ギルドマスター
第41話更新です。
ユノベル郊外。
人気のない森の奥、わずかに開けた場所。
そこに――黒十華は集まっていた。
「……異常ですね」
セフィラが静かに呟く。
地面には巨大なボアの死体。
だが、その体からは黒い靄のようなものがわずかに漂っていた。
「普通の魔獣じゃないわね」
リズがしゃがみ込み、指先に魔力を纏わせて触れる。
「魔力の質が歪んでる……誰かが操ってる」
「めんどくさそー」
エルフィが軽く肩をすくめる。
「でもさ、これって主様がやってる“裏の動き”とは違うよね?」
「当然です」
即答したのはエフィリアだった。
その声には一切の迷いがない。
「主様は、このような無秩序な増殖を良しとする方ではないわ」
「だよねー」
エルフィはあっさり納得する。
「じゃあ誰がやってんの?」
「……不明です」
セフィラが森の奥を見据える。
「ですが、意図的なものなのは間違いありません」
「にゃ……これ、嫌な感じする」
ニアが尻尾をゆらりと揺らす。
「本能が危険って言ってる?」
ルピナが優しく問いかける。
「うん……なんか、奥にもっといる」
「へぇ」
クロエが大きな斧を肩に担ぎ、口角を上げる。
「じゃあ叩き潰しに行くか?」
「待ちなさい」
エフィリアの一声で場が止まる。
「今回は討伐が目的ではないわ」
「調査を優先します」
「えー、つまんないの」
エルフィが頬を膨らませる。
「でもさー」
その時、ルナがくすりと笑った。
「もう“動いちゃってる人”いるよね?」
その言葉に、何人かが視線を向ける。
少し離れた場所。
そこには、明らかに“別の戦闘痕”があった。
ボアの死体が転がっている。
だが――
「……綺麗すぎる」
セフィラが目を細める。
「一撃で仕留められてる」
「しかも全部急所」
リズが静かに呟く。
「ふふっ」
ルナが楽しそうに笑う。
「主様だ」
その一言で、全員の表情がわずかに変わる。
「……やはり来ていたのね」
エフィリアの声は、どこか嬉しそうだった。
「ならば、この件は」
「主様の意向に沿う形で動きます」
「つまり?」
クロエがニヤリとする。
「邪魔するやつは――排除でいいのね?」
「必要と判断した場合のみです」
「でもまぁ」
エルフィが軽く回りながら言う。
「レイ様の邪魔するやつとかさ」
ニコッと笑った。
「全部ぶっ壊せばいいよね?」
その言葉に、誰も否定しなかった。
風が吹く。
黒い気配が、森の奥で蠢いている。
それを見据えながら――
エフィリアは静かに告げた。
「黒十華、任務を開始します」
ーーー
カインはリベルタのギルドにいた。
重厚な扉の前で足を止める。
「こちらへどうぞ」
受付嬢に促され中へ入ると、そこには一人の男がいた。
年は四十手前ほどだろうか、鋭い目つきでこちらを見ている。
「お前がカインか」
「あぁ、そうだ」
「俺はここのギルドマスターのアルベリオだ。」
机の上には先程持ち込んだグレートボアの一部が置かれていた。
アルベリオはそれを手に取り、しばらく黙って眺める。
そして、ぽつりと呟いた。
「……一撃だな、それも迷いがねぇ」
「.......」
「急所を正確に貫いている。無駄な傷が一切ない」
鋭い視線がカインを射抜く。
「普通のFランクじゃあり得ねぇ」
「運が良かったんだろ?」
「それで片付く話なら楽なんだがな」
「Fランクがラッキーでグレートボアを倒せるわけがねぇ。」
アルベリオは小さくため息をついた。
「最近、この辺りの魔獣が妙なんだ」
「妙?」
「数が増えてるだけじゃねぇ。動きも、力も……明らかにおかしい」
机に置かれたグレートボアを軽く叩く。
「こいつもそうだ。本来この辺りに出るサイズじゃねぇ」
カインは黙って聞いていた。
「そこでだ」
アルベリオは身を乗り出す。
「お前、ランクを上げる気はあるか?」
「ないな」
即答だった。
「……理由を聞いてもいいか?」
「目立つのは好きじゃない」
「はっ、随分と変わったやつだな」
アルベリオは苦笑する。
「だが、その実力を埋もれさせるのはもったいねぇ」
「必要になったらその時考えるさ」
「そうかだが、Fランクでグレートボアを倒しちまうのはどう考えてもおかしい。最低でもCランクだ。お前の腕はそれ以上あると俺は確信している。せめてCランクにはあげさしてもらう。」
アルベリオは椅子にもたれた。
「それでだ、一つだけ頼みがある」
「なんだ?」
「この周辺で何か気づいたことがあれば報告してくれ」
「気が向いたらな」
「それで十分だ」
話は終わりらしい。
部屋を出ようとしたその時――
バンッ!!
勢いよく扉が開いた。
「カインさん!!」
飛び込んできたのはセラだった。
「やっぱりここにいました!」
「どうした?」
「どうしたじゃないです!あの強さなんなんですか!?グレートボアって聞いてびっくりしましたよ!」
「たまたまだ」
「たまたまであんなことになりますか!?」
アルベリオがニヤリと笑う。
「ほぉ、嬢ちゃん知り合いか」
「はい!今日一緒にクエスト受けたんです!」
「一緒ではないがな」
「細かいことはいいんです!」
セラはずいっと距離を詰めてくる。
「カインさん!やっぱりパーティ組みましょう!」
「断る」
「なんでですか!?」
「一人の方が楽だからだ」
「そんなぁ……」
あからさまに落ち込むセラ。
だが次の瞬間には顔を上げていた。
「じゃあ、また一緒にクエスト受けてください!」
「機会があればな」
「絶対ですよ!?」
「約束ですからね!」
「……善処する」
アルベリオはその様子を面白そうに眺めていた。
「賑やかでいいじゃねぇか」
「他人事だと思って」
カインは小さくため息をついた。
(……やはり面倒なことになってきたな)
ここまで読んでいただきありがとうございます!
引き続き更新頑張っていきたいと思います。
よろしくお願いします!




