左ブロック決勝戦 ミオ vs ガルド
束の間の休息の後、勝負再会です。
束の間の休息日を終えた翌朝。
各国学院交流戦二日目。
闘技場には再び満員の観客が集まっていた。
一般に開放される席を求めて徹夜組みも多く見かけられた。
しかし、希望数があまりにも多いため抽選となり早く並べば入れるわけではなかった。
闘技場の周りには中に入れなかった人たちで溢れていた。
そして、決勝トーナメント。
今日、この日で各ブロックの代表が決まる。
その後、頂点を決める最後の決勝戦。
この見逃せない戦いを皆が観戦したかったであろう。
ノクティスがゆっくりと壇上へ姿を現す。
「皆様、長らくお待たせいたしました!」
「本日より決勝トーナメントを開始いたします!」
会場から大歓声が響いた。
「まずは本日、最初の試合!」
「左ブロック決勝!」
「リベルタ中央魔導学院代表――ミオ!」
開催国代表の名が呼ばれると、会場はひときわ大きな歓声に包まれた。
「ミオー!」
「頑張れー!」
「開催地学院の優勝まであと二勝だ!」
ミオは大剣を肩へ担ぎ、静かな足取りで試合場へ向かう。
落ち着き、その表情は穏やかだった。
対するは――
「鉄槌王国グランツ代表――ガルド!」
「うおおおおっ!!」
ガルドは巨大な戦槌を軽々と肩へ担ぎながら試合場へ飛び出した。
ドン!
着地しただけで地面が震える。
「待たせたな!昨日は存分に休息できた。今日は始めから全力で行くぞ!」
観客席から歓声が沸き起こる。
「ガルドー!」
「ぶっ飛ばせー!」
ガルドは豪快に笑いながらミオの前へ立つ。
「お前さんの試合、見せてもらった、綺麗な剣だった。だからこそ俺も本気で行く!」
ミオも微笑む。
「ありがとうございます。もちろん私も、本気で戦わせていただきます。」
二人は中央で一礼した。
審判が右手を高く掲げる。
「始め!」
その瞬間だった。
「おおおおおっ!!」
宣言通りガルドが力一杯に真っ直ぐ突っ込む。
細かい駆け引きはない。
最初から全力。
巨大な戦槌が真上へ振り上げられる。
「食らえぇぇぇぇ!!」
ドゴォォォォン!!
戦槌が地面へ叩き付けられた。
闘技場全体が揺れる。
石畳が砕け、砂煙が舞い上がる。
「うわっ!」
「いきなり全力か!」
観客席がどよめく。
しかし、
砂煙の中から静かにミオが姿を現す。
攻撃を見極め、紙一重でかわしていた。
ガルドは嬉しそうに笑った。
「はっはっは、そう来なくちゃな!」
再び戦槌を振るう。
横薙ぎ、振り下ろし、回転しながらの一撃。
ブンブンブンと戦槌が空を斬る音が聞こえる。
一撃一撃が必殺級。
まともに食らえばひとたまりもない。
ミオは決して受け止めない。
最小限の動きでかわし、時には剣を滑らせるように受け流す。
まるで激流の中を流れる一枚の葉のようだった。
「受けない、全部流してる」
レティアが静かに目を細める。
「相性がいいね」
レヴィアも頷く。
「力を真正面から受けない」
「だからガルドでも力を流されて決定打が出ない」
ガルドはさらに笑う。
「最高だ!これだけかわされるとは、こんな相手は初めてだ!」
戦槌へ魔力が集まり始める。
赤黒い闘気が全身を包み込む。
「ならば!これならどうだぁぁぁ!!」
巨大な一撃がミオへ襲い掛かった。
ゴォォォォッ!!
戦槌が唸りを上げる。
だがミオは慌てない。
静かに前に踏み込んだ。
ガキィィン!!
両手剣と戦槌が激しくぶつかる。
「えっ受けた!」
観客席がどよめく。
しかし、
次の瞬間だった。
ミオは力で止めなかった。
戦槌へ添えるように剣を滑らせる。
金属同志がぶつかり擦れる音がする。
水色の魔力が刀身を流れた。
その一撃はそのまま軌道を変え、ガルドの戦槌を大きく地面へ叩き付けた。
ドゴォォォン!!
