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俺が魔王じゃなければ誰が魔王だというんだ〜無属性と判定された王子と黒き薔薇のメイドたち〜  作者: 黒華レン
ルーヴェン王国

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エルフィvsクロエ

第10話

決勝戦です!

エルフィvsクロエどちらが優勝するでしょうか。


 三位決定戦が終了した。


 しかし、闘技場を包む熱気は収まるどころか、さらに高まっていた。


 観客たちが待っているのは、もちろん――決勝戦。


「皆様! 三位決定戦の興奮冷めやらぬ中、いよいよ本大会最後の戦いが始まります!」


 実況の声が闘技場中に響き渡る。


「それではまず――エルフィ選手の入場です!」


「うおおおおおおおお!!」


 大歓声とともに、一人の少女がアリーナへ姿を現した。


 キャラメル色の短いツインテール。


 腰には二本の短剣。


 エルフィは歓声に応えるように片手を上げながら、軽い足取りでアリーナの中央へ向かっていく。


「エルフィ選手は、この大会の噂を聞きつけ遠方の町から参戦!そして先ほど見事第三位となりましたエルミナ選手とは、なんと双子の姉妹だそうです!」


「おおおおお!」


「双子で三位と決勝進出かよ!」


「二人とも強いんだな!」


「双子揃っての実力者!エルフィ選手はここまで、その圧倒的な速度と二本の短剣を武器に勝ち上がっております!果たして決勝戦ではどのような戦いを見せてくれるのでしょうか!」


 エルフィは二本の短剣を抜く。


 くるりと回転させ、両手に構えた。


「続きまして――クロエ選手の入場です!」


 反対側の入場口から、クロエが姿を現した。


「うおおおおおおおお!!」


 先ほどに負けない大歓声。


 その肩には、もはやクロエの代名詞ともなっている超巨大斧が担がれている。


「こちらも凄まじい歓声です!クロエ選手は現在、ルーヴェン城の門番として勤務!その巨大な斧を持つ姿は城下町ではすっかりお馴染み!この町で彼女を知らない者はいないのではないでしょうか!」


「クロエちゃーん!」


「頑張れー!」


「久しぶりの優勝見せてくれー!」


「さらに情報によりますと、クロエ選手はかつて各地の武闘大会で幾度も優勝していたとのこと!こちらも相当な実力者です!」


 クロエはアリーナ中央まで歩き、超巨大斧を肩から下ろした。


 ズンッ!


 斧の石突きが地面に触れただけで、重い音が響く。


 それを見たエルフィが目を丸くする。


「へぇ……」


 超巨大斧を上から下まで眺めた。


「そのでっかい斧、本当に見かけ倒しじゃないんだ」


「そうみたいね」


「でもさぁ」


 エルフィがニヤリと笑う。


「それ、だいぶ重そうだよね?」


「重いわよ」


「わたしの速さについてこられるかなー?」


「……」


 クロエが小さく息を吐く。


「はぁ……やってみれば分かるでしょ?」


「むかっ!」


 エルフィの眉が吊り上がった。


「何その反応!」


「だって、まだ戦ってないし」


「速攻でやられて後悔すればいいわ!」


「はいはい」


「むかつくー!」


 二人が武器を構える。


 実況が声を張り上げた。


「両者、準備はよろしいでしょうか!」


 クロエが超巨大斧を両手で握る。


 エルフィは身体を低くし、二本の短剣を逆手に構えた。


「それでは――」


 一瞬、闘技場が静まり返る。


「決勝戦――始め!!」


 その声と同時だった。


 ダンッ!!


 エルフィが地面を蹴る。


「――っ!」


 クロエの目の前から姿が消えた。


 直後、


 ガキィィン!!


 二本の短剣と超巨大斧が激突した。


「くっ……!」


 クロエが僅かに目を見開く。


(速い!)


「ほらほらぁ!」


 エルフィが再び消える。


 右。


 クロエが斧を動かす。


 ガキン!


「こっち♪」


「――っ!」


 今度は左。


 ギィン!


