているうちに止まらなくなった。大人になったたかくんの顔、体つき、声、触れた時の感触……すべてが愛おしくて。部屋で悶々としているうちに体が疼いて一人で慰めていた。


夜になってもたかくんへの想いが止まらない。

たかくんが欲しい。たかくんのぬくもりを肌で感じたい。付き合っていた頃のようにエッチしたい。願わくば、たかくんの子供が欲しい……。


大事に取っておいた、たかくんの写真―――幼い頃から高校で付き合った頃まで―――を眺めている内に欲望が止まらなくなって、女の本能が理性を超越した。私は家を出て、たかくんの家に向かっていた。


たかくんちの裏口のドアの鍵は閉まってなかった。誰にも邪魔されることなく、たかくんの部屋に侵入できちゃった。子供の時とは違う。犯罪行為だと頭の隅ではわかっていた。

でも、10年ぶりに部屋に入った瞬間、胸の高鳴りが抑えきれなかった。

たかくんの寝顔を眺め、頬に触れたら、もう我慢できなくなって……。


あと少しのところで制止された時、私の人生は終わったと思った。

思えば、間違いだらけの人生だったな。肝心なところで選択を間違え続けたせいで、愛する人を失った。欲望に負けたせいで今度は仕事を失い、たった一人の肉親であるお母さんを悲しませるんだろうなと思った。


こんな私、生きてる価値なんて無いと思って絶望していたのに、なぜか今カノである冴香さんの仲介でたかくんに謝罪することができた。たかくんは謝罪を受け入れて、大ごとにしないと言ってくれた。


たった一つしか違わないのに、冴香さんの器が大きすぎる。人として、女性として、やっぱり敵わない。

それにレイプしようとした私を許してくれた、たかくんにはいくら感謝してしきれない。


どんなことでもいいから、冴香さんとたかくんに恩返ししたい。私はそう思うようになっていた。





  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆





Side:冴香


宮里凛は女性的な魅力に溢れているのに、要領が悪くて不器用な印象を受けた。感情に流されやすく、出会った相手によって人生を左右されやすいタイプなのだろうと思った。


所轄の生活安全課に勤務していて、似たような女性からの相談をよく受けた。主にDV被害者としてだ。恋人や夫がクズだった場合、なかなか逃げ出せずに酷い目に遭う。

本人は辛い、逃げ出したいのに、男がたまに見せる弱さに絆されて捨てられない。


女性支援センターから相談を受けて本人と面会した際、体の見えない部分に痣がいくつもあったり、精神が病んでしまっているのを目にして、心が痛んだ。


聞いたところ、凛はまだマシな方かもしれない。

それは孝哉と幼馴染であり、恋人として青春を過ごせたのが大きい。彼女が高二の冬に選択を誤ったのは若さゆえの過ちもあったのだろう。


その結果、大学に進学した孝哉は私と出会い、傷心を癒やすことができたようで、私たちは両想いとなれた。今では結婚を約束するに至っている。

もしも凛が選択を誤ることがなければ、私は孝哉と付き合うことができなかった可能性が高い。


それはともかく、孝哉とは物心ついた頃から同じ時を過ごし、初めて同士で結ばれた凛に対して、私は羨ましい気持ちを抱いていた。

出会った頃の孝哉も母性本能や庇護欲をそそる存在だったけど、写真で見せてもらった昔の孝哉はとても可愛かった! そんな孝哉の隣にいて、独り占めしてきた凛が妬ましい!


過去のことなのにそんな気持ちを抱くなんて、私はどうしようもないくらい孝哉を愛しているんだなと自嘲した。


そして今、夜這いをかけた元カノの凛と、ぎりぎりのところで防いだ今カノの私は大浴場に浸かっている。

一人の男性を愛する女二人。普通なら仲良くなれるはずがない関係。私は凛を嫌うべきなのだろうが、そういう気持ちを抱かないのは、孝哉と愛し合っている。互いに信頼し合っている現状に満ち足りているからだろうか。


「凛は……今でも孝哉のことが好きなんだな?」

「はい。高二の冬にたかくんと別れたことを今でも悔やんでて……。長野に引っ越してから何人か付き合ったけど、たかくんほど愛せる男はいませんでした」

「じゃあ今後、孝哉のことを振り切って、他の男を好きになる可能性ある?」


凛は寂しげな表情で顔を横に振った。


「体目当ての男は吐いて捨てるほどいました。でも、私のことを心底愛してくれた男はたかくんだけ。たかくんと結ばれないのなら、もう私は一生独身でいいです」


湯に浸かる凛は女の私から見ても、惚れ惚れするほどの色気を漂わしている。その気になれば、どんな男でも惑わせることができただろうに、不器用な彼女は未だに初恋の孝哉を想っているらしい。


私は黙り込んで考えていた。不意にある考えが思い浮かんだ。普通はありえない。乗るはずがない。しかし、今の凛なら乗るかもしれない。

長い目で見れば、それは彼女のためにならない。女にとって貴重な20代が終わるまで、さらにそれ以上縛ることになるだろう。凛が孝哉と離れ、自分で人生を切り開いていった方が幸せになれるのではないだろうか。


でも、うまくいけば、私も、孝哉も、そして凛にとっても、良い方向にいくかもしれない。

ただ、こんなことを考え付く自分はずるい女だと思った。孝哉と出会った頃の初心(うぶ)な私なら、考えもしなかっただろう。私も仕事で人の弱さやずるさを見慣れて擦れてしまったのか。


「あの、冴香さん?」


いつしか、凛が心配するほど長考していたらしい。長く浸かりすぎて、湯あたりしそうになっていた。

いったん、風呂から出ることにした。

そして、私は施設内のカフェに凛を誘って話を切り出した。


「凛の気持ちはよくわかった。かといって、私は孝哉を譲るつもりはないよ。私たちの結婚は既定路線だからね。でも、近い将来、凛が孝哉の近くにいられるようにできるかもしれない」

「えっ!?」


凛は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした。凛の中では孝哉との縁は完全に終わったのだと思っていたからだろう。


私はじっくりと言葉を選びながら話した。

凛は怪訝そうな顔から驚きの顔、そして最後は期待を孕んだ表情となった。


「現時点では何も整っていない未確定の提案で口約束に過ぎない。あくまでも決めるのは凛次第だ」

「ええ。わかっています。だけど、私にとっては、すごく魅力的に思えます。私、頑張るので、ぜひ、お願いします」

「ふふ。凛ならそう言うと思っていた。ただし、その前に……」


明日になったら凛が孝哉に誠心誠意謝罪すること。孝哉が謝罪を受け入れられたら次のステップ。凛に一つの試練を課す。それをクリアできたら準備を進めさせるつもりだった。



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何人か付き合った、体目当ての男は吐いて捨てるほどいた 凛は望んでないんだろうけど男が寄ってくるしそんな強く拒めるタイプでも無さそうだから 本人は不本意ながらも付き合った相手以外にも結構経験ありそうな…
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