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魔族のたくらみ

あとは俺に…

森の奥。


静寂。


だが、その空気は明らかにおかしかった。


黒十華が調査をしていた。


魔獣の強化個体が出現し始めた。


それと同時期に魔力の多い学生の失踪事件が増え始めた。


「……まだ魔獣の匂いが残ってる」


 ニアが低く呟く。


  尻尾がゆっくりと揺れる。


「追うわよ」


 エフィリアの一声で、全員が動いた。


 その少し前――


「終わったな」


 カインは剣を払った。


 最後の強化ゴブリンが、音もなく崩れ落ちる。


 セラはまだ呆然としていた。


「……本当に、一瞬ですね」


「数が多いだけでなんて事はない」


 淡々と答える。


 だが、その視線は森の奥を見ていた。


(……まだ何かいる。だがセラには荷が重いな)


「帰るぞ」


「えっ?もうですか?」


「これ以上は危険だ」


「でも――」


「指示は?」


「……従います」


 素直に頷くセラ。


(いい判断だ)


 二人がその場を離れた。


 その直後、


 風が変わる。


 セフィラが足を止めた。


 その先。


 まだ温もりの残る死体。


「……全滅してる」


 リズがしゃがみ込む。


「しかも――」


 指で傷口をなぞる。


「全部一撃」


「早すぎる」


 セフィラが周囲を見渡す。


「ついさっきまで、ここにいたはず」


「にゃ……この匂い」


 ニアが目を細める。


「主様の匂いにゃ!