 短剣が斧の柄に弾かれる。


 エルフィはその反動すら利用し、くるりと身体を回転させた。


 そのままクロエの背後へ回り込む。


「もらった!」


 短剣が振り抜かれる。


「甘い!」


 クロエが身体を捻り、超巨大斧を盾のように差し込んだ。


 ガキィン!


「うわっ!」


 エルフィの身体が弾き返される。


 空中で一回転。


 軽やかに着地した。


「へぇ……」


 エルフィが楽しそうに笑う。


「本当にそのバカでっかい斧でわたしの攻撃についてくるんだ」


「そっちこそ」


 クロエが超巨大斧を構え直す。


「本当に速かったのね」


「今頃分かったの?」


「じゃあ――」


 クロエの足に力が入る。


「今度はこっちから行くわ!」


 地面を蹴った。


「はぁぁぁぁっ!」


「うわっ!」


 超巨大斧が横薙よこなぎに振り抜かれる。


 ブオォォン!!


 凄まじい風圧。


 エルフィは大きく身体を反らし、紙一重で避ける。


「危なっ!」


 だが、終わらない。


 クロエが斧を返す。


「っと!」


 エルフィが跳ぶ。


 着地するより早く、斧が迫る。


「うそっ!」


 エルフィは地面へ片手をつき、そのまま身体を横へ投げ出した。


 ズドォォン!!


 超巨大斧が地面を叩く。


 石床が砕け、破片が飛び散った。


「ちょっと! そんなの当たったら洒落にならないって!」


「ちゃんと手加減してるわよ!」


「どこが!?当たったら死ぬわ!!」


 観客席から歓声が上がる。


「すげぇぇぇ!」


「なんだこの決勝!」


「今までの試合と全然違うぞ!」


 レイも特別観覧席から身を乗り出していた。


「おおっ!クロエやっぱり強い!」


 隣にいるエフィリアは、黙って試合を見つめている。


「でもエルフィって娘もすごいね」


「そうね」


 エフィリアが僅かに目を細める。


「かなり速いわ」


 アリーナでは、クロエの超巨大斧が再び振るわれていた。


 シュッ!


 エルフィが避ける。


 そのままクロエの斧を足場にして飛び上がった。


「なっ!?」


「隙あり!」


 空中から身体を捻る。


 短剣の柄がクロエの肩を捉えた。


 ドッ!


「くっ!」


 クロエが一歩後退する。


「入ったぁぁぁぁ!!エルフィ選手の一撃がクロエ選手に命中ぅぅぅ!」


「うおおおおおお!」


 エルフィはクロエから距離を取った。


「どう?」


「……」


 クロエは短剣が当たった肩を見る。


 少し痛い。


 だが、


「……ふふっ」


「ん?」


 クロエが笑った。


「やっと当てられた」


「何よ、その言い方」


「違うわ」


 クロエがエルフィを見る。


 その表情から、先ほどまでの気怠けだるさが消えていた。


「久しぶりなの」


「何が?」


「本気を出さないと勝てない相手」


「……!」


 エルフィの笑みも深くなる。


「へぇ」


 クロエが超巨大斧を両手で握り直す。


「エルフィって言ったわよね?」


「そうだけど?」


「あなた、強いわ」


「今更?」


「うん」


 クロエは笑った。


「だから――」


 全身から闘気が溢れ出す。


「ここから本気でいく!」


 ズン――!!


 空気が変わった。


「――っ!?」


 エルフィの髪が大きく揺れる。


 観客席まで届くほどの重圧。


「うっ……!」


「な、なんだこれ……!」


 前方の観客たちが顔を引きつらせる。


 中にはあまりの闘気に耐えられず、その場に倒れ込む者まで現れた。


「お、おっとぉぉぉ!クロエ選手から凄まじい闘気が放たれております!観客の皆様は無理をなさらないようお願いいたします!」


 クロエは超巨大斧を構える。


「……」


 エルフィの頬を汗が一筋流れた。


「ちょっと激しいね……」


 それでも笑っている。


「これは、ちょっと危なくなってきちゃったかなー」


 エルフィが片手を腰へ回す。


 取り出したのは小さな球体。


「だったら――これ!」


 地面へ叩きつけた。


 ボンッ!!


