ヴァルゼオン
今回はヴァルゼオンとリリスのお話です。
––冥府十王、奈落の拠点
ヴァルゼオンはエストレアのそばにいた。
あれから数日が経ったがまだ目を覚まさない。
本当に目を覚ますのだろうか、
ヴァルゼオンはそう思った。
そんな時だったヴァルゼオンとエストレアのいる部屋の前をリリスが通りががりヴァルゼオンと目があった。
(他の奴らは私の事を馬鹿にしてくるけど、ヴァルゼオンは少し違ってそんな事はしてこないのよね。すぐそばのエストレアがいるからなのかしら。ヴァルゼオンにはあんな事言っちゃったけど少し悪い気がしてきたわね)
リリスがそう思いヴァルゼオンに言葉をかける。
「この前はごめんなさい、少し言いすぎたみたい」
「お前が謝るところなど初めて見たぞ、ははは、何か変わった事でもあったのか?」
ヴァルゼオンがリリスに言った。
「ええ、私もあなた以外には何があっても謝るつもりなんてないわよ」
リリスが答えた。
「ははは、冗談だ、お前の受けている仕打ちは知っている。だが、ここでは実力が物を言う。だがあいつらは少しやりすぎな気がするがな」
ヴァルゼオンはリリスに初めから知っていた様に話した。
「エストレア、早く目を覚ますといいわね。それよりもエストレアはあの黒いフード付きのマントを被ったやつらに襲われたのよね?あいつら私たちの強化魔獣をいとも簡単に葬り去って行ったわ。エストレアが強いのは私も知っているの。だけど、あいつらに遭遇してエストレアがあの雑魚軍団と一緒だとしても無事に生きているとは思えないの。」
リリスが言う。
「そうだな。あの時、俺はとても信じられない場面に出くわしたんだ。今でもエストレアが息をしていて目覚めるかも知れない。誰も信じられないし恩人を売りたくなかった。だから円卓会議ではこの話は伏せたんだ」
ヴァルゼオンが深刻な顔で言った。
「恩人?」
リリスがヴァルゼオンに聞く。
「ああ、そうだ。お前は他の奴らに漏らすことはないだろう。あの時、俺たちはエストレアの軍が町を襲い、遅れて俺が圧倒的な力でねじ伏せる。後で、秘密を漏らしてやっかいになりそうな他の種族もそこで俺が片付ける予定だった」
「もちろん、その作戦は聞いていたわ」
「俺はあいつらより遅れて行く必要があった。町までまだ先というところだったんだ。そこは開けた場所で見通しが良かった。すると、辺りには死体にマグマが纏わりつき装備、体がどんどん溶けている光景を目にした。俺は一瞬何が起こっているのかわからなかった。この光景はなんだ?これは敵方の軍勢か?いや、ここには魔族の溶けかけている者もいる。そして、町からは火の手もあがっていない。そこで、俺は理解した。やられたのはこちら側だ。そしてエストレアの姿が見えない。慌てて辺りを探した。この状況から最悪な場面も考えた」
「だけど、見つけられた」
「そう、だが最悪の場面とほぼ変わらない状況だった。エストレアの両腕にはもう腕を動かすことは叶わないだろう傷を負い、腹部にも致命症だろうとわかる傷から血液が溢れていた。少しの傷なら魔力を流し消してしまうこともできるだろう。だがエストレアの命はまもなく消えてしまおうとしている。俺は覚悟を決め必ずエストレアのために復讐を遂げてやると考えエストレアに誰にやられたのかを聞いた」
「それがあの黒いフード付きのマントを被った奴らだったのね」
「ああ、エストレアは動かない体で力を振り絞って答えたんだ」
ヴァルゼオンの瞳に少しの涙が見えた様だった。
「その後に誰かが来て助けたっていう事?最愛の恋人を助ける事を諦めないといけないような傷を?とても信じられないわ。円卓会議で話しても誰も信じないかもね」
「ああ、それで、その後のことだ何処からかこちらに歩いて来る気配がしたんだ。俺は正直なところ錯乱していたんだろうな。そこから動く事さえしなかった」
––過去
「やあ、そこで何をしているんだい?」
見知らぬ男がヴァルゼオンに話しかける。
「…ああ、何をしているのかか、この女が黒い衣を纏ったやつにやられて死にかけているんだ。もう、誰にもどうにもできない。ここで最後を看取ってやろうと思っているところだ」
ヴァルゼオンが見知らぬ男にそう言った。
(冥府十王の一人ヴァルゼオンが見知らぬ男に話しかけているだと?我ながら滑稽だな)
「黒い衣を纏ったやつは何回か戦った事があるけどあいつらは強いよ。まるで気が狂っているようだった」
男がヴァルゼオンに言った。
「何だと、そいつらを知っているのか」
ヴァルゼオンは男にそう言うと男が、
「そんな事より、そこの彼女、もう、長くないようだけど、きみの大事な人なの?」
「ああ、さっきからそう言っている。ふざけているのか」
ヴァルゼオンが少し苛つき男に言った。
「俺ならその彼女を助けてあげられるかも知れないけど試してみる気はある?」
男がヴァルゼオンに言った。
ヴァルゼオンは怒りを露わにし、
「馬鹿な事を言っていると殺すぞ!これだけの重傷者をどうやって…どれだけの魔力がいると思っている…」
ヴァルゼオンは地面に膝をつき涙した。
「それなら大丈夫だと思うよ。そんな魔力いらないだろうし俺の魔力、君たちと相性よさそうなんだ。やってみるか、やらずに死ぬのをただ見ているだけかどうする?」
––そして現在
リリスに男と会った経緯を説明した。
「選択を迫られた俺はその男にやってくれ。と頼んだ。その男が魔力を流しはじめた。するとエストレアの傷がみるみる塞がって行く。エストレアの横に俺はいたんだが、とてつもない魔力を感じた。そして…あの魔力は我々と同じ…」
ヴァルゼオンがリリスに言った。
「そんな話…そんなやついたら私たちの遥か上の存在。…私たちを束ねられる者、魔王の様な存在にしかありえない」
リリスが言ったと同時に心につっかえている一つの考えが浮かんだ。
(ああ、そうね。とても信じられない、あり得ないような可能性が一つだけあるわね)
「ヴァルゼオン、あなたその男について何か情報は持っていないの?」
「ああ、俺がその男に質問したらはぐらかされたよ。……ただ、名前だけ言っていた。––––レイ」
ヴァルゼオンがリリスに言った。
リリスは平静を装っていたがやはり動揺が顔に現れる。
(やっぱり、そんなおかしな事、彼しか…なし得ないか)
「リリス、きみは自分の優位に立てる立場だと冷静だが立場が逆だとこんなに脆いのか。レイの事を知っていると完全に態度に出てしまっているぞ」
ヴァルゼオンがリリスに言った。
「わかったわ。ヴァルゼオン、あなたにだけレイの事教えてあげるわ。これは私が失った部下たちから得た情報もある。絶対に他の奴らには言わないで。」
「ああ、約束は守る」
その時、横になっていたエストレアの瞳が開いた。
「ああ、ああ!エストレア」
ヴァルゼオンはエストレアをゆっくり抱き起こし涙を浮かべた。
10万文字達成ー!




