頂点を掴む者
とうとう頂点が決まります!
ドォォォォォン!!
二人が同時に地面を蹴った。
踏み込んだ瞬間、闘技場の石畳が爆ぜる。
砕けた石片が舞い上がるよりも早く、ミオとアイリスは闘技場の中央へ到達していた。
一直線、互いの視線は一瞬たりとも逸れない。
ガキィィィィン!!
剣と剣が真正面から激突した。
衝撃で空気が震え、二人を中心に生まれた爆風が闘技場全体へと駆け抜ける。
「うおおおっ!」
「また真正面からぶつかったぞ!」
観客席から大きなどよめきが上がった。
だが、二人は止まらない。
アイリスが剣を引いた瞬間、ミオの大剣が斜め上から振り下ろされる。
アイリスは足を滑らせるように半歩横へ移動し、迫る刃を受け流した。
ギィィィン!!
火花が弾ける。
流された大剣が石畳へ触れる寸前、ミオは手首を返した。
重い刀身が不自然なほど鋭く跳ね上がり、アイリスの脇腹を狙う。
「なんの!」
アイリスは剣を縦に構え、その一撃を受け止めた。
ガキィィィン!!
細い身体が衝撃に押され、靴底が石畳を削る。
しかし、その表情に焦りはない。
むしろアイリスは口元を僅かに持ち上げた。
受け止めた剣を軸に身体を回転させ、ミオの大剣を外側へ弾く。
そのまま踏み込み、鋭い横薙ぎを放った。
ミオは上体を反らして刃をかわす。
頬のすぐ前を、アイリスの剣先が通り抜けた。
ミオの髪が数本、はらりと宙を舞う。
だが次の瞬間には、ミオの膝がアイリスの腹部へ迫っていた。
アイリスは左腕を下げて受け止める。
ドンッ!!
鈍い衝撃が響いた。
アイリスの身体が僅かに浮き上がる。
その隙を狙い、ミオが大剣を振り上げた。
アイリスは空中で身体を捻り、振り抜かれた刃を紙一重でかわす。
着地と同時に床を蹴り、再びミオの懐へ飛び込んだ。
ガキィン!!
ギィィィン!!
キィィィン!!
斬っては受け、受けては流す。
互いに一撃を放つたび、次の攻撃へと繋げていく。
ほんの僅かな重心の乱れすら見逃さず、相手が選ぶよりも早く最適な一手を選び続ける。
その攻防は、もはや考えてから動いていては到底間に合わない領域へ達していた。
「二人とも速すぎる……」
「全然見えない……」
観客席から見えるのは、幾筋もの剣の軌跡だけだった。
金色と水色の光が交差するたび、遅れて甲高い金属音が響き渡る。
その中で、ガルドだけは身を乗り出し、強く拳を握り締めていた。
「いいぞ!そこだ、ミオ!やっちまえー!」
ミオの攻撃がアイリスへ迫るたび、ガルドが大声を上げる。
だが次の瞬間、アイリスが見事な切り返しを見せると、今度はそちらへ向かって叫んだ。
「負けんな、アイリス!」
隣に座っていたバルクが思わず吹き出す。
「いったい、どっちを応援しているんですか」
「決まってんだろ!」
ガルドは二人から一切目を離さないまま笑いながら言った。
「試合が面白けりゃーなんでもいいんだよ!」
その言葉に、周囲の観客から笑いが漏れる。
しかし、誰一人として闘技場から視線を逸らす者はいなかった。
それほどまでに、二人の戦いは観る者すべてを引き込んでいた。
アイリスがミオの大剣を弾き、素早く後方へ跳ぶ。
着地した直後、身体を深く沈めた。
その足元へ金色の光が集まっていく。
ミオは追撃に出ようとした足を止め、大剣を身体の前へ構えた。
次の瞬間、
黄金の色をした魔力が爆発した。
ドンッ!!
