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俺が魔王じゃなければ誰が魔王だというんだ〜無属性と判定された王子と黒き薔薇のメイドたち〜  作者: 黒華レン
学園編

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キモダメシ

夏の夜といえば…

 シェルナ村。


 海の家での夕食を終えた生徒達は宿泊施設前の広場へ集められていた。


 たこ焼き。


 イカ焼き。


 海鮮焼きそば。


 全員が満腹である。


 特にニアはまだ口をもぐもぐさせていた。


「まだ食べてるの?」


 エルフィが呆れる。


「別腹にゃ」


「どこにそんな別腹があるのよ」


 その時。


 エルナが前へ出た。


「それではこれより夜のレクリエーションを行います」


 生徒達がざわつく。


 エルナは少し間を置いて言った。


「肝試しです」


「おおおおおおおお!!」


 男子生徒が盛り上がる。


「えぇぇぇぇぇ……」


 女子生徒が露骨に嫌そうな顔をした。


 リリアナなど既に泣きそうだった。


「か、帰ってもいいですか?」


「駄目です」


 即答だった。


 ほどなくしてペア分けが行われた。


 結果。


 レイとエリシア。


 アウレリアとリリアナ。


 セイルとヴェイン。


 レティアとレヴィア。


 その他の生徒達もそれぞれ組むことになった。


「どうせ何も出ないさ」


 レイが言う。


「それ、言っちゃダメなやつー」


 くすくす笑いながらエリシアが言った。


 一方、


 アウレリアとリリアナ。


「大丈夫ですか?」


「全然大丈夫じゃないですぅ……」


 リリアナは既にアウレリアの袖を掴んでいた。


「まだ始まってもいませんわよ」


「でも怖いんですぅ……」


 セイルとヴェイン。


「感じるぞ……」


「うむ……」


「こんな時くらいは女生徒とペアを組みたかった」


「我が右眼も同意している」


「「感じる」」


 二人は真剣だった。


「闇の気配を」


「封印された魔神の気配を」


 ただのフクロウだった。


「ホウ」


「……」


「……」


 気まずい空気になった。


 そして。


 森の奥。


 レティアとレヴィアが歩いていた。


「絶対何かいるわ」


「そうだね」


「黒十華とか」


「黒十華とか」


 これは肝試しである。


「さぁ、みなさんこちらのようですわよ」


 アウレリアがリリアナに袖を掴まれながら先導する。


 だが。


 足元には倒れた看板があった。


 草に埋もれ、誰の目にも入らない。


 そこにはこう書かれていた。


『この先危険 侵入禁止』


 誰も気付かなかった。


 その頃。


 ニアは一人で行動していた。


「暇にゃ」


 肝試しに全く興味がない。


 森を適当に歩いていた。


 すると。


「にゃ?」


 何かを見つけた。


 古びた石碑。


 周囲には鎖。


 魔法陣。


 いかにも怪しい。


「何にゃこれ」


 近付く。


 石碑には文字が刻まれていた。


『危険絶対に触るな』


「にゃ?」


『封印中』


「封印?」


『危険』


「危険?」


 ニアは首を傾げた。


「危険なら触らない方がいいにゃ」


 珍しくまともな判断だった。


 だが。


 中央に埋め込まれた宝石が月明かりで光る。


 キラッ。


「綺麗だにゃ」


 キラキラキラキラ。


「あぁ、だめ、触ったらだめにゃー!」


 ポチ。


 ガコン。


「……」


「何も起こらないにゃ。なら帰るにゃ」


 ニアはそのまま立ち去った。


 そして誰も見ていなかった。


 森の奥から。


 ヒュオオオオオオ……


 冷たい風が吹いた。


 一方。


 侵入禁止区域。


 ズル……


 目の前の地面から。


 白骨の腕が生えた。


「ひぇぇぇぇぇぇぇ!?」


 リリアナが飛び上がる。


 さらに。


 ズルズルズル……


 大量の骸骨。


 亡霊。


 そして。


 ローブを纏った骸骨の王。


 リッチ。


 目に青白い炎を宿していた。


「……侵入者……」


 全員沈黙。


 レイが呟く。


「……めちゃくちゃ本物っぽい!」


 次の瞬間。


 亡霊の群れが襲い掛かる。


「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!?」


 リリアナが真っ先に叫んだ。


「落ち着きなさい!」


 アウレリアが前へ出る。


 雷撃を放つ。


 バチィィィ!!


