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俺が魔王じゃなければ誰が魔王だというんだ〜無属性と判定された王子と黒き薔薇のメイドたち〜  作者: 黒華レン
ルーヴェン王国

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お仕置きの時間

第28話

お仕置きのじかんだぁぁぁぁぁぁぁ!!

 ユノベルの開発準備と、中立国家リベルタの事前調査を終えた黒十華こくじゅっかは、ルーヴェン王国へ戻っていた。


 今回の調査で分かったことは、ユノベルやリベルタの情勢だけではない。


 ルナのように、本来の姿を隠して人間の街に溶け込んでいる魔族が各地に存在している。


 もちろん、そのすべてが敵というわけではない。


 人間に善人と悪人がいるように、魔族にも善悪がある。


 だが――


 各地へ潜伏しているアビス・ローゼスから、気になる報告が次々と届き始めていた。


 世界各地で、不可解な動きが起こっている。


 その中心にあるのは――


 魔王。


 世界のどこかで力を失い、今も眠りについているとされる存在。


 本当に存在するのか。


 そもそも復活するのか。


 それすら分かっていない。


 確かな情報は何一つとしてないのである。


 にもかかわらず、魔王を崇拝する者たちが現れ始めていた。


 しかも魔族だけではない。


 人間。


 獣人。


 その他の種族。


 種族の垣根を越えて信奉者が増え、一部では宗教組織のような集団まで生まれ始めているという。


 そして――


 ルーヴェン王国内にも、その思想を持つ者たちは潜伏していた。


「この国の王は武闘派だ」


 薄暗い地下室。


 集まった者たちを前に、一人の魔族が口を開く。


「王子、王女も相応の実力を持つと聞いている」


「さらに先日、魔力測定を終えた第三王子についても、王家から火属性を持つと発表された」


 一人の男が拳を握り締めた。


「このまま放置すれば、いずれ復活なされる魔王様の障害となるのではないか?」


「その通りだ!」


「今のうちに排除するべきだ!」


「魔王様が復活される前に、危険の芽は摘んでおくべきだ!」


「おおー!!」


 声が響き渡る。


 そこにいるのは魔族だけではない。


 人間もいた。


 他種族の者もいる。


 共通しているのはただ一つ。


 まだ見ぬ魔王を信じ崇拝していること。


 こうして――


 魔族を中心とした精鋭部隊が組織された。


 標的はルーヴェン王国の王子、王女。


 暗殺計画が動き始める。


 そして、ある日の深夜。


 計画は実行された。


 闇に紛れた複数の影が城壁を越える。


 見張りの死角。


 巡回経路。


 警備が交代する僅かな時間。


 それらを事前に調べ上げていた侵入者たちは、城内への侵入に成功していた。


 同じ頃、レイの自室。


 レイは椅子に腰掛け、膝の上のみゅうを撫でていた。


 ゴロゴロゴロ……。


「にゃー」


「気持ちいいか?」


「にゃ」


 その前には黒十華が並んでいる。


 すると――


 ミリエルの表情が変わった。


「主様」


「ん?」


「侵入者です」


 室内の空気が一瞬で変わる。


「複数の気配を確認しました。城内へ侵入しています」


「こちらへ向かってくる気配もあるわ」


 エフィリアが静かに続ける。


「狙いは王族……あなたたちかもしれないわね」


 黒十華はすでに、アビス・ローゼスの調査によって魔王復活を目論む勢力が存在することを掴んでいる。


 今回の侵入者も、その一派である可能性は高かった。


 一方――


 レイの解釈は全く違っていた。


(早速、魔王の復活に気づき媚を売りに来るものが現れたか……しかし、魔王だぞ?この世の頂点に君臨する者の一人だぞ。侵入とはあまりにも無礼ではないか?––少々お仕置きが必要だな)


 レイの眉が吊り上がる。


「……魔王の復活だというのに……許さんぞ」


「……えっ?」


 エフィリアが目を見開いた。


(魔王の復活?……許さない?)


 魔王を復活させようとする集団が動いている。


 それはアビス・ローゼスがつい最近になってようやく掴んだ情報。


 まだレイには報告すらしていない。


(まさか……知っている?私たちよりも先に?あなたはいったいどこまで掴んでいるの……?)