アイリスの姿が視界から消える。
「うそ、速い!」
エリシアが思わず声を上げた。
これまで以上の踏み込み。
これまで以上の加速。
光属性の魔力を脚部へ集中させた、瞬間的な超加速だった。
ミオの正面に金色の光が現れる。
アイリスは加速の勢いを乗せたまま、剣を横薙ぎに振り抜いた。
ガキィィィン!!
ミオが大剣で受け止める。
だがアイリスの攻撃は終わらない。
弾かれた剣を即座に返し、下方から斬り上げる。
ギィィィン!!
ミオは大剣の角度を変えて防ぐ。
アイリスはさらに一歩踏み込み、剣先を胸元へ突き出した。
キィィィン!!
三連撃、
四撃目、
五撃目、
六撃目、
やまない連撃。
上下左右から繰り出される怒涛の連続攻撃が、ミオへ襲いかかる。
アイリスの周囲には幾つもの黄金の残像が生まれ、まるで複数の剣士が同時に攻撃しているかのように見えた。
「アイリスが押している!」
「ミオは防ぐだけで精いっぱいだ!」
観客席から声が上がる。
だが、ミオは慌てていなかった。
迫る剣を大剣で受ける。
流す。
逸らす。
決して真正面から力で止めようとはしない。
大剣とは思えないほど滑らかな軌道で刀身を操り、アイリスの一撃一撃へ僅かに触れる。
それだけで、正確に放たれたはずの剣が狙いから外れていく。
アイリスが肩口を狙えば、刃を外側へ。
脇腹を狙えば、下方へ。
首元への斬撃には身体を沈めながら剣を添え、頭上へと受け流す。
受け止めているのではない。
アイリスの力そのものを利用し、攻撃の向きを変えていた。
(また流された……)
アイリスの瞳が僅かに揺れる。
(どうして……どうしてこの人は崩れないの)
攻めているのは自分だった。
速さでは確実に上回っている。
押している感覚もある。
それなのに、手応えがない。
攻撃を重ねるほど、自分の力だけが少しずつ削られていく。
どれだけ勢いよく剣を振るっても、大河へ投げ込んだ小石のように、その流れの中へ呑み込まれていく。
アイリスは歯を食いしばり、さらに速度を上げた。
黄金の光が闘技場を駆け巡る。
右、左、正面、背後。
一瞬ごとに位置を変え、ミオの死角へ入り込む。
それでもミオの大剣はそれに合わせる。
ギィィィン!!
背後から迫った剣を、ミオは振り向かないまま大剣の腹で受ける。
「なっ……!」
アイリスが息を呑む。
その一瞬を、ミオは見逃さなかった。
身体を回転させ、大剣を横薙ぎに振るう。
アイリスは咄嗟に剣を構えた。
ガァァァァン!!
凄まじい衝撃が腕を貫く。
アイリスの身体が地面と平行に吹き飛ばされた。
空中で一回転し、石畳へ片足を着く。
そのまま数メートル滑り、剣を地面へ突き立てて勢いを止めた。
「はぁ……はぁ……」
肩を上下させながら、アイリスが顔を上げる。
ミオも大剣を構えたまま、静かに呼吸を整えていた。
表情こそ崩れていない。
しかし、その額には汗が浮かび、呼吸も先ほどより深くなっている。
(やっぱり速い)
ミオは剣を握る手へ力を込める。
(あと一歩遅れていたら、今ので決まっていました)
背後へ回られた瞬間、気配だけを頼りに剣を差し込んだ。
偶然ではない。
だが、次も同じように防げる保証はなかった。
互いにギリギリ、
紙一重。
一度でも判断を誤れば、その瞬間に終わる。
だからこそ、
ミオの口元から、小さな笑みがこぼれた。
「ふふっ」
アイリスが眉を上げる。
「何がおかしいの?」
「思わず笑っちゃいましたね、楽しくて」
その答えを聞き、アイリスは一瞬だけ目を見開いた。
やがて彼女も楽しそうに笑う。
「あら奇遇ですね、私もそうですよ」
二人は同時に地面を蹴った。
ガキィィィン!!
