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俺が魔王じゃなければ誰が魔王だというんだ〜無属性と判定された王子と黒き薔薇のメイドたち〜  作者: 黒華レン
学園編

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学院内選抜戦 前編

選抜戦が始まりました

 翌日、


 リベルタ中央魔導学院。


 訓練場には朝から多くの生徒が集まっていた。


 来月開催される各国学院交流戦。


 その代表を決める学院内選抜戦が、いよいよ始まる。


 観覧席には出場しない生徒達も集まり、訓練場は普段とは比べものにならないほどの熱気に包まれていた。


「それでは、これより学院内選抜戦を開始します」


 エルナの声が訓練場に響く。


「今回の選抜戦は個人戦」


「上位二名が、リベルタ中央魔導学院代表として各国学院交流戦へ出場します」


 生徒達がざわめいた。


「代表は二人だけか……」


「厳しいな」


「でも燃える!」


 その声を聞きながら、セラは拳を握っていた。


「二人だけ……」


 横にいたエリシアが心配そうに見る。


「大丈夫?」


「うん」


 セラは頷いた。


「緊張してる」


「でも、やるしかないもんね」


 その目は真剣だった。


 数日前のダンジョン訓練。


 カインから教わったこと。


 力任せではなく、相手を見ること。


 無理に勝とうとせず、生きて帰るために考えること。


 その全てを思い出す。


「私、頑張る」


「うん」


 エリシアは優しく微笑んだ。


「応援してる」


 一方、


 少し離れた場所。


 レティアとレヴィアは観察するように訓練場を見渡していた。


「始まるわね」


「うん」


「学院代表を決める選抜戦」


「強者を見極めるにはちょうどいいね」


 レヴィアが小さく頷く。


 黒十華。


 学院結界崩壊事件。


 シェルナ村での異常。


 未解決の謎は多い。


 もし学院内に黒十華と関係する者がいるなら、この場で何かしらの片鱗を見せるかもしれない。


「無理に勝ち上がる必要はないわ」


 レティアが呟く。


「目的は観察」


「了解」


 二人は静かに視線を鋭くした。


 選抜戦が始まった。


 第一試合。


 第二試合。


 次々と生徒達が試合場へ上がる。


 魔法が飛び交い、剣が交わる。


 歓声が上がる度、訓練場の空気はさらに熱を帯びていった。


 その中で…


「次、レイ!」


 名前を呼ばれ、レイは静かに試合場へ向かった。


 相手は同学年の男子生徒。


 開始の合図と同時に、相手が魔法を放つ。


「ファイアボール!」


 炎弾が飛ぶ。


 レイは半歩だけ横へ動いた。


 炎弾がすぐ横を通り過ぎる。


「え?」


 相手が戸惑う。


 次の瞬間。


 レイは懐へ入り、木剣を軽く相手の胸元へ当てた。


「そこまで!」


 審判が声を上げる。


「勝者、レイ!」


 観覧席がざわめいた。


「今の見えたか?」


「いや、普通に避けただけ……だよな?」


「でも速かったぞ」


 レイは何事もなかったように試合場を降りる。


 数試合後。


 再びレイの試合。


 今度も危なげなく勝利した。


 だが。


 三試合目。


 レイは相手の攻撃を受け流した直後、足元の境界線をちらりと見る。


(この辺でいいか)


 次の瞬間、


 あえて大きく後ろへ跳ぶ。


 相手の風魔法が地面を弾き、レイの足元に土煙が広がった。


「うわっ」


 レイはそのまま場外へ足を出す。


「場外!」


「勝者、対戦者!」


 周囲がざわついた。


「惜しかったな」


「でもそこそこ強かったよな」


「代表までは厳しいか」


 レイは苦笑しながら肩をすくめる。


「負けたか」


 それ以上、目立つつもりはなかった。


 教室後方から見ていたレティアは少しだけ目を細める。


「悪くない動きね」


「うん」


 レヴィアも頷く。


「でも黒十華って感じではないかな」


「そうね」


 二人の判断は、完全に外れていた。


 次に注目を集めたのはセラだった。


「次、セラ!」


 名前を呼ばれた瞬間、セラは深呼吸する。


「行ってくる」


「うん」


 エリシアが両手を握る。


「頑張って!」


 セラは試合場へ上がった。


 相手は剣を持つ男子生徒。


 開始の合図と同時に、相手が踏み込む。


 剣が振り下ろされる。


 以前のセラなら、真正面から受けていた。


 だが。


 今は違う。


(相手の動きを見る)


 カインの言葉が頭をよぎる。


 セラはわずかに横へずれた。


 剣が空を切る。


 その瞬間、セラは相手の懐へ潜り込む。


「はぁっ!」


 拳が腹部へ入る。


 さらに膝蹴り。


 相手の体勢が崩れたところへ回し蹴り。


 ドンッ!


