過剰
神とは、絶対である。
触れることすら許されない存在。
だが――それを滅ぼし、力を奪う“例外”が現れた。
そのものは止まらない。
ただ前へ進み、神を越えていく。
そして今――
その先へ踏み込む
人間界――そこで暴れている神々の数は、想定よりも大きく下回っていた。理由は単純。神々同士で争っているからだ。
本来、神域では下剋上は成立しない。位階の高い者が絶対であり、低い者は従うしかない。逆らうという概念すら成立しない構造だった。だがここは人間界。位階という枷は機能しない。命令は絶対ではなくなり、強制力は消え、序列は崩壊する。
その結果、抑え込まれていた不満が一気に噴き出した。位階の低い神々は、これまでの鬱憤を晴らすかのように、上位の神へと牙を剥く。従う理由が消えた瞬間、関係は崩れ、暴力だけが残る。衝突は連鎖し、混戦となる。
その余波は人間界へと降り注ぐ。制御されていない力が空間を裂き、大地を抉り、都市を消し飛ばす。空は歪み、地は崩れ、風は刃となり、炎は意思を持つかのように広がる。意図の有無など関係ない。ただそこに在るだけで災厄となる。
人間は抗えない。ただ巻き込まれ、消えていく。
だが――そのものは気にしない。
目の前にいる神を、順に滅ぼす。それだけだった。
神同士の戦いも、逃走も、干渉も関係ない。視界に入ったものを処理する。思考の余地すらない。ただ効率だけが存在する。
わずか三十七秒。二十を超える神が消滅する。
だが――違和感。
滅ぼしても何も流れ込まない。権能が、一切得られない。これまでならば必ず感じていた“流入”が存在しない。
そのものは一切の迷いなく結論へ至る。これは“本体”ではない。
視線を巡らせる。情報を拾う。違和の中心を特定する。そして最後に残った一柱へと向く。
その神だけが、静かに佇んでいた。
逃げない。戦わない。ただ観測するように、そのものを見ている。
次の瞬間、そのものは理解する。これまで滅ぼしてきた神々はすべて――“造られたもの”。
『再現』。
対象を理解していれば、その存在を再現し、実体化させる権能。目の前の神は、それを用いて神々を複製していた。構造だけをなぞり、中身を伴わない“殻”として生成していた。
ゆえに、どれだけ滅ぼしても権能は得られない。
そのものは即座に本体へと踏み込む。
距離は意味を持たない。『超越』によってその概念は破棄される。踏み込んだ時点で、到達している。
攻撃。
だが――滅びない。
手応えはある。命中している。だが終わらない。崩壊しない。
弱点は既に把握している。左目を潰し、その直後に腹部へ攻撃を与える。それで終わるはずだった。だが終わらない。
理由も、すぐに理解する。
“重なっている”。
『再現』の神は、これまで再現してきた神々の権能を保持している。単なる再現ではない。蓄積している。
その数――六十一。
平均三つの権能を持つ神が二十以上。それらすべてを内包している。
つまり、この神を滅ぼすには――六十一の弱点を同時に突く必要がある。
不可能。
解析だけで時間が尽きる。把握したとしても同時発動は現実的ではない。
そのものはそれを理解する。ならば――前提を壊す。
『封緘』を発動。
空間が固定され、流れが止まり、権能の発動が強制的に封じられる。六十一の力が同時に沈黙する。動きもまた拘束される。
続けて『剥奪』。
奪う。削ぎ落とす。重なっていた権能を一つずつ引き剥がしていく。剥がされた力が流れとなり、そのものへと収束していく。
流入。蓄積。変換。
だが――
一つだけ、動かない。
触れている。干渉している。それでも、剥がれない。
『assimilation』。
再現ではない。模倣でもない。取り込み、統合し、自らの一部として成立させる権能。
外在ではない。内在。
ゆえに――奪えない。
そのものは一瞬で理解する。同時に、勝機も見出す。
今、残っているのはそれだけだ。
六十一の権能は剥がれ落ちた。複雑に絡み合っていた構造は崩れた。
残ったのは――『assimilation』単体。
完全に露出した核。
その瞬間、そのものは勝利条件を確定させる。
『assimilation』の弱点。
それは――一度に大量の権能の効果を受けること。
統合する側であるがゆえに、過剰な入力には耐えられない。受け止めきれず、崩壊する。
そのものは、すでに六十一の権能を手中に収めている。
ならばやることは一つ。
すべてを、同時に叩き込む。
『封緘』を解除。
封じられていた六十一の権能が一斉に解き放たれる。暴走寸前の力。それを、そのものは制御下に置く。
『超越』を発動。
限界を無視し、同時並列処理を強制する。干渉。重複。衝突。本来共存しない力を、無理やり一つの流れへと圧縮する。
歪みが生じる。だが問題ではない。成立させればいい。
そのまま――撃ち込む。
『assimilation』へ。
受け止める。統合しようとする。だが処理が追いつかない。
六十一の権能が同時に流れ込み、内部で衝突する。
統合するはずの力が、逆に分裂を引き起こす。
“取り込む”という本質が、限界を超える。
耐えきれない。
内部構造が崩れ始める。
亀裂が走る。
拡大する。
止まらない。
そして――崩壊。
『assimilation』は、自らの性質によって自壊する。
神は、完全に滅びる。
静寂。
戦場は沈黙し、残響だけが残る。
その場に残されたのは、わずかな“断片”。
それはこれまでとは違う。外から流れ込むものではない。触れた瞬間、内側へと溶け込む。
拒絶がない。分離もない。
自然に――馴染む。
そのものは理解する。
奪ったのではない。
“取り込まれた”。
境界が、曖昧になる。
自分と他者。内と外。その区別が薄れていく。
そのものは変わり始めている。
奪う存在から――統合する存在へ。
神界へ至るための変質は、すでに始まっている。
そしてそれは――もう止まらない。
第15話いかがでしたか?
そのものは今回で権能を61個手に入れました 次回は神界への侵入ができるか?!
次回もお楽しみに‼︎




