犯人探し
リリスとルシェが犯人探しをします。
…リベルタ中央魔導学院
あの時リリスは見ていた。
ヴォルグが消された時。
三人の人間。
しかし、顔までは確認できていない。
だが、ヴォルグを消したのはこの学園の者だろう。
あれを倒せる者などそういない。
そんな人物、すぐに見つかるに違いない。
リリスとルシェはAクラスにいた。
あの日、ヴォルグを見た者がいないかルシェと手分けしてそれとなく聞いてまわる。
ルシェと昼休みに話す。
(ほら、簡単に見つかった。)
講義室にいた何人かがヴォルグが出て行った後それを追って二人出て行ったのを見ている。
セイルとヴェインだ。
二人とも普段からふざけているようだけどさすがAクラスにいるだけあってなかなかに魔力が高い。
(二人が関係しているのは間違いない。あと一人の情報を聞き出すとしましょう。)
「ルシェ、あの二人からもう一人の情報を聞き出すわよ」
--放課後
リリスとルシェは二人に話があるからとヴォルグが消された学園裏手に呼び出していた。
セイルとヴェインはもうすでに待っているようだ。
「女性から呼び出されるなんて初めてでドキドキするなヴェイン」
「……」
「まさかお前、今までに呼び出された事あるのかよ」
「いや、お前と同じで緊張しているだけだ同志」
「このシチュエーションはもしかして…」
「「告白。」」
二人声がそろう。
「お二人ともお待たせしてごめんなさい」
リリスがそう言って二人に近づく。
セイルがルシェに優しく手を握られる。
リリスもヴェインの手を優しく握った。
((キター!!))
セイルとヴェインは心の中でガッツポーズをした。
すると甘い香りが漂い始めリリスとルシェは体を密着させ耳元でささやく。
「ねぇ、教えて?ここでヴォルグが消された時にいたあと一人は誰?」
リリスがヴォルグの後ろから抱きつきそう言った。
「あ、あの時は俺たち二人とレイがいました。」
虚な目をしたヴェインが答える。
「ねぇ、あなたが見たのも同じなのセイルさん」
ルシェもセイルに体をすり寄せ尋ねる。
「はい、あの時にいたのは俺たちとレイでした」
(…あの無属性の?じゃあヴォルグを消したのはこの二人のどちらかかもしくは二人って事になるのかしら?ヴォルグほどの者がこの二人に倒されるとは思えないんだけど)
リリスはそう思い、続けて聞く
「ねぇ、ヴォルグを倒したのは、あなたたち二人かどちらか?」
(ここで殺してしまうか生け贄にするか…)
「「…レイ」」
二人の口からそう聞こえてきた。
「えっあの無属性の?何かの間違いないじゃなくて?」
ルシェが聞いた。
「そうです」
セイルが言った。
(彼が倒したように見えたのか見せられたのか。どちらにしろ無属性には無理だ)
「これはちょっと想定外ね。本人に確かめるしかないわね」
「そうですね、リリス様。何か見間違いかも知れないですし」
「今日はここまでね」
二人の姿が消える。
「あれ?俺たちここで何してるんだったっけ?」
「…新しい必殺技でも考えてたんだっけ?」
--翌日
講義室。
「少しお話があるんですけどお付き合い願いできないかしら?」
リリスがレイに話しかける。
「きみはリリスだった?そっちのきみはルシェであってる?あんまり話した事ないけどここではできない話?」
「はい、少し…」
移動。
例のヴォルグが消された学園裏手。
相変わらず人の気配はない。
リリスとルシェはレイの手を片方ずつ握る。
「おっとこれは二人からの愛の告白かな?
俺は二人とも全然いけるけど!」
「はい、実は私たち二人とも…」
ルシェが体を寄せてレイの体に密着させる。
リリスも同じくレイに体を密着させる。
周りに甘い香りがたちこめる。
「あなたのお友だちたちからここでヴォルグが倒されたときお二人とあなたがいたと聞きました。誰がヴォルグを倒されたのですか?」
「……あの時、俺はあいつらとここにいた。だけど誰がヴォルグをやったかはわからない。」
(誰がやったかわからない?どう言う事、こいつらの死角からヴォルグをやった誰かが別にいるって事?)
「ちょっと!あなたたち、何やってるの!?」
そこに現れたのはミオだった。
「少しレイさんとお話しをしていただけですよ。もう終わりましたので行きますね。さ、ルシェ行きましょう」
「えぇ」
(このミオって子強い。いきなり現れたし、まさかこの子がヴォルグを?それにしても、さっき魅了、レイに効いていたわよね…)
「ちょっとレイ大丈夫?何もされてない?」
「あぁ何もされてないよ」
(もうミオ姉、いいところだったのに!)