 それとなんか女の匂いが…」


「ふふ……」


 ルナが楽しそうに笑う。


「間違いない、主様の仕業だね」


 エルフィがくるっと回る。


「また先越されたじゃん」


「ズルくない?」


「ズルではないわ」


 エフィリアが静かに言う。


「主様は常に最短で結果を出される」


「でもさー」


 クロエが肩をすくめる。


「今回はちょっと雑じゃない?」


 その言葉に、全員の視線が地面へ向く。


 焼け跡。


 斬撃痕。


「……処理しきれてない?」


 リズが呟く。


「いや、違う」


 目を細める。


「“何か残ってる”」


 わずかに残る黒い魔力。


 ルピナが首をかしげる。


 エフィリアは答えなかった。


 ただ、静かに周囲を見渡す。


「警戒を」


 一言だけ告げる。


 その瞬間――


 ゴブリンが木々の陰から出てくる。


 やはり強化個体。


 黒い靄に包まれ、ゆっくりと向かってくる。


「いっぱい来たねー!」


 エルフィが言う。


「みなさんの強化をします!」


 セフィラが声を低く言う。


 そして、リズが言う。


「“やっぱりこいつら操作されてる”」


 その瞬間。


 森の奥で、何かが“笑った”。


 ピタリと、全員の動きが止まる。


「……いるわね」


 クロエが斧を構える。


「やっと出てきたか」


 エフィリアは剣を抜いた。


「黒十華――」


 静かに、告げる。


「戦闘態勢、

 お仕置きの時間よ!」


「「「お仕置きの時間だー!!」」」


その頃。


森の奥では、


大量の魔獣が蠢いていた。


黒い靄に包まれた異形の群れ。


その中心に、ヴォルグが立っている。


「いい感じに仕上がってきたな」


手をかざす。


魔力が流れ込む。


魔獣の目がさらに濁る。


「このまま突っ込ませりゃ――」


ニヤリと笑う。


「面白いことになる」


だが。


次の瞬間、


空気が変わった。


「……あ?」


ヴォルグの眉が動く。


遠くの魔獣の気配が消えていく。


ズバッ


一匹。


また一匹。


音もなく、魔獣が崩れていく。


「は?」


魔獣が――消えていく。


「なんだ……?」


気配を探る。


だが、見えない。


感じない。


ただ――


確実に、“何か”がいる。


数分後。


そこに残っていたのは――


魔獣の死体のみだった。


「……くそ!……ふざけるな」


ヴォルグの顔から笑みが消えその場からあわてて離れた。



翌日、


リベルタ中央魔導学院――Aクラス。


整然とした教室の中で、三人の生徒が並んでいた。


「……順調ね」


リリスが小さく微笑む。


長い髪を指で弄びながら、窓の外を眺めていた。


「ええ」


ルシェが静かに頷く。


「対象は想定以上に集まっています。魔力の質も申し分ありません」


「ふふ……」


リリスは楽しそうに笑う。


「やっぱり、学園は効率がいいわね」


その少し後ろ。


一人の男が、不機嫌そうに机に肘をついていた。


「ちっ……面倒な場所だな」


ヴォルグ。


今回の実験担当。


「まぁいい」


口元を歪める。


「もうすぐ終わる、だが気がかりな事がある。

 昨日の実験中に魔獣が全滅させられた。

 ここいらの種族どもにそんなマネできるとは思えね

 ぇ」


「そんなバカな。普通の魔獣ならともかく操作された強

 化個体よ?そんなはず…」


ルシェが言った。


「実際やられちまったんだ、仕方ないだろう!」


ヴォルグが言う。


「計画は実行するわ。魔獣はいくらでもいる。強化魔獣

 の群れに学園を襲わせてその隙にめぼしい学生たちを

 さらうのよ。そんな毎回、魔獣もやられないわ

 早速実行するわよ。」


 リリスがそう言って手をひらひらさせた。


 三人は立ち上がり講義室を出て行った。


 学園裏。


 全く人の気配がない。


 ヴォルグはここにいた。


 強化魔獣を呼びよせる魔法陣を描き、


 そして呪文を唱えた。


 辺りの様子が変わる。


 薄暗く、そして澱んだ魔力が漂う。


 強化された魔獣の群れが周りの森から集まり学園へ向かう。


 ルシェとリリスは学園屋上からそれを見ていた。


「これだけの強化魔獣が学園を襲ってきたら…

ワクワクしますねリリス様。」


「ええ、そうね。魔獣たちが学園に侵入したら私たちも

 動きだすわよ。」


「はい、リリスさ……えっなんですか、あれ」


「何あれ、どこから湧いて出てきたっていうの!?」


 強化魔獣が黒い衣を纏った軍団に一匹、また一匹と倒されていく。


 黒い衣を纏った軍団が魔獣を圧倒し殲滅する。


「あいつら何者?どこから来たの?一匹たりとも町にす

 ら届かないじゃない!もう、なんなの!?」


 リリスは苛立ちを隠せずにいた。


 再び学園裏、


 「……やっぱりあいつ何かやってるな」


 ヴェインが低く呟く。


 視線の先には、


 一人の男――ヴォルグ。


「不用意に近づくな」


 セイルが静かに制止する。


 ヴォルグが講義室を抜け出しそれを怪しんだセイルとヴェインが後をつけたのだ。


 だが。


「見てたな」


 低い声。


 空気が凍る。


「……っ」


(見つかった)


 ヴェインの背筋に冷たいものが走る。


「こそこそと抜け出して何をやってるんだ。」


「お前たちが知る必要はない。もうすぐ終わる。

 あーせっかくだからお前たちに楽しませてもらうか、

 仮にもAクラスだもんな。」


次の瞬間。


ヴォルグの体が歪む。


 皮膚が裂ける。


 黒い魔力が溢れ出す。


 完全な魔族の姿が現れた。


「消えろ」


「――!?」


 気づいた時には、目の前にいた。


 ガンッ!!


 セイルが防御魔法を展開する。


 だが――


 砕ける。


「うそだろ……!」


 ヴェインの声が震える。


「右眼が……」


 セイルが呟く。


「右手が……疼く……!」


 相手は魔族。


 震えが止まらない。


 立っているのがやっとだ。


「……くそっ!」


 ヴェインが魔法を放つ。


 氷。


 雷。


 連続で叩き込む。


 だが――


 届かない。


「効いてねぇ……!」


 ヴォルグが腕を振るう。


 ドンッ!!


 吹き飛ぶ。


「がはっ……!」


 地面に叩きつけられる。


 呼吸が乱れる。


 視界が揺れる。


 涙が溢れる。


(……無理だ)


(勝てない)


 それでも。


「……まだだ……!」


 セイルが立ち上がる。


 足が震える。


「ここで……終われるか……!」


ヴェインも、涙を滲ませながら笑う。


「……右手が疼いてんだよ……!!」


「……だから、戦うしかねぇだろ!!」


 声が震え泣きながら言う。


 前に出る。


 …その時。


「もう大丈夫だ」


 静かな声、


 二人の前に一人姿を現した。


「……レイ?」


 ヴェインが目を見開く。


 振り返らない。


「よくがんばった」


 一歩、前へ。


「あとは…」


 わずかに顔を傾ける。


「俺に任せておけ」


「でも……お前、無属性……」


 セイルの声がかすれる。


 レイは、わずかに笑った。


「言っただろ」


 一歩。


 踏み出す。


「お前らの右眼と右手が疼く時――」


 振り返る。


「覚醒するってな」


 その瞬間。


 空気が変わる。


「……なんだ、お前は……!」


 ヴォルグの顔が歪む。


 レイは答えない。


 ただ。


 踏み込む。


 次の瞬間。


 炎と闇の剣が交差する。


「ーー双極断デュアル・ブレイク


「なんだ、大見えきってこんなものか!くくくくっ」


「ーー黒焔侵蝕アビス・ブレイズ


ボウッ!!


突如、交差した傷跡から暗黒の炎が上がりヴォルグの体を蝕み始める。


「逃げ場はない。ただ絶望して消えろ」


「がああああ、体が…痛い、痛い、痛い!!

 助けてくれ!!がああぁぁぁぁぁ……」


ヴォルグの体が、蝕まれ燃え尽きていった。


「……は?」


 遅れて、理解が追いつく。


 魔族相手に一撃。


 それだけだった。


「終わりだ」


 レイは静かに剣を払った。


 後ろでは、


「……はは……」


 ヴェインが力なく笑う。


「…なんだよ……それ……」


「…かっこよすぎだろ……」


 セイルは涙を流し、ただ無言でレイを見ていた。


 それ以上、言葉は出なかった。


ーー


 リリスはこの事態について、報告に来ていた。


 暗闇。


 玉座。


 冷たい空間。


 魔族たちが並ぶ。


 その中央。


 リリスが跪いていた。


「……報告は以上です」


 沈黙。


 そして。


「はい。ヴォルグは現場で……」


「やられたんだろ?」


 笑いが漏れる。


「くく……」


「やはり、サキュバス如きには荷が重かったな」


 別の魔族が嘲る。


「遊び半分でやるからそうなる」


「実験?笑わせるな」


 リリスは、何も言わない。


 ただ。


 指先が、わずかに震えていた。


(……違う)


 あれは。


 ただの失敗じゃない。


(あの何者かたち…)


 思い出す。


 見えなかった。


 感じられなかった。


 それでも――


 確かに、そこにいた。


「……次は」


 小さく、呟く。


 顔を上げる。


 その瞳には、先ほどまでとは違う光が宿っていた。


「私が直接、確かめるわ」


 空気が変わる。


 周囲の魔族たちの笑みが、わずかに止まる。


「……ほう?」


「今度は逃げるなよ、リリス」


「ええ」


 ゆっくりと、立ち上がる。


「逃げるつもりなんて――」


 口元が歪み唇をかむ。


「最初からないわ」

今回、最高にかっこいいレイだと思います。

次回をお楽しみに。

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