王女様、転入する
臨時休講が終わりました
翌朝、突然の休暇が終わり、リベルタ中央魔導学院には再び生徒たちの活気が戻っていた。
「昨日は遊びすぎたなぁ」
「私は商店街で買い物ばっかりしてたよ」
「交流戦も終わったし、しばらくは平和かな」
思い思いに雑談を交わしながら、生徒たちが講義室へ入っていく。
レイも自分の席へ腰を下ろした。
隣ではミオが大きく伸びをしている。
「昨日は楽しかったわね!」
「食べ過ぎじゃない?」
「あんたがいっぱい勧めてくるからでしょうが! それに、わたしの何倍も食べてるあなたにだけは言われたくないわね」
レイは苦笑する。
「否定はできないかな」
二人が笑い合っていると、教室の扉が開いた。
担任のエルナが教壇へ立つ。
「皆さん、おはようございます」
「「「おはようございます!」」」
元気な返事が講義室に響く。
エルナは教室全体を見渡しながら微笑んだ。
「今日は皆さんにお知らせがあります」
教室が少しざわつく。
「昨日、学院長より正式な承認がおりました。交流戦をきっかけに、本日より三名の転入生を迎えることになりました」
「えぇっ!?」
「また?」
「三人も!?」
「どんな人たちなんだろう!」
「交流戦がきっかけって出場してた人だったりして!」
期待に満ちた声があちこちから上がる。
エルナは教室の外へ向かって声を掛けた。
「どうぞ、お入りください」
ゆっくりと扉が開く。
最初に姿を現したのは、美しい金髪を揺らすセレスティア。
続いてアイリス、
最後にフィオナ。
三人が横一列に並んだ瞬間、講義室は水を打ったように静まり返った。
「……え?」
「うそだろ……」
「セレスティア様!?」
「本物の王女様だ!」
「アイリスさんまで!?」
「フィオナさんもいる!」
「本当に昨日まで交流戦に出てた人たちじゃないか!」
次の瞬間、講義室中が大きなどよめきに包まれた。
レイもセレスティアを見て、
(昨日の『また学院で』って、そういうことだったのか)
隣のミオが小さく笑う。
「まさか、またアイリスさんと同じ教室になるなんてね」
「再戦もわりと近いかもね」
「そうね。次はもっと強くなった状態で戦いたいわ」
エルナが手を軽く叩く。
「皆さん、静かにー!それでは自己紹介をお願いします」
セレスティアが一歩前へ出る。
「初めまして。セレスティアです。この国の文化や魔法を学びたいと思い、留学させていただくことになりました。短い間ではありますが、皆さんと共に学べることを楽しみにしております。どうぞよろしくお願いいたします」
大きな拍手が起こる。
続いてアイリスが前へ出た。
「アイリスです。まだまだ未熟ですが、この学院で多くのことを学びたいと思っています。皆さん、よろしくお願いいたします」
再び拍手。
最後にフィオナが一礼する。
「フィオナです。セレスティア様のお供として参りましたが、私自身も皆さんと共に学べることを楽しみにしております。よろしくお願いいたします」
講義室は温かい拍手に包まれた。
「本物の王女様と一緒のクラスなんて夢みたいだ……」
「交流戦の準優勝者までいるなんてすごいクラスだな」
そんな声が聞こえてくる。
その言葉に反応したセレスティアが微笑みながら口を開く。
「えっ王女と王子なら、もうこの教室に――」
「「!?」」
レイとミオの肩が同時にビクリと震えた。
――ガシャーン!!
突然、大きな音が講義室中に響き渡る。
「きゃあっ!」
椅子や机が倒れ、教室が騒然となった。
全員が音のした方を見る。
エルフィが頭を掻きながら苦笑いを浮かべていた。
「ご、ごめんよー! 足が引っ掛かっちゃった!」
「大丈夫?」
「怪我はない?」
クラスメイトたちが駆け寄る。
セレスティアは軽く咳払いをした。
「えっとそれで、この教室には王女と王子が――」
ガッターン!!
今度は講義室後方からさらに大きな音が響く。
「わっ!」
クロエが抱えていた大きな荷物を床へ落としてしまっていた。
「あーっ! 本当にごめんなさい!」
「今日はみんなどうしたんだ?」
「偶然にしては出来すぎじゃないか?」
講義室には笑いが広がる。
レイは平静を装いながら心の中で呟いた。
(頼む……もう少しだけ頑張ってくれー)
セレスティアも苦笑しながら、三度目の言葉を話そうとする。
「それでは改めまして。この教室には王女と――」
ドンガラガッシャーン!!
今度は講義室の隅で机が何台も将棋倒しになった。
「にゃぁぁぁ!」
ニアが尻もちをついている。
「ご、ごめんなさいにゃ! 机にぶつかったにゃ!」
「今日は本当に騒がしい日だな」
「三人とも大丈夫か?」
「なんか息ぴったりじゃない?」
クラス中が笑いに包まれる。
レイは心の中でそっと親指を立てた。
(ぐっ……!)
ミオも安堵したように小さく息を吐く。
セレスティアはエルフィ、クロエ、ニアの三人を順番に見つめた。
そして最後にレイへ視線を向ける。
レイは何事もないように視線を逸らした。
セレスティアは小さく微笑む。
(……三度も偶然が続くはずがありませんね。なるほど、『秘密』ということでしょうか。私たちと同じように……)
それ以上は何も口にしなかった。
エルナは手を叩いて話を進める。
「それでは席を決めますね」
三人はそれぞれ指定された席へ向かう。
近くの生徒たちが次々と声を掛けた。
「よろしくお願いします!」
「交流戦、すごかったです!」
「学院生活、一緒に楽しみましょう!」
セレスティアたちも笑顔で応えながら席へ着く。
こうして三人を迎えた新しい学院生活が、静かに幕を開けた。
セレスティア王女一行が転入してきました




