勝算
『神』それは古来からいると信じられ人々の拠り所となる存在。
この世界は奴らの手によって創りだされ、発展させられ、そして滅ぼされていく。
神々は気まぐれでありながら絶対的であり、その意思一つで文明は栄え、あるいは一夜にして消え去る。
そんな神々を滅ぼし、自らの力としていった“もの”がいた。
この物語はそのものの姿を示し、語り継いでいくものである。
戦いが始まった途端。
勇者は迷いなく『勇者』の力を発動する。
狙いはただ一つ。
目の前の存在の位階を引きずり下ろすこと。
だが――
その力は作用しなかった。
勇者の力は神にのみ干渉する。
位階を落とし、干渉可能な存在へと変質させる絶対的な権能。
しかし、そのものは神ではない。
ゆえに――
効かない。
だが勇者は動じない。
理解した瞬間、すでに次の行動へ移っていた。
踏み込む。
一気に間合いを詰める。
その速度は人間の域を遥かに超えている。
空気が裂け、音すら遅れて追いつく。
振り抜かれる刃。
迷いはない。
積み重ねられた戦闘経験が、その一撃にすべて込められている。
だが――
「――剥奪」
そのものの力が発動する。
勇者の内側から、何かが削ぎ落とされる。
身体強化に関わる能力。
その約四割。
速度が鈍る。
踏み込みが狂う。
わずかな遅延が生じる。
勇者はそれを理解する。
異常を認識し、即座に補正しようとする。
だが――
0.1秒にも満たない停止。
それが致命的だった。
そのものは動く。
『超越』
制限を踏み越える。
出力を引き上げる。
あらゆる強化を、限界の外へ押し出す。
次の瞬間。
そのものの一撃が、勇者の首元へと叩き込まれる。
殺すためではない。
止めるための一撃。
勇者の意識が途切れる。
その身体は力を失い、地へと崩れ落ちた。
――――――――――――――――――――
そのものは振り返らない。
倒れた勇者には目もくれず、次の対象へと向かう。
勇者の背後にいた神。
『封印』の神。
接近。
攻撃。
だが――
通じない。
確かに当たっている。
だが、意味を持たない。
まるで最初から存在しなかったかのように。
次の瞬間。
『封印』
神の権能が発動する。
空間が固定される。
動きが、変化が封じられる。
そのものの速度が落ちる。
正確に――27%。
行動が制限される。
通常であれば、それは敗北を意味する。
だが――
そのものは動じない。
『超越』
その状態を否定する。
拘束という結果も、その過程も。
すべてを踏み越える。
固定された空間が崩れる。
制限が消える。
続けて――
「――剥奪」
対象は力そのもの。
『封印』という権能。
神の力が引き剥がされる。
存在の一部が欠けるように、神が揺らぐ。
そのものは奪った力を即座に使う。
迷いも理解も不要。
最初から使えたかのように。
『封印』
対象は――神自身。
動きが止まる。
抵抗はできない。
そのまま、存在が固定される。
そして――
変質が始まる。
神は封印されると、石板となる。
例外はない。
『封印』の神もまた、石板へと変わった。
戦闘は終わる。
――――――――――――――――――――
そのものは、倒れた勇者へと視線を向ける。
まだ生きている。
拘束する。
そして、そのまま放置する。
待つ。
目を覚ますまで。
やがて。
勇者は意識を取り戻す。
目の前には、そのもの。
逃げ場はない。
そのものは、初めて“語る”。
『勇者』の力について。
その力は、所有者が死ぬことで消失する。
そして――百年。
新たに現れることはない。
だが例外がある。
譲渡。
所有者が望めば、他者へと渡すことができる。
そのものの狙いは、それだった。脅す。
拒めばどうなるかは、明白。
だが――
勇者は拒む。
一切の迷いなく。
そして。
その場で命を落とした。
――――――――――――――――――――
そのものは動じない。
それすら想定していたかのように。
視線を移す。
『封印』の神の石板。
破壊する。
神が再び顕現する。
その瞬間。
『超越』
力を最大まで引き上げる。
狙いは一点。
“目”。
一撃。
神は崩壊する。
『封印』の神の弱点。
封印された後、解放されてから三分以内に目を攻撃されること。
条件は満たされた。
ゆえに、滅びる。
その力が流れ込む。
『封印』
拘束し、固定する力。
そのものは三つの権能を得る。
『超越』
『剥奪』
『封印』
――――――――――――――――――――
再び、神域へ。
今度は『封印』を介して侵入する。
拒絶は起きない。
干渉もない。
通る。
神域へ。
空間が歪む。
現実が揺らぐ。
だが、そのものは止まらない。
そして――
侵入した直後。
“それ”はいた。
一柱の神。
ただそこに在るだけで空間が歪む。
存在そのものが周囲に影響を与える。
明らかに違う。
これまでとは。格が違う。
第4話読んでいただきありがとうございます
勇者が相手にならないそのもの、一体なんなんでしょうね
次回もお楽しみに!!