 先頭のスケルトンが吹き飛んだ。


 だが。


 立ち上がった。


「え?」


 アウレリアが固まる。


「今、吹き飛ばしましたわよね?」


 スケルトンはカタカタと音を立てながら再び迫ってくる。


「いやぁぁぁぁぁ!!」


 リリアナは半泣きだった。


 一方。


 セイルとヴェイン。


「来るぞ!」


「うむ!」


 亡霊が襲い掛かる。


 セイルの剣が閃く。


 ズバッ!


 亡霊が真っ二つになる。


 だが。


 数秒後。


 再び元に戻った。


「何っ!?」


「不死だと!?」


 ヴェインの右眼が疼いた。


 たぶん気のせいだった。


 一方。


 レティアとレヴィア。


「お姉ちゃん」


「何?」


「これ黒十華?」


「違うと思う」


 即答だった。


「だよねー」


 初めてまともな推理をした。


 一方。


 レイとエリシア。


 無数の亡霊が迫る。


「レイ危ない!」


「下がってろ!」


 レイが剣を抜く。


 斬撃が亡霊を薙ぎ払った。


 亡霊達が悲鳴を上げる。


「効いてる!」


 エリシアが言う。


 レイは周囲を見渡した。


 明らかに数がおかしい。


 肝試しイベントの規模ではない。


 その時。


 森の奥から声が響く。


「……侵入者……」


 全員が振り向いた。


 そこには。


 巨大な杖を持ったリッチが立っていた。


 青白い炎が揺らめいている。


「生者……排除する……」


 直後。


 無数の魔法弾。


「散開!」


 レイが叫ぶ。


 ドドドドドドドド!!


 地面が吹き飛ぶ。


「先生の演出にしては気合い入りすぎじゃないですかぁぁぁ!!」


 リリアナが泣いた。


 三十分後。


 全員ボロボロだった。


 レイ達は協力しながら森を突破。


 最後はレイ、アウレリア、セイル達の連携でリッチを撃破した。


「はぁ……」


「疲れましたわ……」


「死ぬかと思った……」


 リリアナは完全に涙目である。


 ようやくゴール地点へ到着。


 そこには。


 エルナが腕を組んで待っていた。


「遅かったですね」


「先生!!」


 リリアナが叫ぶ。


「森の中に亡霊が!」


「リッチが!」


「骸骨が!」


「襲ってきたんです!!」


 しかし。


 エルナは首を傾げた。


「何の話です?」


「……え?」


 全員固まる。


「あなた達」


 エルナが地図を広げる。


「どこへ行ってたんです?」


「どこって……」


 アウレリアが指差す。


「このルートを」


「違います」


 エルナが即答した。


「そこは侵入禁止区域です」


 沈黙。


「……はい?」


 アウレリア。


「え?」


 セイル。


「我が邪眼が……」


 ヴェイン。


「えぇぇぇぇ!?」


 リリアナ。


 地図を見る。


 本来のルートと全く違う方向だった。


 原因。


 倒れて見えなくなっていた看板。


 そして、


 アウレリア。


「……わたくしが先導しましたわね」


 静寂。


「……」


「……」


「……」


 リリアナが震える。


「じゃあ……」


 ガタガタガタガタ。


「本物だったんですかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 その場で腰を抜かした。


 さらにその頃。


 ニア。


「幽霊いなかったにゃ」


 宿でぐっすり寝ていた。


 誰もまだ知らない。


 森の封印を解いた犯人が。


 こいつであることを。

まだ少し夏本番には早かったですね

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