ゼノ vs リヒト
第一戦目開始です!
審判の右手が高く掲げられる。
「始め!」
その瞬間、
ゼノは真っ先に距離を取った。
「では、完璧な私は三十秒で終わらせます」
観客席がざわつく。
「おぉ……言葉の意味はよくわからんが、すごい自信だ」
一方のリヒトは剣を構えたまま一歩も動かない。
「来ないのか?」
ゼノは余裕の笑みを浮かべる。
「強者ほど不用意には近付きませんからね。つまりあなたは私を警戒しているということです」
シルヴィアが額へ手を当てる。
「違います」
「様子を見られているだけです」
「なるほど」
「つまり互角ということですね」
「違います」
観客席から小さく笑いが漏れる。
しかし次の瞬間、
ゼノの足元へ巨大な魔法陣が展開された。
「雷よ!」
「駆け巡れ!」
『ライトニングランス!!』
数本の雷槍が一斉にリヒトへ襲い掛かる。
「速い!」
「おもしろいだけじゃない!さすが代表!」
歓声が上がる。
だが。
リヒトは最小限の動きだけで避け続ける。
一本、
二本、
三本、
紙一重でかわしていく。
最後の一本だけを剣で弾き飛ばした。
ガキィン!!
雷が四散する。
「避けた!?全部!?」
会場がどよめく。
リヒトは初めて口を開いた。
「悪くないな」
「ありがとうございます」
ゼノは笑顔になる。
「評価していただけました」
シルヴィアが小声で呟く。
「喜ぶところじゃありません」
「そうでした、今から勝つところです」
ゼノは慌てて咳払いした。
「失礼しました。では第二段階へ移行します」
今度は自ら駆け出す。
魔法剣。
剣へ魔力を纏わせる。
「はっ!」
鋭い斬撃。
リヒトも剣を振る。
ガキィィン!!
火花が散る。
一撃、
二撃、
三撃。
互いに一歩も譲らない。
「おぉ!」
「やっぱりおもしろいだけじゃない!近接も強い!」
「魔法使いじゃないのか!」
ゼノは距離を取りながら笑う。
「やはり強いですね」
「ですが、ここからが本番です」
両手を大きく広げる。
巨大な魔法陣が頭上へ展開された。
シルヴィアが嫌な予感を覚える。
「ちょっと待っ――」
「ゼノ!それまだ制御――」
「受けてください!」
巨大な光弾が放たれた。
ドォォォォン!!
轟音、
土煙が舞う。
観客席から歓声が上がる。
「決まったか!?」
「すげぇ威力!!」
煙が晴れていく。
そこに立っていたのは――
リヒト。
無傷。
そして、
少し離れた場所で仰向けになっているゼノだった。
「…………」
「えっ?」
一瞬、
静寂が流れる。
ゼノがゆっくり起き上がる。
「少々……」
「魔力を込めすぎました」
シルヴィアは深くため息をつく。
「自爆です」
「そうですね、はい知っています」
観客席から思わず笑い声が漏れた。
ゼノは服についた砂を払いながら立ち上がる。
「問題ありません、作戦Bがあります」
再び突撃する。
「はぁぁぁ!」
リヒトが迎え撃つ。
ガキン!!
剣を受け流される。
体勢を崩す。
「しまっ――」
リヒトの剣先が首元で止まった。
静寂。
審判が手を振り下ろす。
「そこまで!」
「勝者!」
「ルーヴェン覇王国代表、リヒト!」
会場から大きな拍手が沸き起こる。
リヒトは剣を納めるとゼノへ手を差し伸べた。
「いい試合だった」
ゼノはその手を取り、立ち上がる。
「ありがとうございます。次こそ勝ちます」
リヒトは小さく笑った。
「次があればな」
ゼノは真剣な顔で頷く。
「あります、きっとあります」
シルヴィアが肩を落とした。
「次じゃなくて今日勝ってくださいよ……」
観客席から再び笑いが起こる。
しかし、その笑いは決して嘲笑ではない。
誰もが認めていた。
ゼノは少し抜けている。
だが、その実力は間違いなく本物だった。
ノクティスが壇上へ上がる。
「第一試合、終了!」
「続きまして――」
「第二試合を開始します!」
シルヴィアは静かに立ち上がる。
「私が、エルドリア代表の実力をお見せします」
その表情からは、先ほどまでの呆れた様子は消えていた。
会場の空気も再び張り詰める。
第二試合が始まろうとしていた。
続きまして第二戦目です。