 男子生徒が場外へ転がる。


「勝者、セラ!」


 歓声が上がった。


「やった!」


 セラは思わず拳を握った。


 エリシアも嬉しそうに手を叩く。


「すごい、セラ!」


 二回戦。


 三回戦。


 セラは苦戦しながらも勝ち上がっていく。


 相手の動きを見て、隙を突く。


 無理に押し切らず、引くべき時は引く。


 ダンジョンで学んだことが確かに生きていた。


「セラ、強くなったな」


「前より全然違うぞ」


 周囲の生徒達も驚いていた。


 だが。


 準決勝。


 相手はアウレリアだった。


「よろしくお願いしますわ」


 アウレリアが優雅に微笑む。


「よ、よろしくお願いします!」


 セラは緊張した面持ちで構える。


 開始の合図。


 セラは一気に踏み込む。


 先手を取る。


 だが、


「甘いですわ」


 アウレリアの魔法陣が足元に展開される。


 雷撃。


 セラは咄嗟に跳んで回避する。


「まだ!」


 着地と同時に再加速。


 拳を繰り出す。


 アウレリアは身体を反らしてかわし、手元の短剣で軽く軌道を逸らす。


 セラはさらに連撃。


 右。


 左。


 蹴り。


 膝。


 息をつかせない攻撃。


 観覧席から歓声が上がる。


「セラ、押してる!」


「いや、アウレリアが全部捌いてる!」


 エリシアは祈るように両手を握っていた。


「セラ……」


 セラは必死だった。


 全力で攻める。


 考える。


 相手の隙を探す。


 だが、アウレリアは崩れない。


「本当に強くなりましたわね」


 アウレリアが言う。


「でも」


 次の瞬間。


 雷光が走る。


「ここまでですわ」


 セラの足元が痺れる。


「しまっ……!」


 動きが止まった一瞬。


 アウレリアの手がセラの肩へ触れる。


 そのまま軽く押し出される。


 セラは場外へ足を出した。


「場外!」


「勝者、アウレリア!」


 歓声が上がる。


 セラは呆然と立っていた。


「……負けた」


 アウレリアは試合場から降り、セラへ手を差し出す。


「良い試合でしたわ」


「あなた、本当に強くなっていますわよ」


 セラはその手を取る。


「ありがとうございます……」


 だが、悔しさは消えなかった。


 試合場を降りた瞬間。


 セラはエリシアの胸へ飛び込んだ。


「エリシアぁぁ……!」


「うん、頑張ったね」


「負けちゃったぁ……!」


 涙声だった。


「カインさんになんて言おう……」


「大丈夫」


 エリシアは優しく背中を撫でる。


「きっと、よく頑張ったって言ってくれるよ」


「本当?」


「うん」


「絶対そう言ってくれる」


 セラは目元を拭いながら頷いた。


「……うん」


「次はもっと強くなる」


「うん」


 エリシアは微笑んだ。


 その頃。


 別の試合場では、空気が変わり始めていた。


「次、クロエ」


「エルフィ」


 名前が呼ばれた瞬間、周囲の視線が一斉に集まる。


 クロエが巨大な斧を肩に担ぎ、試合場へ上がった。


 対するエルフィは短剣を両手に持ち、軽く笑っている。


「今度こそ勝つよ、クロエ」


 エルフィが言った。


 クロエは静かに斧を構える。


「前と同じ結果になるだけだよ」


「どうかな?」


 エルフィは楽しそうに笑った。


 開始の合図が響く。


 その瞬間。


 エルフィの姿が煙に包まれた。


 試合場全体を覆うほどの濃い煙幕。


 観客席がざわつく。


「見えないぞ!」


「何が起きてる!?」


 煙の中。


 クロエは動かない。


 巨大斧を頭上へ構え、頭部を守るように構える。


 その瞬間。


 ガンッ!!


 何かが斧に当たった。


 クロエの表情が変わる。


(今の角度……)


(見えない位置からの攻撃……)


 過去の戦闘が脳裏をよぎる。


 エルフィ。


 そして、エルミナ。


 見えない場所から放たれる狙撃。


 まるで二人いるかのような攻撃。


(まさか……)


 クロエは周囲へ意識を広げた。


 煙の奥。


 姿は見えない。


 だが、気配が揺れる。


 前。


 後ろ。


 右。


 左。


 観客には何も見えなかった。


 ただ、煙幕の中から金属音だけが響く。


 ガンッ!


 ギィンッ!


 ドォン!!


「何が起きてるんだ……?」


「分からない……」


 誰も、戦いの全貌を掴めない。


 クロエの斧が煙を裂く。


 だが、エルフィは捉えられない。


 その時。


 再び死角から何かが飛ぶ。


 クロエは斧で防ぐ。


 ガンッ!


(やはりいる)


(エルミナがどこかに……)


 そう思った瞬間。


 背後の気配が消えた。


「もらったよ」


 耳元で声がした。


 クロエが振り返る。


 だが遅い。


 エルフィの短剣が首元へ突き付けられていた。


「そこまで!」


 審判の声が響く。


「勝者、エルフィ!」


 煙が晴れていく。


 クロエはしばらく黙っていた。


「……エルミナは?」


「いないよ」


 エルフィはにこりと笑う。


「全部、わたし一人」


「さっきの狙撃は?」


「小石を投げただけ」


「……」


「前にやられたこと、ちゃんと覚えてたんだ」


 クロエは悔しそうに斧を下ろした。


「……次は勝つ」


「ふふ、待ってる」


 エルフィは軽く手を振る。


 観客達には最後まで何が起きたのか分からなかった。


 だが。


 クロエとエルフィだけは分かっていた。


 それが、単なる奇策ではなく。


 過去の敗北を越えるために用意された、エルフィの本気だったことを。

さぁ誰が勝ち抜くのでしょうか!

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