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俺が魔王じゃなければ誰が魔王だというんだ〜無属性と判定された王子と黒き薔薇のメイドたち〜  作者: 黒華レン
学園編

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セレスティア一行、散策する

セレスティアたちは町を見て気分転換をします

 セレスティアたちはカフェを後にし、再びユノベルの街を歩いていた。


 先ほど受けた報告は、胸が締め付けられるような内容だった。


 しかし、それを表情に出すことはない。


 一国の王女。


 人前で弱さを見せるわけにはいかなかった。


「セレスティア様」


 フィオナが穏やかに声を掛ける。


「少し町をご覧になってはいかがでしょうか」


 アイリスも同意見の様子でセレスティアに言う。


「そうですね気持ちも少しは落ち着くかと思います」


 セレスティアは静かに頷いた。


「ええ、せっかくリベルタへ来たのです。もう少し、まわってこの国を知りましょう」


 アイリスも笑顔を見せる。


「私も楽しみです」


 三人は商店街へ足を向けた。


 鼻をくすぐる香ばしい焼きたてのパンの香り。


 威勢よく呼び込みをする店主たち。


 露店には色鮮やかな果物や装飾品が並び、道の真ん中では大道芸人が観客を沸かせている。


「本当に活気がありますね」


 セレスティアは感心したように周囲を見渡した。


「見ているだけで楽しくなりますね。この国が栄えている理由がよく分かります」


 その時だった。


「あれ?」


 アイリスが前方を指差す。


「あちらにいらっしゃるのは……」


 視線の先には、一人の青年が歩いていた。


 片手には紙袋。


 もう片方の手には串焼き。


 いかにも休日を満喫している様子だった。


「あら」


 セレスティアが微笑む。


「昨日、祝賀会でミオさんのお隣にいらした方ですね」


 レイも三人に気付き、軽く会釈した。


「こんにちは」


「こんにちは」


 セレスティアたちも笑顔で挨拶を返す。


「昨日は決勝戦を拝見しました。ミオさんとアイリスさん、本当に素晴らしい試合でしたね」


 セレスティアに言われアイリスは少し照れたように笑い言う。


「ありがとうございます。しかし、ミオさんが一枚上手でした」


 レイも頷いた。


「本当に拮抗していて最後までどっちが勝つか分からなかったですよね、姉も本気だったと思います」


 セレスティアは改めて微笑む。


「そういえば、まだ自己紹介をしていませんでしたね」


「私はセレスティアです」


「こちらはフィオナ、そしてアイリスです」


 レイも軽く頭を下げる。


「レイです。ミオは俺の姉です」


 セレスティアは少し目を丸くした。


「先ほどもそう言われていましたが、そうだったのですね。昨日、祝賀会でお二人がお話しされているのを見かけましたが、ご姉弟とは思いませんでした」


 レイは肩をすくめ苦笑する。


「ああ、結構そう言われますね」


 その時、フィオナの視線がレイの持つ串焼きへ向いた。


「それよりも、それとても美味しそうですね」


「これですか?」


 レイは笑いながら答える。


「この屋台、結構おいしいって評判が高くて有名なんですよ。肉も柔らかいし、味付けもちょうどいいんです」


 その香ばしい匂いに、セレスティアのお腹が小さく鳴った。


「……」


 フィオナとアイリスが同時にセレスティアを見る。


 セレスティアは顔を赤くした。


「……失礼しました」


 アイリスは思わず笑ってしまう。


「ふふっ」


 レイも笑顔になる。


「ははは、よかったら食べますか?お姫様」


「ぜひ!」


 即答だった。


 言った直後に我に返り、セレスティアは咳払いをする。


「……こほん」


「では、一つだけいただきます」


 一口食べる。


 肉汁が口いっぱいに広がった。


「……!美味しいです!想像以上ですね!」


「でしょう?普段、肉料理や魚料理を食べてても…いや、なんでもないです」


 レイはごまかし笑いで言った。


「他にも美味しい店が結構ありますよ」


 その言葉に、セレスティアは少し考えた後、レイを見つめる。


「レイさん」


「はい?」


「もしご都合がよろしければ……」


「今日、この街を案内していただけませんか」


「私たちは昨日到着したばかりで、まだユノベルをゆっくり見て回れていないのです」


 レイは少し考えた後、頷いた。


「別にいいですよ、今日は休みですし」


 セレスティアは嬉しそうに笑った。


「ありがとうございます。それではよろしくお願いいたします」


 四人は並んで歩き始めた。


 レイはまず、商店街で一番人気のパン屋へ案内する。


 焼きたてのパンを買い、そのまま歩きながら食べる。


 次は果物をその場で搾った果実ジュースの店。


 さらに揚げたてのコロッケや唐揚げ、甘い揚げ菓子が人気の露店を巡り、気付けば紙袋は食べ歩きの品でいっぱいになっていた。


「レイさんは、この街がお好きなのですね」


 セレスティアが尋ねる。


 レイは少し笑った。


「好きですね」


「なんてったって色々な国の美味しいものがいっぱいありますから」


 その言葉を聞いたセレスティアは、笑いながら街を行き交う人々を見つめる。


 子どもたちの笑顔。


 楽しそうに買い物をする家族。


 笑い声の絶えない商店街。


「……本当に素敵な国ですね」


 その言葉には、誰にも気付かれないほど小さな決意が込められていた。


 やがて学院へ続く道に差しかかる。


「ここで失礼します」


 セレスティアが足を止めた。


「学院長にお約束がありますので」


「そうなんですね」


 レイは軽く会釈する。


「今日はありがとうございました」


「こちらこそ、いい暇つぶしになりましたよ」


 セレスティアは優雅に一礼した。


「また学院でお会いしましょう」


「はい」


 レイは手を振り、その場を後にする。


(…ん?学院で?まぁいいか)


 レイは一瞬引っかかったが気にする事なく立ち去った。


 その背中を見送りながら、セレスティアは静かに呟いた。


「……不思議な方ですね」


 そして三人は、学院長室へ向けて歩き出した。


 これから自分の人生を大きく変える決断を伝えるために…


 その夜、セレスティアは温泉宿のスイートに泊まっていた。


(あのレイさん…あの人もどこかで会ったことあるような…)


 セレスティアは不意に交流戦中のレオニスとの会話を思い出した。


(なぜレオニス様はミオさんとお話になってたのかしら?…レオニス・ルーヴェン?…ミオ・ルーヴェン…レイ・ルーヴェン……ん?んんー?)

セレスティアたちはまだ帰らないようです

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