俺が魔王じゃなければ誰が魔王だというんだ!
俺が魔王じゃなければ誰が魔王だというんだ!!
タイトル回収ですw
魔力測定を終え、自室へ戻ったレイは一人で考え込んでいた。
「……おかしい、なんでだ?」
ベッドに腰掛け、自分の手のひらを見つめる。
魔力測定の結果は――無属性。
しかも前例がないという。
だが、レイには魔法が使える。
試しに指先へ意識を集中させる。
ボッ――
小さな炎が灯った。
それを消し、今度は魔力の性質を変化させる。
指先を漆黒の魔力が覆った。
「やっぱり使えるよな……」
炎、そして闇。
属性がないと言われたにもかかわらず、二つの異なる性質を扱うことができる。
さらに――
炎と闇を交わらせる。
指先には黒い炎が揺れる。
そして、レイは自分の内側へ意識を向けた。
そこに存在する、底が見えないほどの膨大な魔力。
測定の際は極限まで抑え込んだため、魔力量そのものはごく僅かと判定された。
しかし、本来の魔力量はまるで違う。
少し気を抜いただけで、部屋中の家具が揺れ始めるほどだ。
(この膨大な魔力……)
レイは腕を組む。
(そして、前例のない無属性)
さらにもう一つ。
(最近見るようになった、あの夢……)
魔王……
魔王と戦う剣士たち。
夢の中の彼らは、とてつもなく強かった。
だが――
(あの剣士たちも強かったけど、これほどの魔力は持ってなかった…よな)
夢なので、はっきりと覚えているわけではない。
それでも、なぜかそんな感覚だけは残っている。
そして現在、この世界に魔王はいない。
少なくとも、レイはそう教えられて育ち世界もそうなっている。
魔王の事を口にするものは誰一人いない。
「……」
そしてレイの中で、一つ一つの情報が繋がっていく。
膨大な魔力。
前例のない無属性。
炎と闇へ変化する魔力。
繰り返し見る魔王の夢。
そして――魔王が存在しない現在の世界。
「………まさか」
一つの可能性が頭をよぎった。
いや、
待て、
いくらなんでも突拍子がなさすぎる。
(いやでも……)
偶然で片付けるには、出来すぎている。
レイは立ち上がった。
「やっぱ……魔王って俺だよね?」
誰もいない部屋に、その言葉だけが響く。
「……」
言ってみると、妙にしっくりきた。
(いやいや……待て待て)
もう一度考える。
しかし考えれば考えるほど、疑惑は深まっていく。
(この膨大な魔力を持っていて、前例のない無属性。しかも炎と闇まで使える)
おまけにいるはずのない魔王の夢まで見る。
(これで何も関係ありませんって方が無理があるんじゃないか?)
そして今の世界には、魔王がいない。
それは――
「俺が…魔王だから、か」
レイは目を見開いた。
ゆっくりと立ち上がる。
––そうだ、
「俺が魔王じゃなければ誰が魔王だっていうんだ!」
ついに答えへ辿り着いた。
(そうだ。魔王以外ないじゃないか!)
全身から力が抜け、レイは再びベッドへ腰を下ろした。
「まさか俺が魔王だったとは……」
十五歳の誕生日。
自分でも知らなかった、とんでもない事実を知ってしまった。
「でも……なんで人間なんだ?」
レイは自分の身体を見る。
角はない、翼もない、尻尾もない。
どう見ても普通の人間。
それどころか、ルーヴェン王国の第三王子として十五年間育ってきた。
(魔王が人間として生まれるなんてことあるのか?)
そこで再び、夢のことが頭に浮かぶ。
魔王と剣士の最後。
激突する炎と闇。
そして――
『ごめんなさい……』
こちらへ伸ばされた白い手。
(……もしかして)
一つの仮説が浮かんだ。
(あの戦いで魔王に何かが起きた。それで人間として生まれ変わった……?)
「転生……か?」
もちろん証拠などない。
だが――妙に納得できてしまう。
「なるほど……」
レイは一人で頷いた。
魔王はかつて何者かに倒された。
しかし完全には消滅せず、人間へと転生した。
その転生先こそが――自分。
(ああ、そういうことか……!)
レイの中では、すべての辻褄が合った。
実際には何一つ確定していないのだが、本人の中ではほぼ確定事項になりつつあった。
だが、一つ大きな問題がある。
「……これ、周りにバレたらどうなるんだ?」
レイは想像する。
夢に見た魔王の「必ず支配してやる」と言う言葉を思い出す。
自分が人々の前へ立ち、高らかに宣言する姿。
『俺は魔王だ!この力でお前たちを支配してやるわ!』
『なんだと、魔王だと!?』
『捕らえろ!』
『王国中の兵を集めろ!』
『危険な存在だ!今すぐ討伐しろ!』
「……だよな」
ろくな未来が見えない。
魔王と知られれば、当然ながら危険視される。
人間だけではない。
エルフや獣人。
その他の種族からも敵と見なされるかもしれない。
あるいは――
(捕まえて研究しようとする奴も出てくるかもしれないな)
もっとも、レイは自分の中にある魔力を感じる。
それらすべてを力で跳ね除けることは、おそらくできるだろう。
少なくとも、今のレイはそう思っていた。
(でも……)
そこで考える。
仮に、力ですべてをねじ伏せたとして…
国を滅ぼして。
敵対する者を倒して。
恐怖で人々を従わせて。
その先に何がある?
「……つまらないな」
レイは呟いた。
そんなことをしても、何も残らない。
ただ一人で世界の頂点に立ったところで、虚しいだけだ。
「だったら……」
別の方法がある。
魔王であることを隠したまま、人間として生きる。
そして――
人間、そして我が魔族、エルフ、獣人…
数多の種族、それを関係なく、自分が気に入った者を仲間へ引き入れていく。
表から世界を支配する必要などない。
誰にも正体を知られず。
誰にも気づかれない場所から。
少しずつ力を広げていく。
(……あれ?)
レイの口元が僅かに上がった。
(そっちの方が面白そうじゃない?)
世界を敵に回すより、遥かに楽しそうだ。
「よし!」
レイは勢いよく立ち上がった。
「魔王であることは隠す!」
誰もいない部屋で、一人宣言する。
「そして人間も魔族も関係なく仲間を集める!」
さらに拳を握る。
「表向きは今まで通り、ルーヴェン王国第三王子レイ・ルーヴェン」
そして――
「その裏では、魔王として世界を支配してやろうじゃないか!」
完璧。
レイは満足そうに頷いた。
(まずは仲間が必要だな)
こうして十五歳の誕生日。
前例のない無属性と判定された少年は――
誰にも知られることなく、自分が魔王であると確信した。
もちろん。
この時点で、それを知る者はレイ以外に誰一人としていなかった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
次のお話から素敵なメイドが登場します。




