精霊の怒り
「もう3日も降り続いている事態は楽観視できない状態にある」
総勢50名あまりの公爵家専属の軍隊が防寒雨に身を包み
激しい雨に打たれながら整列し軍団長である
アレイド・ウェルテックスの指示を待っていた。
「この時期に、こんな豪雨が降り続くことはまずありえない
おそらく精霊の逆鱗にふれた可能性があるが、今はそれを
調べている時間がない」
「まず、1班、2班はハーマン副団長の支持に従い
河川の氾濫しそうな場所に土嚢を積み上げろ!3班は
私についてこい、住人を非難させるぞ!」
「はい!!」
団員達の声がそろい走っていく。
雨脚は酷く前も見えない状態での作業は難航する。
それにもめげす副団長は部下に指示を出していく。
「1班はどんどん土嚢を作れ!!2班はできた土嚢をどんどん運べ!!」
大きな声すらも雨音に持っていかれる。
「団長達は大丈夫だろうか」
「この辺りは土砂崩れの危険がある、片っ端からドアを叩いて
逃げ遅れてる住人がいないか確認しろ!!」
大雨の中、一軒一軒ドアを叩いてまわる。
「早く非難してください、団員が案内します。高台の公民館に行ってください」
「こちらに来てください」
団員達も住民を誘導して行く。
「全員避難できたか?」
「ここら一帯は避難できたっす」
マックスが答えると、向こうの方から女性らしき人影が
近づいてきた。
「息子がいないんです、さっきまで私と手を繋いでいたのに
この雨で離れて、まだ4才なんです。助けて下さい」
女性は泣き崩れる。
「主人とも、、、はぐれてしまって、、、」
女性は泣きながら訴える。
「え、、えーん、、、ママ、、、」
雨の音に交じって微かに子供の声が聞こえる。
耳を澄ませ声の方に目を凝らすと、少し離れた場所に
小さな影を見つけた。
「マックス!彼女を頼んだぞ」
子供の母親をマックスに託し、男の子に向かって走り出す。
「間に合うか!」
子供に向かって岩や木が落ちてきた。
地面を蹴り男の子を抱えて横に跳んだ、ギリギリの所で岩や木々を
かわす。しかし次々と落ちてきて必死にかわしていくがとうとう
逃げ道を失い、大規模な土砂崩れが迫ってくるのが見えた。
「ごめんな、ぼうず」
男の子はアレイド胸にしがみつく。
アレイドは胸に抱く男の子を大きな体で抱え込み力強く抱きしめた。
ふと脳裏に長い黒髪の綺麗なバイオレットの瞳を持つ少女が浮かんだ。
“もう一度会いたいなぁ、笑顔も見てみたい、名前を呼ばれたい
そして名前を呼びたい”
こんな状況の中思わず微笑み言葉が出ていた
「ロリコンじゃあないはずなんだがな」
大きな地鳴りとともに土砂がせまってくる。
せめてこの子だけでも助けたい!!
無情にも土砂は団長達を飲み込んだ。
「いやあ!ジミー!」
「だ、だん、、ちょう、、、」
母親が子供の元に行こうとするのを震える声で止める。
「ダメです、今は、、、どうか」
「あ、、あ、、あああ」母親の悲痛な悲鳴が響いた。
急に雨がやみ嘘のように雲が切れ始め青空が見えてきた。
遠くから男性が走ってきた「エレノア無事か!」
「あなた、あなた、ジミーが土砂に、、、」
男性は呆然と土砂を見つめるとマックスの両肩に掴みかかり
「息子を助けてくれ!頼む息子を」涙を流しながら頭を下げる。
「すぐに、団員を呼び救助に向かいます」
落ち着かなければいけない、なのに涙が滝のように流れてしまう。