ーー後日
学園の人気のない裏庭。
「何?……こんどは私を呼び出し?」
ミオは腕を組んで立っていた。
(嫌な予感しかしないわね)
リリスとルシェが姿を現す。
「随分堂々としてるのね」
ミオが冷たく言う。
「あなたたち、ただの生徒じゃないでしょ」
リリスはくすっと笑う。
「鋭いわね」
一歩、近づく。
「だから話がしたかったの」
次の瞬間。
ふわりと。
甘い香り。
空気が変わる。
「……っ」
「私たちの魅了は男も女も関係ない」
「さぁ私たちに体をゆだねなさい」
ミオの視界がわずかに揺れる。
(……来た)
警戒。
だが――
「魅了」
リリスが囁く。
「それも――」
ルシェが重ねる。
「…魅了」
魅了の重ねがけ。
重なる魔力。
逃げ場はない。
ミオの意識が一瞬にして沈む。
「あっ……いやっ」
膝がわずかに揺れる。
(……まずい)
耐える。
だが。
ピタッ
止まる。
瞳が、わずかに緩む。
完全ではない。
だが――
かかっている。
「いい子ね」
リリスが近づく。
「少しだけ答えて」
耳元で囁く。
「ここ最近、異常な魔力を感じたことは?」
ミオの口が動く。
「……ある」
短く答える。
リリスの目が光る。
「どこで?」
「……森」
「誰?」
一瞬。
わずかな抵抗。
だが。
「……分からない」
本音。
ミオは何も知らない。
(……?)
リリスが眉をひそめる。
(嘘じゃない)
ルシェが口を開く。
「じゃあ質問を変えるね」
「強いと思う人物は?」
ミオの呼吸が乱れる。
「……レイ」
その名が出る。
空気が止まる。
(……やっぱり)
リリスの思考が加速する。
だが。
まだ断定はしない。
「どう強いの?」
「……分からない」
「でも……」
わずかに眉が寄る。
「……違う」
(違う?)
「何が違うの?」
ミオの瞳が揺れる。
「あの子、何か…隠してる」
その言葉。
核心に近い。
だが次の瞬間。
ビキッ
ミオの指が強く握られる。
「……っ!」
意識が浮上する。
「……それ以上は、答えない」
低い声。
完全に戻りきってはいない。
だが。
抵抗が始まる
リリスが一歩引く。
「へぇ……」
興味が増す。
「完全に落ちないのね」
「さすが」
小さく笑う。
ルシェが囁く。
「これ以上は無理に引き出すと壊れます」
「そうね」
リリスは納得する。
「十分よ」
リリスとルシェの背後に誰かが立った。
「はっ!」
リリスが振り返る。
レイだ。
魅了がきれ少し無理な抵抗をしたためかミオが意識を失い倒れかかる。
レイが二人の視界から消えた。
「はっ?」
「嘘でしょ」
ルシェとリリスは驚きを隠せない。
二人を境に反対側にいた崩れ落ちそうになったミオを抱き抱えた。
「俺は他が何をしてようとそんなに気にしない。
けど、俺の身内に手を出したらダメだ。
この前のあいつもそうだった」
「あいつってヴォルグの事!?
あんたみたいな無属性のやつにやられたって?」
ルシェがレイに聞く。
「ルシェ、もう一度二人でこの男に魅了やかけて確かめるわよ!」
「はい、リリス様」
ルシェとリリスがレイにまとわりつく。
「さぁレイ、あなたも気持ちよくなって私たちに身を委ねなさい。そして、ヴォルグを倒したのはあなたなの。」
「はぁ…しょうがないな。そうだよ、あいつを倒したのは俺。同志を襲ったからな」
リリスは違和感を感じていた。
(魅了ちゃんとかかってる?いや、かかりにくいとは言え魔族の頂点我が冥府十王でさえかかる。私たちの魔力でかからない者なんて…そんなの存在したら…)
「お前か!お前がヴォルグを殺したのかぁぁぁぁ!!!
お前も地獄に落としてやる!」
「来るなら容赦はしないがいいか?」
ルシェに言った。
それでも、
ルシェがレイを襲う!
(もし、もし…魅了にかからないような者だったなら…とても私たちの手には負えない!)
「だめ!ルシェ!止まって!!」
「地獄に堕ちろー!!ーーデモンズ・ペイン!」
レイは剣を取り出しルシェの前で交差する。
そして、
暗黒な炎がルシェを包み込み蝕んでいく。
「何、これ?…いや、わたしも死ぬの?…いやぁぁぁ!」
(…何……あの黒い邪悪な炎……あんなの…まるで…魔王…)
「お前も死に急ぐか」
「…いえ、わたしには勝ち目はないわ…」
--冥府十王召集
魔族たちが集まる。
その中心にリリスはいた。
「ヴォルグを倒したの者を探している最中にルシェも正体不明のものにやられてしまいました」
「また部下を一人失ったのか」
「だから魅了しか使えないような…」
「サキュバス如きには無理だったんだよ」
魔族たちが言いたいようにわめきちらす。
リリスが唇を噛む…
(言わしておいてやる、だがわたしたちが命がけで手に入れた情報は絶対にやらない!)
ヴォルグもルシェもお気に入りではあったんですが(泣)