再び剣がぶつかる。
先ほどまで以上に激しく。
先ほどまで以上に鋭く。
ミオが力任せに大剣を押し込む。
アイリスは歯を食いしばって受け止めた後、身体を横へ逃がしながら剣を滑らせる。
ミオの刃が地面へ落ちる。
その隙にアイリスが肩口へ斬りつけた。
ミオは身体を捻ってかわす。
だが完全には避けきれず、制服の肩口が裂けた。
鮮血が飛び散った。
それでもミオは止まらない。
大剣を下から跳ね上げる。
アイリスは後ろへ跳んだが、剣圧が制服の腹部を切り裂いた。
「くうっ!」
細い傷から血が滲む。
二人は着地と同時に再び踏み込んだ。
ガキィン!!
ギィィン!!
刃が交差し、互いの頬を浅く切り裂く。
血の筋が頬を伝う。
それでも、二人の瞳は一切曇っていなかった。
むしろ戦いが激しさを増すほど、その輝きは強くなっていく。
フィオナはアイリスの姿を見つめ、静かに微笑んだ。
「それでこそアイリス」
隣ではセレスティアが胸の前で両手を握り締めている。
「アイリス頑張って……」
クロエは腕を組んだまま苦笑した。
「二人とも楽しそうだねー」
エルフィも頷く。
「そうだね、すごく楽しそう。勝ちたいのはもちろんだろうけど、それ以上に全力で戦える相手と出会えたことが嬉しいんだろうね」
ニアは落ち着かない様子で尻尾を左右へ振っていた。
「でも、二人とも限界が近いにゃ、そろそろ決まりそうにゃ」
その言葉を聞き、周囲の者たちが再び闘技場へ意識を集中させる。
戦っている二人も理解していた。
体力は既に限界へ近づいている。
互いの攻撃を何度も受け、腕や足にも確実に疲労が蓄積していた。
このまま攻防を続ければ、先に僅かな隙を見せた方が敗れる。
そして、その一瞬を待つつもりは二人ともなかった。
アイリスが剣を振り抜く。
ミオは大剣で受け流し、そのまま肩から体当たりを仕掛ける。
アイリスも避けずに肩をぶつけた。
ドンッ!!
互いの身体が弾かれる。
二人は同時に後方へ跳び、大きく距離を取った。
アイリスの靴が地面を滑る。
ミオも大剣を石畳へ突き立て、後退する身体を止めた。
「はぁ……」
「ふぅ……」
二人の荒い呼吸だけが、静まり返った闘技場へ響く。
制服には無数の傷が刻まれていた。
腕から流れた血が指先を伝い、石畳へ落ちていく。
それでも、どちらも剣を下ろさない。
アイリスは静かに剣を正面へ構え直した。
その瞬間、彼女の身体から黄金の魔力が立ち昇る。
先ほどまで放っていたものとは比べものにならないほど、強く、眩い光。
黄金の魔力は渦を巻きながらアイリスの全身を包み、背中へと集まり始めた。
対するミオも、大剣をゆっくりと正眼へ構える。
水色の魔力が足元から立ち昇った。
荒々しく噴き上がることはない。
静かに、深く。
果ての見えない水底のような魔力が、ミオの大剣へ流れ込んでいく。
その圧力だけで、観客席にいた者たちの息が止まった。
「きっとこれで決まる……」
誰かが小さく呟いた。
闘技場を包んでいた風が止む。
歓声も。
ざわめきも。
すべてが消え去った。
残されたのは、向かい合う二人だけ。
アイリスが小さく笑う。
「これが最後ね」
ミオも真っ直ぐにアイリスを見つめ、頷いた。
「そうなりそうですね」
「全力でいきます」
「ええ」
「私も全力でいくわ」
二人は同時に足へ力を込めた。
金色と水色の魔力が、闘技場の中央でせめぎ合う。
次の一撃、
