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神滅者  作者: おまめ
始まり
2/37

領域

『神』それは古来からいると信じられ人々の拠り所となる存在。


この世界は奴らの手によって創りだされ、発展させられ、そして滅ぼされていく。


神々は気まぐれでありながら絶対的であり、その意思一つで文明は栄え、あるいは一夜にして消え去る。


そんな神々を滅ぼし、自らの力としていった“もの”がいた。


この物語はそのものの姿を示し、語り継いでいくものである。


---


神域に踏み込んだそのもの。


そこは現実とは完全に切り離された領域。

空間は層のように幾重にも重なり、上下左右という概念すら曖昧になる。


一歩踏み出したはずの足は、確かに前へ進んでいるのに距離の感覚は存在しない。

遠近は意味を失い、近いはずのものが遥か彼方に感じられ、遠いものが目前に現れる。


足場は存在しているはずなのに、踏みしめた感覚はない。

重力すら不確かで、落ちるという概念さえ成立していない。


音も、光も、すべてが遅延し、あるいは先行して知覚される。

耳に届いた音はすでに過去のものであり、目に映る光はまだ起きていない現象である可能性すらあった。


だが、そのものは一切の違和を覚えない。

認識の歪みも、空間の破綻も、すべてが“あるべき形”として処理されている。


『超越』――

すでにあらゆる法則を踏み越えているがゆえに、この異常すら“正常”として受け入れていた。


---


その時だった。

空間の一部が、音もなく削り取られる。

崩れるでもなく、裂けるでもなく、ただ“存在しなくなる”。


次の瞬間、そこから“何か”が飛び出した。


神。


それは形を持っているようで、持っていない。

視認はできるが、確定しない存在。


その神は一切の前触れもなく、そのものへと一直線に突っ込んできた。


纏う気配は異様に薄い。

まるでそこに存在していないかのような錯覚を覚える。


だが、触れれば理解できる――

それは極めて危険な存在であると、本能が告げていた。


その神の権能は『剥奪』


触れた対象から“力”そのものを奪い取る神。

能力、概念、現象。

さらには存在の一部すら例外ではない。

触れられた時点で、すでに敗北は確定する。


---


神は迷いなく腕を振るう。


その動作に伴い、空間が引き裂かれる。

いや、“切り取られる”と言うべきか。

そこにあったはずの存在が、丸ごと削除される。

その攻撃は、そのものの存在そのものに干渉しようとしていた。


だが――


そのものは余計な動作を一切取らなかった。


ただ、僅かに身体を傾ける。

ほんの数ミリの動き。

それだけで、神の攻撃は完全に外れた。


まるで最初から当たる可能性など存在しなかったかのように。

運命すら操作されたかのような回避。


---


次の瞬間、そのものは動く。


『超越』の力を解放。


世界の制限を無視し、速度という概念すら踏み越える。


加速という過程すら存在しない。

“すでにそこにいる”という結果だけが成立する。


視認不能。

認識不能。


神の知覚を完全に置き去りにする領域へと到達する。


そのものの狙いはただ一つ。


“弱点”を突くこと。


---


神々には、それぞれ必ず致命的な欠陥が存在する。


どれほど強大であろうと、例外はない。

それは力の代償であり、構造の歪み。

完全であるがゆえに、不完全である証。

そしてそのものは、それを“知っている”。

見たわけではない。

推測でもない。


ただ最初から理解している。


理由は不明。

だが確実に把握している。


---


そのものは手を伸ばす。

狙いは一点。


ほんの僅かな、しかし確実に存在する“終点”。


触れれば終わる場所。


そこへ、殺すためだけの一撃を叩き込もうとした。


---


だが、その瞬間。


神の目が、わずかに動いた。


認識できないはずの速度の中で、それでもなお反応する。


「――剥奪」


声が、遅れて響く。


言葉が現象に追いついていない。

それでも、権能は発動していた。


---


次の瞬間、そのものの内側から“何か”が引き剥がされる。


感覚ではない。

実体でもない。


だが確実に存在していた“力”。

『超越』の一部。

それが、確かに奪われた。


---


世界が、わずかに“重く”なる。


それまで当然のように成立していた高速移動が、成立しない。


速度という概念を踏み越えることが、できなくなった。


ほんの一瞬の遅延。

だがそれは、この戦いにおいて致命的だった。


---


神の反撃。


先ほどまで認識すらできなかったはずのそのものを、今度は正確に捉える。

腕が振り抜かれる。


その軌跡は空間を侵食し、触れた存在を消し去る。

触れれば終わり。


さらなる“剥奪”が行われれば、そのものは確実に崩壊する。


---


しかし――


そのものは止まらない。


むしろ、その状況すら織り込み済みであるかのように。


---


そのものは、あえて一歩踏み込む。


回避ではない。

防御でもない。

迎撃ですらない。


ただ、最小限の動きで神の懐へと入り込む。

致命の間合い。

互いに逃げ場のない距離。


---


そして――


指先で、軽く触れた。


---


“弾く”。


それだけだった。

力と呼べるほどのものではない。

衝撃ですらない。


だがその一撃は、神の身体の一部に正確に作用した。


---


次の瞬間。


神の身体が、内側から弾け飛ぶ。

外からの破壊ではない。

内部から崩壊する。


存在そのものが維持できなくなる。


遅れて、崩壊が始まる。


---


神は理解する。


自分が“終わる”という事実を。


---


『剥奪』の神の弱点。


それは能力発動から0.1秒以内に、虫一匹を殺せる程度の極めて微弱な力を“額”に受けること。


あまりにも限定的。

あまりにも矛盾した条件。

強大な権能と、極端すぎる脆弱性。

だが、それこそが神という存在の本質。


絶対的であるがゆえの歪み。


---


そのものは、それを理解していた。


“剥奪”が発動する瞬間。

その僅かな隙。

そして、どこを、どの程度の力で打てばいいのか。


すべてを、最初から知っていたかのように。


迷いは一切なかった。


---


神は崩れ落ちる。


その存在は粒子のように分解され、神域へと溶けていく。

音もなく、抵抗もなく。


ただ消える。


---


同時に、その力が流れ込む。


『剥奪』


奪う力。


触れたものから全てを奪い取る理不尽な権能。


---


そのものの中で、二つの力が重なり合う。


『超越』と『剥奪』


相反しながらも、確かに共存する力。

互いに干渉せず、否定せず、ただそこに在る。


---


そのものは、何も語らない。


何も感じない。


ただ、次へ進むための力が増えた――

それだけだった。

第2話読んでいただきありがとうございます

今回から本格的に戦の軌跡が記されました

次回もお楽しみに

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