 エフィリアは僅かに息を呑んだ。


 レイという人物が、また一段分からなくなった。


 ガタッ。


 レイが立ち上がる。


 みゅうをそっと椅子へ降ろした。


 そして黒十華を見渡す。


「さぁ、黒十華よ」


 全員の視線が集まる。


 侵入者はすでに城内。


 ここから先は――戦闘だ。


 レイが不敵に笑った。


「お仕置きの時間だ!!」


 レイがエフィリアを見ている。


「えっ?」


 エフィリアが戸惑う。


「わ、私?」


「…………」


 レイがエフィリアをじっと見る。


「……お、お仕置きの時間よ!!」


「お仕置きの時間だー♪」


 エルフィが続く。


「お仕置きの時間です」


 エルミナが静かに言う。


「お仕置きねー!」


 リズが楽しそうに杖を掲げる。


「お仕置きの時間ね」


 ルナが大鎌を異空間から取り出す。


「……お仕置き」


 クロエも超巨大斧を取り出した。


「お仕置きだにゃー!!」


 ニアの猫耳がピンと立つ。


「……私も言うの?」


 セフィラが少し困った顔をする。


「言う流れみたいです」


 ルピナが答える。


「では……お仕置きの時間ですね」


 ミリエルまで続いた。


(なんか思ってたよりノリいいな)


 だが、それはそれとして。


 侵入してきていくら無礼とはいえ、中には有能な者がいる可能性もある。


(有能な配下になりそうな奴がいるかもしれないしな)


「侵入者はできるだけ殺すな」


「はい」


「それと、城中を騒ぎにする必要もない。みんなに気づかれないよう片づけろ」


「かしこまりました」


 次の瞬間。


 黒十華が一斉に散った。


 城の中庭。


 二人の侵入者が物陰を移動していた。


「第三王子の部屋はこの先だ」


「まずは――」


 ヒュンッ!


 ブシュッ!


「ぐっ……」


 一人の眉間に矢が突き刺さる。


 そのまま倒れた。


「…………」


 隣にいたリズが、建物の陰から大弓を構えているセフィラを見る。


「殺すなって言ってなかった?」


「できるだけって言ってましたよ?」


「…………」


「…………」


「…………」


「そうね、えっとー外したら仲間に当たる可能性があったから……」


「なるほど」


 リズが笑顔になる。


「じゃあ私もやっちゃっていいんだよね?」


「それは違うと思う」


「なんで?」


 リズの周囲に炎が浮かぶ。


「基本的には殺さないの!」


 ルピナが即座に割って入った。


 別の場所では――


「どこ行くにゃ!」


「なっ!?」


 ニアが侵入者の前へ着地した。


 猫耳が揺れる。


「こ、子供!?」


「誰が子供にゃ!」


 ドゴッ!!


「ぐはっ!」


 男が宙を舞った。


 城壁付近。


「逃げ道はこっちだ!」


「急げ!」


 侵入者たちが走る。


「あら、どこへ行くの?」


「!?」


 月を背に、大鎌を持ったルナが浮かんでいた。


「ひっ……!」


「まだ何もしてないんだけど」


「死神だぁぁぁ!!」


「失礼ね」


 ルナが少し傷ついた。


 そして――


 侵入から大した時間も経たないうちに。


 侵入者たちは次々と拘束された。


 黒十華にとって、相手になるような者はいなかった。


 レイの自室。


 数名の侵入者が床に座らされている。


 その後ろにはクロエ。


「なんできみたちはこの城に侵入したの?」


 レイが問いかける。


「…………」


「答えないのかい?」


「誰が言うか!」


「クロエ」


「はい主様」


 ギュッ。


「いだだだだだだだだ!!」


 クロエが男の腕を軽く捻った。


「言う!言うから!取れる!腕が取れるぅぅぅ!!」


「まだ全然力入れてないよ?」


「え、それで!?」


 男の顔が青ざめる。


「魔王だよ!魔王復活の噂を聞いたんだ!」


「ほう」


(やはり俺の復活を知って来たのか)


 レイが納得する。


 その隣、エフィリアも同じ言葉を聞いていた。


(やはり魔王復活を信じ、その障害となり得る王族を消しに来たわけね)


 こちらも納得する。


 ただし――


 二人の理解は全く違っていた。


「––主様」


 エフィリアが一歩前へ出る。


「この者たちの処分は私たちがしておきます」


「いや……」


 レイが止める。


(無礼な奴らだが、ただ俺に媚びに来ただけなんだ。今後、使える部下になる者がいるかもしれないし)


 だから、今すぐ始末する必要はない。


「今はいいよ、逃がしてやって」


「しかし――」


 その時、


 クイクイ。


「ん?」


 レイが腕を動かす。


 クイクイ。


(なんだ?袖が机に引っかかった)


 引っ張る。


 取れない。


 クイクイ。


「…………!」


 エフィリアの目が僅かに見開かれた。


(そういうこと……!)