それが、この交流戦の頂点を決める一撃となる。
黄金と蒼。
二つの魔力が闘技場を二分する。
アイリスの背中へ集まった黄金の魔力が、一気に天へと噴き上がった。
ゴォォォォォ……
その輝きは、太陽にも匹敵するほど眩しい。
「なっ……!」
観客席から驚愕の声が漏れる。
黄金の光は幾重にも重なり合い、やがて一対の巨大な翼となってアイリスの背中に広がった。
まるで天使が舞い降りたかのような神々しい光景。
無数の光の羽が宙へ舞い、闘技場全体を黄金色へ染め上げていく。
アイリスはゆっくりと剣を前へ向けた。
剣道の突きを思わせる一直線の構え。
迷いはない。
恐れもない。
あるのは、この一撃へ懸ける想いだけ。
「これが私の全力」
黄金の翼が大きく羽ばたく。
轟音と共に地面が沈み込み、石畳に無数の亀裂が走った。
アイリスが鋭く息を吸う。
「――煌翼閃!!」
ドォォォォォン!!
爆発にも似た衝撃音が響く。
アイリスの姿が消えた。
いや、速すぎて見えない。
観客の目に映るのは、ミオに向かい一直線に伸びる黄金の光跡だけ。
翼から零れ落ちる光の羽が幾筋もの残像となり、闘技場へ黄金の軌跡を刻んでいく。
「見えない!」
「速すぎる!」
セレスティアは思わず立ち上がった。
「アイリス……!」
フィオナは静かに息を呑む。
「ここまで完成させていたのね」
一方、
ミオはその場から一歩も動かない。
静かに目を閉じ、大剣を正眼へ構える。
足元から立ち昇る蒼い魔力が、ゆっくりと刀身へ吸い込まれていく。
荒れ狂うことはない。
静かに。
深く。
大海のような魔力が、大剣一本へ凝縮されていく。
闘技場を包んでいた空気が変わる。
重い。
ただ立っているだけなのに、観客たちは胸を押さえた。
「何だ、この圧力……」
「息が……」
エリシアはミオを見つめ、小さく呟く。
「魔力が……全部、剣へ集まってる……」
ミオは静かに目を開いた。
澄み切った蒼い瞳。
そこには勝利への執念も、恐れもない。
ただ、目の前の相手へ全力を尽くすという覚悟だけが宿っていた。
「この一太刀に、全てを込めます」
ミオは右足を半歩前へ出す。
大剣が静かに蒼く輝いた。
「――蒼覇水天斬!!」
ドォォォォォォォォン!!
ミオが地面を蹴る。
蒼い斬撃を纏いながら一直線に駆け抜ける。
黄金と蒼。
二つの光が一直線に交差した。
ガギィィィィィィィィィン!!
天地を揺るがす轟音。
衝撃波が闘技場全体を吹き飛ばし、石畳が次々と砕け散る。
観客席の防御結界が激しく明滅した。
「防御結界が!」
「耐えろ……!」
教師たちが一斉に魔力を流し込む。
黄金の翼と蒼い斬撃が真正面からぶつかり合う。
互角、
本当に互角だった。
黄金の魔力が蒼を押す。
蒼い斬撃が黄金を押し返す。
ガガガガガガガガガッ!!
火花のように魔力が弾け飛び、闘技場の上空で光の雨となる。
「どっちだ!」
「全く分からない!」
誰もが固唾を呑んで見守る。
レイだけは紙袋からプライドポテトを取り出し、それをかじりながら静かに見つめていた。
「ほぉ……二人ともやるじゃん」
その視線だけは真剣だった。
黄金と蒼。
二つの光は、一歩も譲らない。
アイリスは歯を食いしばる。
「まだぁぁぁぁぁ!!」
黄金の翼がさらに輝きを増す。
対するミオも剣を握る手へ力を込めた。
「負けません!」
蒼い魔力がさらに濃くなる。
ガギギギギギギギギ……!!