石畳が砕け散る。
「何だと!?」
ガルドの目が見開かれる。
「俺の力を……流したのか!」
ミオは静かに頷く。
「力では勝てませんから」
「だから、あなたの力を利用しました」
ガルドは豪快に笑った。
「がっはっは!面白ぇ!力比べじゃ勝てねぇと判断したか!なら俺の最大級の力を見せてやろうじゃねぇか!」
全身へ魔力が集まる。
筋肉がさらに膨れ上がり、戦槌を包む魔力が一段と濃くなる。
闘技場全体が震え始めた。
「おい……」
「あれ本気か!」
「まだ本気じゃなかったのかよ!」
観客席から驚きの声が上がる。
レティアが静かに呟く。
「これがグランツ代表の全力…」
レヴィアも目を細める。
「間違いなく直撃したら終わる」
ガルドは戦槌を高く掲げた。
「喰らえぇぇぇぇ!!」
ガルドの連続攻撃、
戦槌が何度も振り下ろされる。
闘技場は砕け、土煙が舞う。
観客席まで衝撃が届く。
それでも、
ミオは止まらない。
かわす。
受け流す。
まるで水が岩を避けて流れるように。
無駄のない剣筋だった。
ガルドは息を弾ませながら笑う。
「はっ……!これも全部流すか!ならば!」
戦槌を横へ大きく構えた。
「逃げ場ごと吹き飛ばしてやる!」
全身の魔力を戦槌へ集中させる。
赤い魔力が巨大な渦となる。
「––鉄槌砕撃!!」
戦槌が振り抜かれた。
衝撃波が一直線にミオへ襲い掛かる。
「終わった!」
「避けられない!」
観客席が息を呑む。
その時だった。
ミオの足元へ青く澄んだ魔法陣が浮かぶ。
「水よ──」
刀身を流れていた水が激しく渦を巻く。
「流転」
静かな一言。
ミオは真正面から踏み込んだ。
ガキィィィィン!!
衝撃波へ剣を合わせる。
水が渦を描く。
衝撃が左右へ流される。
ドゴォォォォン!!
闘技場の左右へ爆発が起きる。
中央だけが静かだった。
「魔法で流した!?」
「今のを!?」
ガルドは目を見開く。
「すげぇ……!」
その一瞬、
戦槌を振り切った隙が生まれた。
ミオは一歩踏み込む。
水を纏った両手剣が、美しい軌跡を描く。
ガルドは咄嗟に戦槌を戻す。
ガキィィン!!
衝撃が走る。
しかし体勢は崩れたまま。
ミオはさらに踏み込む。
二撃、三撃。
流れるような連撃。
ガルドは受け続ける。
「くっ……!」
最後に、
ミオは空中に浮き身体をひねり、全身の力を乗せた一撃を放った。
ガキィィィィィン!!
高い金属音が響く。
ガルドの戦槌の持ち手を折った。。
「なっ!」
持ち手は空中で回転しながら地面へ突き刺さり、バランスを失った槌はそのまま地面に落下する。
ドスン!!
静寂。
ミオの両手剣がガルドの首元で静かに止まっていた。
審判が右手を振り下ろす。
「そこまで!」
「勝者!」
「リベルタ中央魔導学院代表――ミオ!!」
会場が揺れるほどの歓声が響いた。
「やったぁぁ!」
「ミオーー!!」
「決勝進出だ!!」
ガルドは一瞬呆然としていた。
やがて大きく笑う。
「がっはっはっは!!」
「まさか、負けた!完敗だ!」
観客席もつられて笑う。
ガルドは戦槌を拾い上げると、ミオへ右手を差し出した。
「最高だった!」
「こんなに楽しい試合は久しぶりだ!」
ミオも笑顔でその手を握る。
「私もです」
「ありがとうございました」
二人は固く握手を交わす。
その姿に、会場から惜しみない拍手が送られた。
来賓席ではセレスティアが静かに拍手を送る。
「……本当に、皆さんお強いですね」
アイリスとフィオナも真剣な表情で試合場を見つめていた。
次はいよいよ、自分たちの番。
ノクティスが壇上へ上がる。
「左ブロック決勝、終了!」
「勝者、リベルタ中央魔導学院代表――ミオ!」
「続きまして!」
「右ブロック決勝!」
「聖光王国アルディア代表――アイリス!」
「同じく聖光王国アルディア代表――フィオナ!」
会場の熱気はそのまま、次なる一戦へと引き継がれていった。
続いて右ブロック決勝戦です。




