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俺が魔王じゃなければ誰が魔王だというんだ〜無属性と判定された王子と黒き薔薇のメイドたち〜  作者: 黒華レン
ルーヴェン王国

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錆びついた町ラスティア

第33話更新です。

 ユノベルへ向かう街道。


 ミオ姉はどうやら帰るつもりがないらしい。


 ついて来てどうするつもりなのか聞いてみたところ――


「リベルタ中央魔導学院に通うわ」


 と、当然のように言われた。


「どうやって入るの?」


「考えてない」


「考えてないんかい!」


 仕方ない。


 アルベルト王にミオ姉の無事を伝えるついでに、学院の件も頼んでみるか。


 確か、一人か二人くらいならねじ込んでやると言われていたはずだ。


「ところでミオ姉、住む場所はどうするの?」


「そんなの、あんたのところに決まってるじゃない」


「ん?」


「だって、あんなハレンチなメイドたちと一緒なのよ!」


「ハレンチって……」


「何かあったらどうするの!」


「何かって何?」


「それとも、私がいないところでイチャイチャしたかった?」


「いやいや、そもそも何もないってー」


 多分、そう言うだろうとは思っていた。


 だから一応聞いただけだ。


(まぁしょうがないか。俺の活動だけバレないようにすればいいし)


 そんな話をしていると、ミリエルが荷物の確認をしながら口を開いた。


「そろそろ補給をした方がよさそうですね」


「食料も少し減ってきています」


 続けてルピナが地図を広げる。


「近い町でしたら、ラスティアがあります」


「ラスティア?」


「はい。海からもそう遠くないので、海産物も手に入ると思います」


「じゃあ、そこで補給と休憩にしようか」


「賛成です」


 目的地をラスティアへ変更する。


 その道中。


 レイは自分の水晶を使い、アルベルト王へミオ姉の無事を伝えた。


 当然、かなり怒られた。


 主にミオ姉が。


 だが、これで城中を騒がせていた王女失踪事件も無事解決。


 リベルタ中央魔導学院の件についても、理事長へ話を通してくれることになった。


「ほら、なんとかなったじゃない」


「なんとかしたの俺だからね?」


「細かいことは気にしないの」


「細かくないって」


 そんなやり取りをしているうちに――


 ラスティアへ到着した。


 町の入口。


「……ここ?」


 レイは少し首を傾げた。


 入口には、かつて町の名前が書かれていたであろう看板が立っている。


 だが文字は擦れ、ほとんど読めなくなっていた。


 町の中には人がいる。


 店もある。


 建物もちゃんと残っている。


 なのに――


「なんか……活気ないね」


「そうね」


 エフィリアも町を見回す。


 ラスティアは、かつて貿易の中継地点として多くの商人が行き交った町らしい。


 だが今は、その面影がほとんど感じられない。


 市場へ向かってみる。


 店は出ている。


 しかし数が少ない。


 人通りもまばら。


「ここで必要なものを揃えるしかないですね」


 ミリエルが言う。


「うん」


 いくつかの店を回る。


 だが――


「高っ!」


 レイが思わず声を上げた。


 野菜、干し肉、飲み水、日用品。


 何もかもが高い。


「これ、相場よりかなり高いですね」


 ルピナも値札を見ながら眉をひそめる。


「どうしたんだ、この町……」


 結局、最低限のものだけを購入した。


 昼、レイたちは近くの飲食店へ入った。


 店内は古びている。


 客もほとんどいない。


「メニュー少ないね」


「それに高いにゃ」


 ニアがメニュー表を覗き込む。


「仕方ない。何か食べよう」


 レイは肉料理を注文した。


 しばらくして料理が運ばれてくる。


 食べられないことはない。


 だが――


「……うーん」


 まずくはない。


 しかし、おいしくもない。


 すると店主らしき男が、申し訳なさそうに笑った。


「旅の人たちかね。悪いね、こんなものしか出せなくて」


「昔はこんなんじゃなかったんだけどねぇ」


「どうしたっていうの、この町は?」


 エフィリアが尋ねる。


 店主の表情が曇った。


「ドン・ボッタクーレって商会が来てからさ」


「……またその名前」


 ルピナが小さく呟く。


「ここら一帯の店や倉庫を、買い占めだの乗っ取りだので支配しちまったのさ」


「そのうえ、ここで商売したけりゃ金を払えってな」


「高額な金を取っていきやがる」


 店主はため息をつく。


「逆らえば仕入れを止められる。商品も回ってこなくなる」


「それでこの有様さ」


「……なるほど」


「悪いね。旅の人にまで愚痴を聞かせちまって」


「いや、いいよ」


 レイは席を立つ。


「ごちそうさま」


 店を出る。


 ドン・ボッタクーレ。


 またしても、その名前が出てきた。


 その後。


 宿を探した。


 だが、営業している宿は数軒しかない。


「どこも似たような感じですね」


「じゃあ、ここでいいか」


 一軒の宿へ入る。


 その直後――


 ドンッ!!