激突は続く。
互いに一歩も退かない。
その均衡は、永遠に続くようにも思えた。
しかし――
ミオが静かに半歩力を込め踏み込んだ。
ギギギギ……
蒼い斬撃が、ほんの僅かに前へ出る。
「!」
アイリスの表情が変わる。
すぐに踏み込み返す。
だが、その差は埋まらない。
ミオはさらに一歩。
黄金の光が少しずつ押し返され始める。
観客席がどよめく。
「押した!」
「ミオが押してる!」
アイリスは全身へ力を込める。
巨大な光の翼が大きく羽ばたき、最後の力を振り絞る。
それでも。
少しずつ。
本当に少しずつ。
蒼い斬撃が前へ進んでくる。
靴底が石畳を削る。
腕が震える。
黄金の翼に、小さな亀裂が走った。
「くっ……!」
歯を食いしばる。
まだ終われない。
まだ負けられない。
それでも、
ミオの剣は止まらなかった。
静かに。
だが確実に。
ゆっくりと黄金を押し返していく。
アイリスは震える腕を見つめ、小さく笑った。
「あぁ……もう」
その一言が漏れた瞬間、
ミオが大きく踏み込む。
「はあああぁぁぁぁぁっ!!」
ドォォォォォォォォン!!
黄金の翼が砕け散った。
無数の光の羽が夜空へ舞う。
アイリスの身体が大きく宙を舞い、闘技場の端まで吹き飛ばされた。
ドゴォォォォン!!
アイリスの身体が闘技場の石畳へ叩きつけられる。
砕けた石片が宙を舞い、大きな土煙が立ち上った。
観客席が静まり返る。
誰一人として声を出せない。
土煙の向こうから、小さな咳払いが聞こえた。
「……げほっ」
アイリスがゆっくりと身体を起こす。
制服は至るところが裂け、腕や頬には無数の傷が刻まれていた。
それでも剣を握る手だけは離していない。
震える足で立ち上がろうとする。
「まだ……」
だが、その足は力を失っていた。
ガクッ――。
片膝をつく。
その姿を見つめながら、ミオは静かに歩き始めた。
カツ……
カツ……
闘技場へ響く足音。
一歩、
また一歩。
ゆっくりとアイリスの前まで歩み寄る。
ミオは静かに大剣を持ち上げ、その切っ先をアイリスへ向けた。
二人の視線が交わる。
アイリスは悔しそうに笑った。
「強かったわ、最後まで勝てると信じてた」
ミオも穏やかに微笑む。
「私もです、本当に最後まで、どちらが勝つか分かりませんでした。今日は私の方がほんの少しあなたに勝っただけです」
アイリスはゆっくりと目を閉じる。
悔しさはある。
それでも、不思議と清々しかった。
全てを出し切った。
だからこそ、素直に認められる。
アイリスは静かに顔を上げた。
「……負けました」
一瞬の静寂。
審判が高々と右手を掲げる。
「勝者――ミオ!!」
ワァァァァァァァァァァァァァ!!
