黒十華出動
祝賀会の続きです。
アイリスとミオが固く握手を交わす。
その光景に、食堂中から惜しみない拍手が送られた。
交流戦の頂点を争った二人。
勝者と敗者ではなく、互いを認め合う好敵手として称えられていた。
やがて学院長オルフェウスが再び壇上へ上がる。
「皆さん」
自然と会場が静まり返る。
「改めまして、本当にお疲れ様でした」
「交流戦という大舞台で全力を尽くした皆さんを、私は誇りに思います」
会場から大きな拍手が送られる。
学院長は穏やかに微笑みながら続けた。
「そして、最後まで戦い抜いた選手の皆さんには、十分な休息も必要でしょう」
一呼吸置く。
「よって――」
生徒たちが息を呑む。
「明日は全学年、休講とします」
一瞬静まり返った後――
「えぇぇぇぇぇぇ!!」
「やったーー!!」
「休みだーーー!!」
「学院長最高!!」
食堂は歓声に包まれた。
クロエは思わず立ち上がる。
「よっしゃ!」
エルフィも飛び跳ねる。
「何して遊ぼう!」
ニアは尻尾を振りながら叫ぶ。
「いっぱい食べるにゃ!」
周囲から笑いが起こる。
ミオも思わず笑みを浮かべた。
「皆さん、本当に嬉しそうですね」
レイは唐揚げを口へ運びながら一言。
「いい休日になりそう」
エリシアが苦笑する。
「レイさんは寝て終わりそうですけど」
「その予定」
「やっぱり……」
エリシアがクスクスと笑う。
祝賀会はその後も和やかな雰囲気のまま続き、夜更けとともに幕を閉じた。
翌日、
交流戦による休講で学院は静けさを取り戻していた。
一方その頃――
ユノベル屋敷、
誰にも知られることのない屋敷の隠し部屋では、十人のメイドが円卓を囲んでいた。
いつもレイが座っているイスにはみゅうが座り、イスの両脇にはルクスとノワールが控えている。
「にゃー!」
エフィリアが静かに口を開く。
「報告をお願い」
最初に立ち上がったのはセフィラだった。
「各地で魔族の活動が活発化しています」
「しかし襲撃ではありません」
「何かを探すように移動を繰り返しています」
続いてリズが資料を広げる。
「裏社会にも変化があるよ。複数の組織が同時期に情報収集を始めてる。目的は不明だね」
エルミナが一枚の報告書を机へ置く。
「ユノベルで暗躍していた闇商人――ドン・ボッタクーレですが、消息が完全に途絶えました」
クロエが腕を組む。
「逃げた?」
エルミナは首を横へ振る。
「違います、足取りを追った結果、セレスティア様の祖国、アストリア王国方面へ向かった形跡があります」
その言葉に場の空気が変わる。
ルナが静かに目を細めた。
「……アストリア王国」
エフィリアも表情を引き締める。
「続けて」
エルミナはさらに資料を開いた。
「現地で得た情報です。ドン・ボッタクーレは現地の裏組織と接触しています。そして、その裏組織は――」
一瞬、言葉を区切る。
「かつてアストリア王国の女王陛下暗殺に関与した者たちと繋がっていました」
部屋が静まり返る。
セフィラが小さく呟く。
「女王陛下を……」
ニアも真剣な表情になる。
「偶然じゃないにゃ」
エルフィも頷く。
「魔族の動きと繋がってる気がする」
ミリエルは静かに報告書へ目を落とした。
「全てが一本の線で繋がり始めています」
エフィリアはゆっくりと立ち上がる。
「間違いないわね、この件は黒十華が調査します。各自、担当区域へ必ず真相を突き止めてください」
「「「かしこまりました」」」
全員が立ち上がる。
その時、リズが静かに尋ねた。
「エフィリア様、この件、主様へご報告はどうするの?」
エフィリアは迷うことなく首を横へ振る。
「必要ありません、あのお方は、私たちより遥か先をご覧になっています。私たちがようやく掴んだ情報も、主様は既に知っているでしょう。主様には伝えるまでもありません」
ルナは静かに微笑んだ。
「ええ、主様のお考えを妨げるわけにはいきません」
クロエは巨大な斧を肩に担ぐ。
「この程度の案件で、お手を煩わせるわけにはいかないね」
エルフィは拳を握る。
「主様のためにも、私たちだけで解決しましょう!」
エフィリアは仲間たちを見渡した。
「黒十華、出撃します」
「主様の望む世界に」
「この件は、私たちの手で終わらせます」
「「「はい!」」」
黒十華の十人は、それぞれの任務へと散っていく。
そしてこの調査が――
やがてセレスティアの祖国を揺るがす陰謀、そして魔族との新たな戦いへと繋がっていくのだった。
黒十華が動き出します!




