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俺が魔王じゃなければ誰が魔王だというんだ〜無属性と判定された王子と黒き薔薇のメイドたち〜  作者: 黒華レン
学園編

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水の剣姫と光の剣姫

いよいよ、頂点を決める決勝戦が始まります!

 交流戦最終日。


 朝からリベルタ中央魔導学院の闘技場は、今大会一番の熱気に包まれていた。


 五つの王国から集まった観客たちで客席は埋め尽くされ、立ち見が出るほどの賑わいとなっている。


 屋台から漂う香ばしい匂い。


 響き渡る歓声。


 決勝戦を待ちきれない人々の話し声。


 誰もが、この瞬間を楽しみにしていた。


 やがて、闘技場に鼓笛隊のファンファーレが響き渡り観客は息をのんだ。


 司会のノクティスがゆっくりと姿を現す。


「皆様、お待たせいたしました!」


 会場から大歓声が巻き起こる。


「本日、いよいよ五ヵ国学院交流戦の優勝者が決まります!」


「数々の激闘を勝ち抜き、決勝へ進出した二人をご紹介しましょう!」


 ノクティスは右手を掲げた。


「まずは開催国――」


「リベルタ中央魔導学院代表!」


「ミオ!!」


 歓声が爆発した。


「ミオー!!」


「優勝だー!」


「頑張れー!」


 闘技場入口から、ミオがゆっくりと歩いてくる。


 水色の髪が揺れる。


 大剣を背負ったその姿は、いつも通り落ち着いていた。


 しかし、その瞳には静かな闘志が宿っている。


 ノクティスは続ける。


「対するは――」


「聖光王国アルディア代表!」


「アイリス!!」


 今度は反対側から歓声が上がる。


「アイリスー!」


「負けるな!」


 白銀の髪を揺らしながら、アイリスが姿を現した。


 腰には細身の剣。


 一歩一歩、堂々とした足取りで中央へ向かう。


 会場の熱気はさらに高まっていく。


「開催国代表!」


「アルディア代表!」


「どっちが勝つんだ!」


 客席では予想が飛び交っていた。


「私はミオさんね!」


「いや、アイリスだろ!」


「どっちも強すぎて分からない!」


 来賓席。


 セレスティアは胸の前で両手を組み、静かに試合場を見つめていた。


「……アイリス」


 その表情には期待と緊張が入り混じっている。


 隣ではフィオナが静かに微笑んだ。


「アイリスなら大丈夫です」


 レオニスもまた妹が出場するこの一戦が気になっていた。


(……ミオ、がんばれよ)


 その反対側ではガルドが腕を組みながら笑う。


「楽しみだ!俺が負けた相手だからな、どんな試合になるか見ものだな!」


 バルクも頷く。


「きっと今日一番の試合になるでしょう」


 一方、リベルタの観客席。


 レイは椅子へ深く腰掛けながら試合場を見つめていた。


「いよいよ決勝かー」


 隣ではエリシアが少し緊張した様子で両手を握る。


「レイさん……どちらが勝つと思いますか?」


 レイは少し考える。


「分からないね」


 エリシアは首を傾げた。


「分からない?」


「だから面白いよね」


 レイは静かに笑う。


「どっちが勝っても不思議じゃない、だから決勝なんだ」


 その言葉にエリシアも小さく頷いた。


「そうですね」


「だけど、ミオねぇを応援しない訳にはいかないよね」


 レイは少し笑みを浮かべ肩をすくめた。


 試合場中央、


 二人が向かい合う。


 そして、アイリスが口を開いた。


「とうとう、ここまで来たわね」


 ミオは穏やかに微笑む。


「はい、これで本当に最後。頂点が決まります」


「決勝であなたと戦えるなんて思っていませんでした」


 アイリスも笑う。


「私もよ」


「でも――」


 その笑みはゆっくりと真剣なものへ変わる。


「ここから先は遠慮はしません」


「もちろん私もです」


 ミオも大剣へ手を添え力を込めた。


「全力でいきます」


 二人は深く一礼する。


 観客席が静まり返る。


 ノクティスが高らかに宣言した。


「それでは、五ヵ国学院交流戦!その頂点を決める決勝戦––––始め!!」


 そう言った瞬間だった。


 ドンッ!!


 二人が同時に地面を蹴る。


 開始と同時に最高速度。


 ガキィィィィン!!


 闘技場の中央で剣と剣が真正面から激突した。


 激しい火花が散る。


「二人とも速い!!」


「二人とも最初から全力だ!」


 観客席がどよめく。


 しかし二人は止まらない。


 キン!


 ガキィン!


 キィン!


 キィィン!


 互いの剣が次々と交差する。


 キィン!


 ガキン!


 ギィィン!!


 激しい金属音が闘技場中へ響き渡る。


 ミオが一歩踏み込めば、アイリスも同時に前へ出る。


 まるで鏡写しのような攻防。


 一歩も譲らない。


「すごい……」


 リリアナが息を呑む。


「二人の攻撃が見えません……」


 アウレリアも目を細めゴクリと唾を飲む。


「これが決勝、まさに頂点同士の戦いですわ」


 レティアとレヴィアも静かに見つめていた。


「本当に互角だね」


「ええ、今のところ完全に五分ね」


 ガルドは嬉しそうに笑う。


「いいぞ!、もっと見せてくれ!俺をもっと楽しませてくれ!」


 試合場ではなおも剣戟が続く。


 アイリスが鋭い突きを放つ。


 ミオは身体をひねってかわし、そのまま流れるように横薙ぎを繰り出す。


 アイリスは剣を滑らせるように受け流し、距離を取る。


 両者とも力押しではなく相手の剣を受けて流すタイプ。


 ほんの数秒で十数合。


 互いに一撃も許さない。


 会場は完全に試合へ飲み込まれていた。


 そして、


 二人は同時に後ろへ跳ぶ。


 数メートルの距離を空ける。


 静寂。


 荒い呼吸はない。


 まだ余力を十分に残している。


 アイリスが剣を構え直した。


「……やっぱり強いですね」


 ミオも静かに笑う。


「アイリスさんこそ」


「ですが……」


 二人の周囲へ魔力が集まり始める。


 ミオの足元には澄み切った水色の魔法陣。


 アイリスの周囲には眩い黄金色の光。


 その場の空気が震える。


 観客席がざわめいた。


「まさか……!」


「まだ本気じゃなかったのか!?」


 学院長オルフェウスも静かに目を見開く。


「ここからが、本当の決勝か……」


 アイリスが静かに微笑む。


「ここからが本番よ」


 ミオも大剣を構え直す。


「望むところです」


 次の瞬間――


 二人の魔力が一気に解き放たれた。


 水と光が闘技場を包み込み、まばゆい輝きが空へと駆け上がる。


 二つの魔力はぶつかり合うことなく、それぞれが闘技場の半分ずつを支配していた。


 左半分は透き通るような水色。


 右半分は太陽のような黄金色。


 まるで二つの世界が激突しようとしているかのようだった。


 観客全員が思わず息を呑んだ。


 そして、


 ––––ドンッ!!


 二人は同時に地面を蹴り出しお互いの相手に突っ込んでいった。


 水と光が一直線に駆け抜ける。


「はあああぁぁぁぁ!!」


「いきます!!」


 次の瞬間、


 二つの斬撃が、決勝戦最大の激突を迎えようとしていた――

…つづくw

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