亡命後、初めての夜
アイリスとフィオナはメイドたちの異常さに気がついたようです
アイリスとフィオナは互いに顔を見合わせた。
そして、同じ結論へ辿り着く。
(この屋敷のメイドたちは普通じゃない。一人一人が、私たちの想像を遥かに超える実力者だ)
そんな二人の様子をよそに、レイは何事もなかったかのように歩き出す。
「それじゃあ客室へ案内するよ」
「はい」
セレスティアも静かに頷き、一行は再び歩き始めた。
しばらく歩くと二階へ続く大階段へ辿り着く。
「こっちが客室のあるフロアなんだ」
レイが説明する。
「屋敷の二階はほとんど客室になってるから、気兼ねなく使ってもらって大丈夫」
「ありがとうございます」
セレスティアが頭を下げる。
その時だった。
エフィリアが再び姿を現した。
「レイ様、ご用意が整いました」
「ありがとう」
「こちらへどうぞ」
エフィリアが先頭に立ち、廊下を進む。
先ほど同様、その歩き方には無駄がない。
アイリスとフィオナは今度こそ見逃すまいと、その足運びへ意識を集中させた。
(音がしない……)
(足裏の重心移動まで分からないなんて……)
二人は再び驚かされる。
やがて三つ並んだ客室へ到着した。
「こちらでございます」
エフィリアが扉を開ける。
中には広々とした寝室。
大きなベッド。
暖炉。
ソファ。
書棚。
大きな窓からは夕日に染まる庭園が見えていた。
「……すごい」
思わずフィオナが呟く。
「お城のお部屋みたい…」
アイリスも感心している。
セレスティアは静かに部屋を見渡した。
「ここまでしていただいて……本当にありがとうございます」
レイは笑って答える。
「遠慮しなくていいよ。部屋なんてめちゃくちゃ余ってるし」
ミオも微笑む。
「それに、この屋敷は人が増えた方が賑やかでいいわ」
その言葉にセレスティアもようやく自然な笑みを浮かべた。
「では、お言葉に甘えさせていただきます」
そこへクロエが荷物を運び終え、一礼する。
「お荷物はこちらへ」
「ありがとうございます」
フィオナはクロエへ深く頭を下げた。
クロエは静かに微笑むだけだった。
その頃、
「みゅうちゃ~ん♡」
廊下ではルナが再びみゅうを抱き上げていた。
「今日も可愛いわね~」
「みゃ~♪」
その微笑ましい光景を見たアイリスが小さく笑う。
「さっきまで、あんなに緊張していたのに……」
フィオナも苦笑した。
「猫を抱いている時は、本当に普通の女性なんですけどね……」
するとルナがこちらへ振り向いた。
「今日は特製のお魚料理を用意するそうですよ。みゅうちゃんも楽しみね」
「みゃ!」
嬉しそうに返事をするみゅう。
その姿に全員が思わず笑顔になる。
張り詰めていた空気が少しだけ和らいだ。
その時だった。
コンコン。
エフィリアが再び扉を叩く。
「レイ様」
「どうしたの?」
「夕食の準備が整いました」
「あ、もうそんな時間か」
窓の外を見ると、空はすっかり茜色へ染まっていた。
「セレスティアさん」
「はい」
「今日は歓迎も兼ねて、一緒に夕食にしよう」
セレスティアは少し驚いたあと、嬉しそうに微笑む。
「ありがとうございます」
アイリスとフィオナも顔を見合わせ、小さく頷いた。
こうして三人にとって、亡命後初めて迎える穏やかな夜が始まろうとしていた。
セレスティアたちには穏やかな夜になりそうです




