シルヴィア vs バルク
シルヴィアはゼノの代わりに勝つ事ができるのでしょうか!
ノクティスが壇上へ上がる。
「第三試合!」
「魔導連邦エルドリア代表――シルヴィア!」
静かな拍手が会場を包む。
シルヴィアは細剣を腰に差し、落ち着いた足取りで試合場へ向かった。
その姿には無駄な動きが一切ない。
一方、
「鉄槌王国グランツ代表――バルク!」
大柄な青年が両拳を打ち鳴らしながら歩み出る。
巨大な籠手を装備した格闘家だった。
「よろしく頼む!」
バルクは気持ちよく頭を下げる。
シルヴィアも一礼する。
「よろしくお願いします」
二人が距離を取る。
審判が右手を掲げた。
「始め!」
開始と同時に、
バルクが一直線に駆け出した。
「うおおぉぉぉ!!」
床を踏み砕く勢いで距離を詰める。
拳が唸りを上げた。
ドゴォッ!
しかし、
シルヴィアは半歩だけ身体をずらす。
拳は空を切った。
「避けた!」
「速い!」
観客席がどよめく。
バルクはそのまま連撃へ移る。
右、左、肘そして蹴り。
次々と攻撃が繰り出される。
それでも、
シルヴィアは必要最低限の動きだけで全てかわしていく。
レイは静かに呟いた。
「すごい!無駄がないね」
ミオも頷く。
「相手をよく見てるわね」
バルクは距離を取った。
「さすが代表だ、だが!」
両拳へ魔力を集中させる。
赤い魔力が籠手を包み込んだ。
「砕拳!」
一直線に突き出される拳。
空気が弾ける。
シルヴィアはようやく細剣を抜いた。
ガキィィン!!
拳と剣がぶつかる。
衝撃が試合場を走る。
そしてそれを受け流した。
「剣で受け流した!細剣だぞ!?」
観客席から驚きの声が上がる。
シルヴィアは静かに息を吐く。
「力はありますね」
そのまま後方へ飛び退く。
足元へ青白い魔法陣が広がった。
「氷よ」
「––氷結槍」
五本の氷槍が放たれる。
バルクは拳で次々と砕いていく。
バキン!
バキン!
バキン!
「こんなの効かねぇよ!」
最後の一本も砕こうとした、その瞬間。
「それが狙いですよ」
シルヴィアは微笑んだ。
「なっ?」
砕けた氷が細かな氷霧となって視界を覆う。
一瞬だけ視界が白く染まる。
「しまっ!」
シルヴィアは既に懐へ踏み込んでいた。
細剣が閃く。
キィィン!
バルクは咄嗟に籠手で受け止める。
しかし、
その直後、足元から氷が伸びた。
「––氷結拘束」
氷の鎖が両足へ巻き付く。
「ぐっ!」
動きが止まる。
シルヴィアは細剣を喉元へ向けた。
そして微笑んで言った。
「勝負ありですね」
静寂。
審判が右手を振り下ろす。
「そこまで!」
「勝者!––魔導連邦エルドリア代表――シルヴィア!」
会場は大きな拍手に包まれた。
バルクは豪快に笑う。
「いや、完敗だ!最後まで全部読まれてた!」
シルヴィアは剣を納め、一礼する。
「ありがとうございました」
二人は固く握手を交わした。
控え席へ戻ると、
ゼノが腕を組んで満足そうに頷く。
「素晴らしい試合でした」
「九十八点です」
シルヴィアが首を傾げる。
「残り二点は何でしょう」
ゼノは真剣な表情で答えた。
「最後の決めポーズです」
「もっとこう……格好良く決めてもよかったかもしれません」
シルヴィアは思わずため息をつく。
「大会は演技を競う場所ではありません」
「なるほど」
ゼノは大きく頷いた。
「次の課題ですね」
「違います」
「それよりゼノ、あなたは何点なんですか?」
「…痛いところをついてきますね」
そのやり取りに、ガルドが思わず吹き出した。
「はっはっは!」
「お前ら見てると飽きねぇな!」
シルヴィアは肩をすくめる。
「本人はいたって真面目なんですけどね」
ゼノは胸を張る。
「もちろんです」
「私は常に真剣ですよ」
その言葉にシルヴィアは小さくため息をついた。
「だから困るんです」
会場からも自然と笑みがこぼれる。
緊張に包まれていた闘技場の空気が、ほんの少しだけ和らいだ。
ノクティスが再び壇上へ立つ。
「第三試合、終了!」
「続きまして第四試合!」
会場の空気が再び張り詰める。
「聖光王国アルディア代表――アイリス!」
観客席から一際大きな歓声が上がる。
アイリスが静かに試合場へ歩き出した。
白銀の髪を揺らし、一歩一歩、迷いのない足取りで中央へ向かう。
その姿を来賓席から見つめるセレスティアは、小さく微笑んだ。
「アイリス……」
「あなたなら大丈夫です」
フィオナも腕を組み、静かに頷く。
「いつも通り戦えば勝てます」
一方、反対側の控え席ではアウレリアがゆっくりと立ち上がる。
深く息を吸い、静かに剣の柄へ手を添えた。
「相手がお姫様の護衛でも関係ありませんわ」
「リベルタ代表として、全力で挑ませていただきます」
観客席から大きな拍手が湧き起こる。
二人は静かに試合場中央へ歩み寄り、互いに一礼を交わした。
次の瞬間。
闘技場は再び静寂に包まれる。
第四試合――
アイリス対アウレリア。
優雅さと実力を兼ね備えた二人の戦いが、今始まろうとしていた。
次回はリベルタからアウレリアが出場します。