「きゃあっ!」


 奥から悲鳴が聞こえた。


「お願いです、やめてください!」


「やめてほしかったら金を出せって言ってるだろ!」


「今月分はもうお支払いしました!」


「だから足らねぇって言ってんだよ!」


 見ると、数人のごろつきが宿の女主人を囲んでいた。


 一人がナイフを取り出す。


「出せないなら別のもんで払ってもらおうか?」


 その瞬間。


「ちょっと!」


 ミオ姉が前へ出ようとする。


「ミオ姉」


「なによ!」


「待って」


 レイが軽く手で制した。


 そして――


「リズ」


「はいはい」


 リズが指先を向ける。


「もえろ」


 ボッ!!


「うわっ!?」


 ごろつきたちの持っていたナイフが一瞬で真っ赤に熱せられる。


「あちゃちゃちゃちゃ!!」


「熱っ!熱ぃぃ!!」


 ナイフを投げ捨てる。


「なんだテメェらは!」


 ごろつきが振り返る。


 だが――


「うるさいにゃ」


 ニアがいつの間にか背後へ回っていた。


 鉤爪が首元へ突きつけられる。


 反対側。


「動かない方がいいよー?」


 エルフィも別の男の首へ短剣を当てる。


「ひっ……」


 そして正面。


 リーダーらしき男の首元に、冷たい剣先が触れた。


 エフィリアだった。


「こんな事で命を落としたくないでしょう?」


 耳元で静かに囁く。


「ひ、ひぃっ!」


「わかったら、さっさと帰って」


「わ、分かった!」


「もう来ないでね」


「はいぃぃ!!」


 ごろつきたちは慌てて宿から逃げ出していった。


「ありがとうございます……!」


 女主人が深く頭を下げる。


「いつもあんな調子で、お金を持っていかれてしまって……」


「大丈夫?」


「はい……本当に助かりました」


 女主人は少し落ち着いた後、尋ねた。


「今日はご宿泊でしょうか?」


「うん」


 どこへ行っても事情は同じだろう。


 レイたちはその宿へ泊まることにした。


 夕方、ルクスとノワールの散歩も兼ねて、町を歩くことにした。


 錆びついた看板。


 閉ざされた店。


 人気のない倉庫。


「本当に元気ない町だよね」


 レイが呟く。


「昔はもっと栄えていたのでしょうね」


 ルピナが町並みを見渡す。


 その時。


 ルクスとノワールが同時に足を止めた。


「ん?」


「グルルル……」


「ワフッ……」


 二体は、ある古びた倉庫を睨んでいる。


「どうした?」


 レイが近づく。


 ルクスとノワールは低く唸ったまま動かない。


 明らかに何かを警戒していた。


「……」


 ルピナも表情を変える。


 倉庫の前まで歩き、しゃがみ込む。


 そして地面へ指を触れた。


「……これは」


「どうした?」


 指先には――


 白い粉が付着していた。


 ルピナの目が細くなる。


(この質感……この匂い……間違いない。あの麻薬と同じ。でもこれは、あの倉庫の中にあるのだとしたら流通している量じゃない。ここに大量に集めている……?)


「ルピナ?」


「いえ」


 ルピナは立ち上がる。


 そしてルクスとノワールを見る。


(まさか主様は、このために二匹を連れてきたの?匂いを追わせれば、通常では見つけられない保管場所まで辿れる……)


 少しだけ微笑む。


「さすが主様です」


「え?」


「このためにルクスとノワールを連れてこられたのですね」


「…………」


 レイは二匹を見る。


 次にルピナを見る。


(何の話?)


「やはり主様は、先を見ておられる」


「あ、あぁ。そうだ」


 何のことか全く分からなかった。


 だが――


 なんとなく頷いておいた。


(威厳は大事だよね、うん)


 その夜、宿へ戻ったレイはベッドへ横になる。


「今日は疲れたな……」


 目を閉じる。


 ラスティア。


 ドン・ボッタクーレ商会。


 そして謎の倉庫。


 町に渦巻く異変に気づかないまま――


 レイはそのまま眠りについた。

ここまで読んで頂いてありがとうございます。

これからも更新がんばっていきたいと思います。

よろしくお願いします。

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