レティア&レヴィア事件捜査編
レティアとレヴィアの捜査編です。
リベルタ中央魔導学院。
結界崩壊事件から二日後。
学院は未だ騒然としていた。
防衛結界は復旧したものの、原因は不明。
犯人も不明。
学生たちも世界の終わりだの超現象だのいろいろなうわさをしていた。
学院長オルフェウス自ら調査しているにもかかわらず、何一つ手掛かりが見つかっていない。
そんな中、
校舎の屋上。
レティアとレヴィアはフェンスにもたれながら学院を見下ろしていた。
「やっぱりおかしいわよね」
レティアが呟く。
「何が?」
レヴィアが聞き返す。
「結界よ」
レティアは腕を組んだ。
「学院の結界は王国最高峰の術式で構成されている」
「うん」
「簡単にも偶然にも壊れるような代物じゃない」
レヴィアも頷く。
確かにその通りだった。
複数の魔力回路。
数十の補助術式。
学院地下深くに設置された中枢。
どれか一つ壊れても他の回路を使い壊れた回路を補う。
それゆえ、一つ壊れただけでは停止しない。
にもかかわらず。
結界は完全に崩壊した。
「つまり誰かが意図的に破壊した、それ以外考えられない」
レティアが言う。
「でも学院長が自ら調査しても犯人が分からないんでしょ?」
「だからよ」
レティアの目が細くなる。
「学院側でも気付けない存在」
「そんな事できるの?」
「黒十華」
風が吹いた。
何だかそれしかないっぽい空気になる。
「やっぱり黒十華だよね」
「間違いないわ」
根拠は無かった。
しかし二人の中では確信になっていた。
その頃、
食堂。
「へっくしゅん!」
エルフィが突然くしゃみをした。
「風邪ですか?」
クロエが心配そうに聞く。
「いや……」
何故か嫌な予感がした。
翌日。
レティアとレヴィアは独自捜査を開始した。
「まずは現場検証よね」
「了解」
二人が向かったのは校舎裏。
結界回路の一部が存在していた場所だ。
当然、すでに教師達による調査も終わっている。
だが。
「……何もないよね。もうとっくに調べられた後だし、何かあったらもう見つけてるよね」
レヴィアが言った。
「…綺麗すぎるわ」
レティアも眉をひそめる。
破壊された痕跡はある。
しかし、
犯人に繋がる証拠が全く残っていない。
「流石、黒十華ね。全く何も残してない」
「プロの仕事だね。侮れない集団ね」
勝手に納得した。
さらに調査を続ける。
図書館。
訓練場。
中庭。
屋上。
ありとあらゆる場所を回った。
そして。
屋上でレヴィアが何かを見つける。
「姉さん!」
「何?」
「これ!」
指差した先。
床に小さな傷があった。
ほんの僅かな引っかき傷。
「これは……!」
レティアがしゃがみ込む。
「何かの戦闘跡……?」
「ここで黒十華と何かの戦闘があった?」
「学院の誰にも気付かれない戦闘……」
「その戦闘のわずかな傷が結界を壊した?」
「ここにある結界だけは壊れたのは偶然?」
完全に勘違いだった。
それはあの時、
ニアが寝転がった時についた爪痕である。
その頃。
当の本人。
「今日は魚のムニエルだにゃー!」
食堂で幸せそうだった。
午後。
二人は教室で捜査結果をまとめていた。
「分かった事がある」
レティアが真剣な顔で言う。
「何?」
「黒十華の実力は想像以上よ」
「うん」
「学院結界を破壊しながら痕跡を残さない」
「うん」
「学院長ですら気付けない」
「うん」
「恐らく最高幹部クラスが動いたに違いないわ」
「なるほど」
レヴィアも真顔で頷く。
なお。
根拠はほぼ無かった。
そこへ。
「何してるの?」
後ろから声がした。
二人が振り返る。
そこにはレイがいた。
「捜査よ」
レティアが答える。
「捜査?」
「結界崩壊事件」
「ああ」
「最近、うわさになってる黒十華が関与しているわ」
レイは数秒沈黙した。
「……そうか」
何とも言えない顔になる。
しかし何も知らない。
本当に知らない。
だから否定もできなかった。
「見てなさい」
レティアが立ち上がる。
「必ず黒十華の正体を暴く」
「絶対にね」
レヴィアも拳を握る。
二人の瞳は本気だった。
窓際。
レイは遠い目をした。
(うん黒十華、名前が知られるようになってきたな……でも、何やったんだ……?)