闘技場を揺るがす歓声が一斉に響いた。
割れんばかりの拍手。
口笛。
歓声。
誰もが立ち上がり、この名勝負へ惜しみない拍手を送る。
「最高の試合だった!」
「二人ともすごかった!」
「決勝にふさわしい戦いだ!」
ガルドは大きく笑いながら拍手を送る。
「いやぁ、面白ぇ!!だか、さすがこの俺を倒しただけの事はあるな!」
バルクも何度も頷いた。
「どちらが勝ってもおかしくありませんでしたね」
フィオナは静かに微笑む。
「ありがとう、アイリス」
「あなたは本当に強くなったわ」
セレスティアは涙ぐみながら拍手を続ける。
「二人とも、本当にかっこよかった……」
クロエは大きく伸びをした。
「いやぁ、鳥肌立ったねー」
エルフィも興奮した様子で何度も頷く。
「最後なんて息するの忘れてたよ」
ニアは尻尾を大きく振る。
「どっちも強かったにゃ!私たちには敵わないけどにゃ!」
しばらくして、闘技場中央では表彰式が始まった。
優勝トロフィーを手にしたミオへ、大きな拍手が送られる。
金色のトロフィーが太陽の光を反射し、眩しく輝いた。
「本大会優勝、ミオ!」
再び歓声が巻き起こる。
その少し離れた場所では――
「んー」
レイが紙袋からアメリカンドッグを取り出し、大きくかぶりついていた。
「はーうまっ」
さらにフライドポテトを一本。
オニオンリングを一つ。
満足そうに頬張りながら表彰式を眺める。
エリシアは呆れたように苦笑した。
「レイさん……こんな時まで食べてるの?」
レイは口いっぱいに食べ物を頬張ったまま頷く。
「んぐ……」
「表彰式にはこれが合うんだよね」
エリシアは意味が分からず首を傾げた。
「そういうものなのかな……?」
レイは笑いながら闘技場中央を見る。
「さすがミオねぇ」
その一言だけは、どこか誇らしげだった。
表彰式を終えたミオは、トロフィーを抱えたまま皆のもとへ戻ってきた。
「ミオさん、おめでとうございます!」
エリシアが真っ先に駆け寄る。
「優勝おめでとうございます!」
クロエが礼儀正しくお辞儀をしながら言った。
「最後すごかったにゃ!」
ニアは尻尾を大きく振って飛び跳ねる。
「おめでとうございます」
セラも微笑みながら拍手を送った。
仲間たちから次々と祝福を受け、ミオは少し照れくさそうに笑う。
「ありがとうございます」
一通り落ち着くと、ミオはレイの前まで歩いてきた。
レイは紙袋からフライドチキンを取り出し、一口かじっていた。
「どうだった?」
ミオが期待するような表情で尋ねる。
レイは口いっぱいにチキンを頬張ったまま親指を立てる。
「んぐ……」
「さすがミオねぇだね。すごかったよ」
ミオはじーっとレイを見つめる。
「……ちゃんと見てた?」
「見てた、見てたって」
「絶対見てないでしょ」
「いや、本当に見てたって」
レイは慌てて飲み込み、紙袋を隠すように後ろに置いた。
「アイリスが光属性の瞬間加速で攻め始めたところから流れが変わっただろ」
レイは顎に手を当て言った。
「そこからミオは全部受け止めるんじゃなくて、剣の角度を少しずつ変えて受け流してた。だからアイリスは攻め続けてるのに体力だけ削られていった」
ミオが少し驚いた表情になる。
「それで最後はお互いの――煌翼閃と――蒼覇水天斬のぶつかり合い」
「最初は完全に互角だったけど、最後の最後で踏み込み一歩分だけミオねぇが上回った」
「本当に紙一重だったよね」
ミオは思わず目を丸くした。
「えっちゃんと見てたんだ……」
「だから言ってるじゃない」
レイは笑いながら再び紙袋へ手を入れる。
「ちゃんと見ながら食べてた」
その一言に、ミオは呆れたようにため息をつく。
「そこは食べるの我慢してよ!」
レイは苦笑しながら肩をすくめる。
「無理ー!お祭りとか大会って、屋台のもの食べたくなるじゃん」
「ならないよ!」
「いや、ぜったいなるー」
ミオが思わずツッコミを入れると、その場にいた全員が吹き出した。
闘技場には、先ほどまでの熱戦とは対照的な穏やかな笑い声が響いていた。
レイはミオねぇの試合をちゃんと見ていたようですw




