家に着くまでがレクリエーション
イベント盛りだくさんのレクリエーションが終わりました。
翌朝。
シェルナ村。
レイ達は帰り支度をしていた。
「……増えてないか?」
レイが呟く。
昨日まで閑散としていたはずの村。
しかし。
今は違う。
通りには人。
人。
人。
露店には長蛇の列。
海岸にも観光客が溢れていた。
海水浴客で溢れかえっている。
「本当ですね」
エリシアも驚いていた。
「昨日と全然違います」
リリアナも目を丸くする。
近くを歩く観光客達の会話が聞こえてきた。
「聞いたか?」
「ああ」
「デスオクトパスが討伐されたらしいぞ」
「マジかよ」
「もう安心して泳げるって話だ」
「じゃあ泳ぐしかないな!」
そんな会話があちこちから聞こえてくる。
どうやら噂は一瞬で広がったらしい。
昨日まで客足を遠ざけていたデスオクトパス。
その討伐情報だけが広まり、観光客が一気に押し寄せたようだった。
「いやー助かりました!」
海の家店主マモルが満面の笑みで駆け寄ってくる。
「朝から大忙しですよ!」
「よかったですね」
エリシアが笑う。
「ええ!」
マモルは何度も頷いた。
「これで今年の売上は安泰です!」
その様子を見て生徒達も嬉しそうだった。
シェルナ村は完全に活気を取り戻していた。
そして。
帰りの馬車。
生徒達は疲れ切っていた。
特にリリアナ。
「もう肝試しは嫌です……」
ぐったりしている。
「まだ言ってますの?」
アウレリアが呆れた。
「だって本物だったんですよ!?思い出しただけで怖いです!まだ少しあれは嘘だったんじゃないかと…」
半泣きである。
その時。
「そういえば」
ニアが言った。
「昨日、綺麗な宝石見つけたにゃ」
レイが反応する。
「宝石?」
「うんにゃ」
「森の奥にあったにゃ」
嫌な予感がした。
「どんなやつ?」
「周りに変な模様がいっぱいあったにゃ」
「ほう」
「真ん中に紫色の宝石があったにゃ」
「ほう」
「押すなって書いてあったにゃ」
「ほう」
「綺麗だったから押したにゃ」
馬車の中が静かになった。
「押した?」
「うんにゃ」
「そしたらガコンってなったにゃ」
レイ。
「……」
クロエ。
「……」
エルフィ。
「……」
リリアナ。
「……」
「それで?」
レイが聞く。
「何も起こらなかったにゃ」
ニアは胸を張った。
「だから帰ったにゃ」
沈黙。
数秒後。
「「また、お前かぁぁぁぁぁぁぁ!!」」
クロエとエルフィが叫んだ。
「何にゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「何で押したんだ!?」
レイが聞く。
「綺麗だったにゃ!」
「押したらダメ!」
「でも綺麗だったにゃ!」
「ダメ絶対!」
「綺麗だったらさわるにゃぁぁぁぁぁ!」
クロエとエルフィも頭を抱える。
「やっぱりニアだった……」
「知ってた……」
リリアナは顔を真っ青にしていた。
「じゃあ……」
震える。
「やっぱり本当に本物だったんですかぁぁぁぁぁ!?」
再び半泣きだった。
馬車は夕暮れの街道を進む。
やがてリベルタへ到着した。
「家に着くまでがレクリエーションです」
エルナが言う。
生徒達がそれぞれ帰路につく。
こうしてシェルナ村での一泊二日のレクリエーションは幕を閉じた。
その頃、
冥府十王本拠地。
巨大な円卓の間。
薄暗い空間の中央。
円卓を囲むように四人の姿があった。
ノクティス。
リリス。
レティア。
レヴィア。
「では報告を聞こう」
ノクティスが静かに言う。
レティアが立ち上がった。
「はい」
「リベルタ中央魔導学院への潜入は順調です」
「有力生徒の調査も継続中です」
ノクティスは頷く。
「成果は?」
「黒十華についてです」
空気が少し引き締まった。
最近各地で名前が聞こえ始めた組織。
冥府十王としても無視できない存在だった。
「まず学院結界崩壊事件」
「学院長オルフェウス本人が調査しているにも関わらず原因は未だ不明」
「王国最高峰の術式に干渉できる存在が学院内、あるいはその周辺にいる可能性があります」
ノクティスは黙って聞いていた。
「黒十華か」
「可能性はあります」
レティアは答える。
「根拠はありません」
「ですが否定できる材料もありません」
ノクティスは頷いた。
「続けろ」
「次にシェルナ村です」
「デスオクトパス討伐」
「討伐者は不明」
「目撃証言も曖昧で正体は掴めませんでした」
レヴィアが補足する。
「ですがかなりの実力者です」
「短時間でデスオクトパスを討伐しています」
ノクティスは腕を組んだ。
「黒十華の可能性は?」
「あります」
「ただし断定はできません」
レティアは冷静に答えた。
そして最後。
「肝試しの夜」
「侵入禁止区域にて大規模な亡霊出現が発生」
「原因は不明」
「封印が何らかの形で解除された可能性があります」
ノクティスの目が細くなる。
「封印解除か」
「はい」
「偶然とは考えにくいです」
レティアは真剣な表情だった。
「学院結界崩壊」
「デスオクトパス討伐」
「亡霊事件」
「ここ最近だけでも異常事態が続き過ぎています」
「それら全てに黒十華が関与しているとは言いません」
「ですが」
一呼吸置く。
「少なくとも黒十華は何かを知っている可能性があります」
円卓に沈黙が落ちた。
リリスも静かに頷く。
「私も同意見ね」
「少なくとも普通の組織ではないわ」
ノクティスはしばらく考え込む。
そして静かに告げた。
「調査継続」
「黒十華の情報を最優先で集めろ」
「はい」
「了解」
レティアとレヴィアは同時に頷いた。
こうして。
学院では誰も知らないまま。
黒十華を追う者達の捜査もまた少しずつ進んでいた。
みなさん無事に帰って下さい。