一方その頃。
中庭。
「にゃ?」
ニアは花壇の横に埋まっていた妙な金属板を発見していた。
「何にゃこれ」
しゃがみ込む。
キラキラキラッ。
目が輝く。
嫌な予感しかしなかった。
ニアが金属板を引っこ抜く。
「何にゃ何も起こらないにゃ」
ニアはピョンピョンと壁や屋根を渡りどこかへ行ってしまった。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ
地響きと共にゴーレムが現れた。
「馬鹿な!あれは過去のゴーレムの研究室の学生達が力を合わせて作った最高傑作にして失敗作、最強のゴーレムにして制御不能の代物。簡単に破ることのできない結界で封印されていたはず、なぜ封印がとけている!」
突如現れた巨大なゴーレム。
いつの間にか、その前に黒いフードを被った人物が一人立っていた。
学生たちがざわめく。
「あれ、うわさの黒十華とか言うやつじゃね?」
「黒十華って悪魔の使者とかいうやつ?」
「正義の味方だって聞いたぜ?」
様々な噂が飛び交う。
するとゴーレムの前にいた人物は勢いよく空に向かって跳ね飛んだ。
ゴーレムの頭より高く。
「あいつ武器も持ってないけどどうするんだ?魔法で倒すつもりか?」
学生の一人が言う。
「馬鹿を言うな!あの制御不能なゴーレムはその危険性から過去に何度も破壊をしようとした、だが強固すぎて武器も魔法でも破壊できなかったんじゃ」
オルフェウスがやって来てそう言った。
すると、
バン…バン…バン
破裂音と共に急に学生たちの前に煙が広がった。
正体はエルフィの煙幕。
「クロエの獲物を見られるわけにはいかないからねー」
エルフィが言う。
クロエは煙幕が広がったのを確認。
異空間から超巨大斧『破滅斧ギガントブレイカー』を召喚。
「いっけぇー!!!––巨斧震断!」
ゴーレムの頭からギガントブレイカーで必殺技を叩き込む。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴー
ゴーレムは真っ二つに割れ音を立て崩れ落ちていく。
ゴーレムが崩れ土煙がたっていたが、おさまる頃には黒いフードを被った人物は消えていた。
騒ぎを聞きつけ慌ててレティアとレヴィアは来たがすでに全てが終わった後だった。
「あー黒十華がいたかもしれないのにー」
レヴィアが言った。
「仕方ないわ、一足遅かったわ」
レティアが言う。
––その後ユノベル屋敷
メイドの仕事をしながらクロエ、エルフィ、ニアが集まっていた。
「なんか変な金属の板があったか引っこ抜いたけどただの板だったにゃー」
ニアが言った。
「ニア…それってどこの話?」
エルフィが聞く。
「魔導学院の校庭の奥の方にゃ」
「いつ?」
「今日にゃ」
「…何か模様とかなかった?」
クロエが聞く。
「綺麗な紫色のごちゃごちゃした模様があったにゃーでも引っこ抜いたら消えちゃったにゃー」
「……」
「……」
「つい最近似たような模様のもの壊したり消したりしてない?」
クロエがニアな聞いた。
「えっ、なんで知ってるにゃ?」
「「お前かぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」
クロエとエルフィが言った。
「なんにゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
次回!夏といえば…