 あえて逃がす。


 そして、その後を辿る。


(泳がせて黒幕を炙り出せということね)


 エフィリアは静かに頭を下げた。


「承知しました」


「その者たちを逃がしてあげなさい」


「はい」


 ビリッ。


(あっ、破れた)


 レイは自分の袖を見る。


(これ、結構お気に入りだったのにな……)


 拘束を解かれた侵入者たちは、黒十華に見張られながら城外へ向かわされる。


「くそ……!」


 一人の魔族が振り返った。


「あいつら……!」


「早く行きなよ♪」


 エルフィが短剣をくるくるもてあそびながら言う。


「せっかく主様が逃がしてくれるって言ってるんだからさ♪」


「見てやがれ!」


 魔族が吐き捨てる。


「この城に火をつけてやる!全員死にやがれ!俺たちを逃がしたことを後悔させて――」


「あーあ」


 エルフィの笑顔が消えた。


「せっかく主様が見逃してくれるっていうのに」


 スッ――。


 エルフィが消える。


「え?」


「命を無駄にするんだ」


 ザシュッ!


「がっ……」


 魔族が崩れ落ちた。


 エルフィは短剣についた血を軽く払う。


「馬鹿なやつ♪」


 その後、逃がされた者たちを追跡したアビス・ローゼスは、とある商会へ辿り着いていた。


 建物を遠くから監視しながら、エフィリアが目を細める。


「あそこ……街でも噂になっている悪徳商会ね」


「きな臭い噂だけじゃなく、魔王復活を企む連中とも繋がっていたということですか」


「可能性は高いわ」


 だが、この場所はあくまで支店。


 本拠地ではない。


「ここを潰しても尻尾を切られるだけね」


 エフィリアがきびすを返す。


「今日はここまで。情報収集は怠らないように」


「はい」


 アビス・ローゼスの一人が尋ねた。


「人間に扮している魔族たちが魔王復活を企んでいる件について、主様への報告はしますか?」


「必要ないわ」


 エフィリアは即答した。


「彼はすでに知っていた」


「え?」


「いいえ……きっと、とっくに私たちのもっと先を行っている」


 夜の街を見つめる。


(レイ……あなたには、いったいどこまで見えているの?)


 翌日、エルフィは昨夜の出来事をレイへ報告していた。


「ということでー、最後の一人は城に火をつけようとしてたから倒しちゃいました!」


「まぁ、それは仕方ないかな」


「だよねー!」


 エルフィが満足そうに頷く。


 そして、ふと自分の服を見る。


 黒を基調とした戦闘用のチャイナ服。


「ねー主様、そういえば……」


「ん?」


「前から気になってたんだけど、どうして私たちの戦闘服ってこのデザインなの?」


「それは読者の欲望に――げ、げふん!」


「……読者?」


「いや、なんでもない。そのデザインはスリットが入っていて動きやすい。それに黒なら夜の闇へ紛れやすく敵の目をあざむきやすい」


「なるほどー」


 エルフィは納得したように自分の服を見る。


 だが、すぐに何かへ気づいた。


「あれ?」


「今度は何?」


「じゃあエルミナだけなんで赤なの?」


 エルフィが頬を膨らませる。


「ずるーい!私も赤がいい!」


「それは……」


 レイが少し考える。


「赤は俺のしゅ――」


「しゅ?」


「いや!」


 危ない。


「エルミナは超遠距離から攻撃するだろ?」


「うん」


「だから敵に見つかる危険は他のみんなよりかなり低い」


「それで?」


「むしろ仲間から見て、エルミナの狙撃位置が分かりやすい方が連携しやすいだろ?」


「おおー!」


 エルフィが手を叩く。


「さすが主様ー!」


 横で聞いていたミリエルがぽつりと呟いた。


「……主様は赤が好きっと」


「いや、違うから」


「覚えておきます」


「覚えなくていいよ!」


「じゃあ私はー?」


 エルフィが自分を指差す。


「黒でいいの?」


「エルフィは一番黒が似合ってるよ」


「えっ?」


 レイは何気なく言った。


(忍び的な意味で……)


「速いし、夜に紛れたら本当に見つからなさそうだし」


「…………」


 エルフィが自分の頬へ手を当てる。


「かわいいからいいんだけどねー」


 そう言いながら。


 その頬は――ほんのり赤く染まっていた。

ここまで読んで頂いてありがとうございます。

これからもよろしくお願いします!

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