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俺が魔王じゃなければ誰が魔王だというんだ〜無属性と判定された王子と黒き薔薇のメイドたち〜  作者: 黒華レン
学園編

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水と光の乱舞

ミオとアイリスの戦いが続いています。

 水色と黄金色。


 二つの魔力が一直線に激突する。


 ドォォォォォン!!


 爆発にも似た轟音が闘技場全体を揺るがした。


 その大きな音に客席が一気に静まり返る。


 衝撃波が観客席まで吹き抜け、最前列の旗が大きくはためく。


 舞い上がった砂煙が視界を覆い尽くした。


「な、何も見えない!」


「どっちだ!?」


 観客席から驚きの声が飛び交う。


 しかし、その土煙の中から激しい金属音だけが響き渡る。


 キィィィン!!


 ガキィン!!


 ギィィィン!!


 一度ではない。


 二度でもない。


 何度も何度も剣がぶつかる音だけが煙の中から聞こえてくる。


「まだ戦ってる!」


「見えないのに音だけ聞こえる!」


 「……出てくる」


 レイが独り言をいう。


 やがて――


 ブワッ!!


 煙を切り裂くように二つの影が飛び出した。


 アイリス。


 そしてミオ。


 互いの剣が再び激突する。


 ガキィィィン!!


 衝撃だけで石畳が砕け、細かな破片が宙へ舞った。


「まだ押し切れない!」


 アイリスは笑う。


「ええ」


 ミオも笑みを返す。


「だからこそ楽しいです」


 二人は同時に地面を蹴った。


 ガキィン!!


 キィィン!!


 ギィィン!!


 光が閃く。


 水が舞う。


 斬り結ぶたび、水飛沫のような魔力が空中へ散り、黄金の光粒と混ざり合って幻想的な景色を作り出していた。


 その美しさに、観客席から思わず感嘆の声が漏れる。


「綺麗……」


 エリシアは目を輝かせた。


「こんな剣……初めて見ました」


 レイも静かに試合を見つめる。


「あれはもう剣技だけじゃない。二人とも、自分の属性を剣術に溶け込ませてる」


 レイはそれっぽい事を言い、


 そして誰にも見つからないよう串焼きを頬張る。


 クロエが腕を組む。


「私だったら全部力で叩き割っちゃうけどねー」


 エルフィが苦笑した。


「ははっ、クロエらしいね」


 ニアは尻尾を揺らしながら目を丸くする。


「速いにゃ……」


「ここからだとニアも目で追うのがやっとにゃ」


 レイは小さく笑う。


「だろうね、今見えてる人なんて、ほとんどいないんじゃない?」


 その言葉にエリシアは驚いて客席を見回した。


 確かに多くの観客が目で追い切れず、それでも必死に試合を見守っている。


 その頃、来賓席ではガルドが豪快に笑っていた。


「最高だ!!もっとーもっとだ!まだまだこんなもんじゃねぇんだろー!!」


 隣のバルクも思わず苦笑する。


「ガルドさん、完全に観客になってますね。」


「当たり前だ!俺が負けた相手なんだ、最後まで見届けねぇとな!」


 フィオナも静かに剣戟を見つめていた。


(アイリス……あなた、本当に楽しそう)


 幼い頃から何度も剣を交えてきた。


 しかし今のアイリスは、自分と戦う時以上に生き生きとして見える。


 その姿を見て、フィオナは少しだけ悔しそうに笑った。


「次は……私も」


 セレスティアも胸の前で手を組んだまま祈るように見つめ続ける。


「どうか……」


「二人とも、怪我だけはしないで」


 試合場では激しい攻防が続いていた。


 アイリスが一歩踏み込む。


 鋭い三連突き。


 その全てが急所を狙っていた。


 しかしミオは身体を半歩ずつずらすだけで避ける。


 そして流れるように大剣を振るう。


 ガキィィン!!


 アイリスは剣で受ける。


 だが、その瞬間、


「!」


 受けたはずの衝撃が横へ流された。


 力が逃がされる。


 自然と身体が泳ぐ。


(また……力を流された)


 アイリスは心の中で舌を巻いた。


(ガルド、あの力まかせの大男が苦戦した理由が分かる。真正面からぶつかっても意味がない。)


 一方のミオも冷静だった。


(速い、ガルドの時とは全く違う。ほんの一瞬でも判断を誤れば斬られる)


 だから互いに決定打がない。


 一瞬でも隙を見せた方が負ける。


 それほど均衡した戦いだった。


「二人とも……」


 学院長オルフェウスが静かに呟く。


「技術だけなら歴代交流戦でも屈指だ」


 教師エルナもこの戦いを一瞬も逃すまいと見ている。


「これほど完成された剣術同士の試合は、私も久しく見ておりません」


 再び剣がぶつかる。


 ガキィィィン!!


 ギリギリギリギリッ!!


 鍔迫り合い。


 互いの顔が目と鼻の先まで近づく。


 アイリスが小さく笑う。


「あなたに勝ちたい」


 ミオも穏やかに笑みを返した。


「私も勝ち負けはどうでも良かったとおもってたけど今はあなたに勝ちたいと思ってる。だから……ここから先は、一切手加減しません」


 ドォォォォォン!!


 二人の魔力がさらに膨れ上がる。


 水が渦を巻く。


 黄金の光が空へ伸びる。


 観客席全体が息を呑んだ。


「まだ上があるのか……!」


「今まででも十分凄かったのに!」


 中央を見ながらレイは静かに言う。


「来るね」


 エリシアもゴクリと唾を飲み込んだ。


「奥の手……」


 アイリスは剣をゆっくりと天へ掲げる。


 黄金の光が一点へ集まり始める。


 対するミオも静かに大剣を構え直す。


 足元の水色の魔法陣が幾重にも重なり始めた。


 二人は互いを真っ直ぐ見据える。


「これで決めます」


「ええ」


「勝負よ」


 ドォーン!!


 再び二人が地面を蹴った。

続きますww

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