 大量の煙が一気に広がる。


「煙幕!?」


 瞬く間にクロエの姿が煙の中へ消えた。


「何も見えないぞ!」


「エルフィはどこだ!?」


 観客たちがざわめく。


 煙の中。


 クロエは超巨大斧を構えたまま、周囲を警戒する。


(見えない……)


 エルフィの姿が完全に消えている。


 右か、左か。


 それとも――


「これで終わりだぁー!」


 前方。


 煙の中からエルフィが飛び出した。


 二本の短剣を構え、一直線にクロエへ迫る。


「もらった!」


 その瞬間、


 クロエが笑った。


「見つけた」


「え?」


 超巨大斧を握る両腕に力が入る。


「はぁぁぁぁぁぁっ!!」


 ゴォォォォォォ!!


 クロエが斧を振り抜いた。


 刃は――エルフィには向かっていない。


 凄まじい風圧が生まれた。


「なっ!?」


 斧の一振りによって巻き起こった暴風が、煙幕を一瞬で吹き飛ばしていく。


 白い煙が渦を巻き、空高く舞い上がった。


 視界が開ける。


「しまっ――」


 エルフィがクロエの姿を捉えた時には、


 もう遅かった。


 ピタッ――


「……」


 超巨大斧の刃が、エルフィの首元で止まっていた。


 あと僅か。


 クロエがその気なら、すでに終わっている距離。


「……」


 エルフィは動かない。


 クロエも動かない。


 先ほどまで大歓声に包まれていた闘技場が、嘘のように静まり返った。


「…………はぁ」


 エルフィが小さく息を吐く。


 二本の短剣を下ろした。


「……参りました」


 その瞬間、


「決まったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 実況の絶叫が静寂を打ち破った。


「勝者はぁぁぁぁ!!」


 一拍置いて、


「クロエ選手ぅぅぅぅぅぅ!!」


「うおおおおおおおおおおお!!」


 闘技場が揺れるほどの大歓声。


「すげぇぇぇ!」


「クロエぇぇぇ!」


「エルフィもすごかったぞ!」


「最高の決勝だった!」


 クロエはゆっくりと斧を下ろした。


「ふぅ……」


 久しぶりだった。


 勝てるかどうか分からない相手。


 本気にならなければならない戦い。


 そして、


 勝った瞬間に全身を駆け抜ける、この感覚。


「……楽しかった」


 クロエがぽつりと呟く。


「ん?」


 エルフィが顔を上げる。


「何でもない」


 クロエは少しだけ笑った。


 エルフィも悔しそうに頬を膨らませながら、二本の短剣をしまう。


「次やったら負けないからね」


「はいはい」


「またそれ!」


 クロエは笑った。


 もう、大会へ参加する前の気怠そうな表情はどこにもなかった。


 そして特別観覧席では、


「決まりだな」


 レイが満足そうに笑っていた。


「クロエ、やっぱり俺のメイドに欲しいな」


 エフィリアはそんなレイを横目で見る。


「その前に、本人に聞きなさい」


「あっ」


「まさか忘れてたの?」


「いや、これから聞こうと思ってたよ?」


「本当かしら」


 レイは誤魔化すようにアリーナへ視線を戻す。


 そこでは優勝者となったクロエが、大勢の観客から歓声を浴びていた。


 最強のメイド軍団。


 その二人目となる人物が――


 ついに決まろうとしていた。

優勝戦のお話でした。

引き継ぎ更新頑張って行きたいと思います!

よかったらブックマークして頂けると嬉しいです!

よろしくお願い致します。

エルミナ

https://x.com/kurohana_ren/status/2032290604609388788?s=46&t=1KMzW7eRjAUufzTsCFI3NQ

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