2人のエルフ
第24話の更新します。
新加入のエルフの話です。
森は静かだった。
風が葉を揺らす音だけが、やけに大きく響く。
――エルフの里。
セフィラは弓を引いていた。
弦が張り詰める。
呼吸を止める。
放つ。
ヒュン――
矢は一直線に飛び、標的の中心を射抜いた。
「……またど真ん中」
後ろでミリエルが少し呆れたように言う。
「外す方が難しいんじゃない?」
セフィラは短く答える。
「いやいやいや」
ミリエルはくすっと笑った。
「ほんとすごいね」
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二人は対照的だった。
セフィラは静かで鋭く、感情を表に出さない。
ミリエルは柔らかく、人に寄り添う。
だが――
どこか似ていた。
里の中で、少しだけ浮いているところが。
⸻
「外に出てみない?」
ある日、ミリエルが言った。
「ここも好きだけど……それだけじゃ、ちょっとつまらないなって」
セフィラは森を見た。
守られた場所。
閉じた世界。
「……いいわ」
小さく頷く。
「行きましょう」
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それが、始まりだった。
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街は騒がしかった。
人間も、魔族も、様々な種族が混ざっている。
最初は戸惑った。
だが、すぐに慣れた。
「セフィラ、右頼む!」
前を走る戦士が叫ぶ。
「了解」
矢が飛ぶ。
敵の喉を貫く。
「ナイス!」
後ろで魔導士が笑う。
「ミリエル、回復!」
「任せて!」
柔らかな光が仲間を包む。
四人パーティ。
不器用な戦士と、軽口ばかりの魔導士。
セフィラとミリエル。
ぎこちないながらも、確かな連携。
戦いが終わる。
「いやー今日も余裕だったな!」
「お前、無茶しすぎ」
「結果オーライってやつだ!」
笑い声が響く。
ミリエルも笑う。
セフィラは少しだけ目を細めた。
――悪くない。
そう思えた。
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新たな任務の受注
依頼は簡単だった。
商人の護衛。
危険は少ない。
そう聞いていた。
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夜。
森の中。
焚き火が揺れている。
「明日には街だな」
「終わったら飯行こうぜ!」
「いいねー、酒も飲もう!」
ミリエルが笑う。
「楽しみだね」
セフィラも小さく頷いた。
――その時。
風が止まった。
「……何か来る」
セフィラの声。
次の瞬間。
ドゴォン!!
地面が爆ぜた。
「敵襲!!」
闇の中から現れる影。
数が多い。
動きが揃っている。
ただの盗賊じゃない。
「囲まれてる……!」
ミリエルの声が震える。
セフィラは弓を構えた。
「……戦うよ!」
矢を放つ。
一人、倒す。
だが――
次が来る。
止まらない。
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「下がれ!」
戦士が前に出る。
「ここは俺たちが――」
その言葉は最後まで続かなかった。
血が飛ぶ。
体が崩れる。
「……え?」
ミリエルの声が止まる。
魔導士が叫ぶ。
「逃げろ!!」
だが――
刃が喉を裂いた。
音もなく倒れる。
静寂。
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「捕獲対象は二人」
低い声が響く。
闇の中から現れた男。
ジャコの部下だった。
「エルフは高く売れる」
「男はいらん。利益にならんからな」
セフィラの手が震える。
ミリエルの呼吸が乱れる。
「……やめて」
声は、届かない。
「処分しろ」
命令。
刃が振り下ろされる。
――終わった。
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二人は縛られていた。
荷物のように運ばれる。
動けない。
抗えない。
ただ、現実だけが残る。
「……セフィラ」
ミリエルの声。
小さい。
震えている。
「……いる」
セフィラが答える。
それだけで、少しだけ呼吸が戻る。
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「……怖い」
ミリエルが言う。
「でも……」
「生きたい」
セフィラは目を閉じる。
そして、開いた。
「生きる」
短い言葉。
だが、揺るがない。
「絶対に」
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闇オークション。
私たちは檻の中。
すべてを失ったかに思えた。
諦めかかっていた。
その時――
「なら、来なさい」
差し出された手。
迷いのない声。
セフィラは、その手を見た。
ミリエルを見る。
ゆっくりと頷く。
そして――
手を取った。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
メイドさんたちもだいぶ増えました。
これからもよろしくお願いします。




