優勝祝賀会
交流戦その後
交流戦閉幕から約一時間後。
リベルタ中央魔導学院・大食堂。
普段は静かな食堂も、この日ばかりは大勢の生徒や教師で埋め尽くされていた。
長机には豪華な料理が並ぶ。
焼きたてのローストビーフ。
香ばしい魚料理。
色鮮やかなサラダ。
焼き立てのパン。
甘い香りの漂うケーキや果物。
そして学院自慢の温かい料理が次々と運び込まれ、会場はまるで王城の晩餐会のような賑わいを見せていた。
今日は交流戦を締めくくる祝賀会。
優勝者だけではない。
最後まで戦い抜いた全ての選手を称える宴でもあった。
学院長オルフェウス・グランディアがゆっくりと立ち上がる。
自然と会場が静まり返った。
「皆さん」
「まずは交流戦、本当にお疲れ様でした」
拍手が沸き起こる。
「今年は例年以上に素晴らしい試合ばかりでした」
「決勝戦は、学院の歴史に残る名勝負だったと言っても過言ではありません」
再び大きな拍手。
オルフェウスは優しく微笑んだ。
「それでは改めまして」
「本大会優勝者――ミオさんへ盛大な拍手を」
パチパチパチパチ!!
食堂中へ拍手が響き渡る。
ミオは少し照れくさそうに立ち上がり、丁寧に一礼した。
「ありがとうございます」
「おめでとう!」
「本当に強かった!」
「優勝おめでとう!」
あちこちから祝福の声が飛び交う。
ミオは笑顔で何度も頭を下げていた。
一方その頃、
「いただきます」
レイは既に料理を取り分け終え、一人黙々と食べ始めていた。
唐揚げを一つ。
フライドポテトを口へ運び、続けてコロッケを頬張る。
「うん、うまいー」
満足そうに頷きながら次はアメリカンドッグへ手を伸ばす。
その様子を見ていたエリシアが苦笑した。
「レイさん祝賀会が始まったばかりですよ?」
「あったかいうちが一番おいしいよね」
「おいしそうなお肉やお魚もありますよ」
「肉とか魚は食べあき…いや、こういう食べ物の方が好みなんだよね」
「そうなんですね」
思わず笑みが零れる。
そこへクロエが料理を持ってやって来た。
「相変わらず食べてますね」
「屋敷ではこんなの出てこないし、それに今日は食べ放題だから」
「それが一番の理由でしょ」
「そうだね」
即答だった。
クロエは吹き出す。
「正直ですね」
その隣ではニアが大きなエビフライを見つめていた。
「これ一本もらっていいにゃ?」
「まだ、みんな並んでる!」
エルフィが慌てて止める。
「じゃあ半分」
「一本を半分にしてもダメ!」
「けちにゃ……」
「順番だから!」
二人のやり取りに周囲から笑い声が起こった。
祝賀会は終始和やかな空気に包まれていた。
その時だった。
食堂入口で、一人の少女が足を止める。
アイリスだった。
決勝で敗れたとはいえ、多くの生徒の視線が集まる場所へ入ることに少しだけためらいを感じていた。
「入らないの?」
優しい声が掛かる。
振り向くとフィオナが立っていた。
アイリスは少し困ったように笑う。
「私、負けちゃったし……」
「来てもよかったのかなって」
フィオナは小さく笑った。
「何を言ってるの、あなたは決勝まで勝ち上がった選手よ」
「そうだけど」
「それに今日、一番会場を沸かせたのはあなたとミオさんなんだから」
アイリスは目を丸くした。
「だから胸を張って入ったらいいんじゃない?」
フィオナに背中を軽く押される。
アイリスは一度深呼吸すると、ゆっくりと食堂へ足を踏み入れた。
「アイリスさん!」
真っ先に駆け寄ってきたのはセレスティアだった。
「決勝、本当に感動しました!最後まで目が離せませんでした!本当に惜しかったですね」
クロエも笑顔で親指を立てる。
「あと一歩だったね!次は勝てるよ!」
エルフィも満面の笑みを浮かべる。
「また二人の試合見たい!」
敗者を見るような目ではない。
誰もが、一人の強者としてアイリスを称えていた。
そのことが何より嬉しかった。
自然と笑みが零れる。
「ありがとう」
その時、
「アイリスさん!」
ミオが料理を持ったまま歩み寄ってきた。
二人は向かい合う。
数秒の沈黙。
そして同時に笑った。
「今日はありがとう」
アイリスが右手を差し出す。
「本当に楽しかった」
ミオも笑顔でその手を握る。
「こちらこそです」
「ありがとうございました」
二人は固く握手を交わす。
その光景に食堂中から自然と拍手が起こった。
交流戦最高のライバル。
互いを認め合う二人へ送られた、心からの拍手だった。
祝賀会が続きます




