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天使様!

痛いよ、怖いよフィー助けて。


甘酸っぱい香りに囲まれて、痛みに堪えていた。

右手で左手の傷を抑えるが止まる気配もなく

ポタポタとワンピースを濡らしていく。


こんな筈じゃあなかったのに。

咄嗟に足払いしたけど、引っ掛けて転ばしたら

サッサと逃げればいいやん、位の気持ちだったのに

足が痛くて逃げられないなんて。


足首を見るとパンパンに腫れてきてる。

フィーの言葉が脳裏に浮かぶ〈骨も脆いぞ〉


忘れてた。


全てが赤ちゃん並みだ。

どうしよう、痛くて動けないし、せっかく大切な愛し子の

体をもらったのに死んじゃうのかな?

ダメダメ諦めたらダメだ。この位の怪我では死なない、よし

大丈夫だ。まだ頑張れる。


あれ?何か声が聞こえる気がする、もしかしてあの怖い男が追いかけてきたんだろうか。

静かに隠れていよう。小さく目立たないように。


ガサガサ草をかき分け近づく音がする。

近づいてきた、フィー怖いよ。


「お嬢さん」


あまりに優しい低音ボイスにビックリした。

なになに、なんていい声。

怪我をしていることも忘れるほどの好みの声に

思わず肩が震え後退りをしてまうが足が痛んで動けなかった。

ダメだ、好みの声すぎて鼻血が出そう、思わず体に力が入ってしまった。


「お嬢さん、何もしません。先程、助けてもらった者です。

決して傷つけないので、その怪我を見せてくれませんか?」


もしかして、さっきのカッコいい人なのかしら。

いやいや、さっきからそう言ってるよね。

だったら大丈夫かしら。

勇気を出してそっと怪我をした手を差し出した。


「少し触りますね、痛かった言ってくださいね」


暖かい手が私の手に触れた時、ドキリとして顔を上げてしまう。

フードがずり落ちお互いの顔が見えた時。

輝く銀の髪、晴れた空の色の瞳に

〈天使様!天使様だ!こんなに綺麗な男の人はいないよね。

ああフィーお迎えが来てしまったよ、ごめんなさい〉

申し訳なさに涙が溢れ出た。


綺麗な男の人は申し訳なさそうな顔をして

「ハンカチを巻くから少し我慢して」


あれ?天使様じゃない。。。そうよね、さっきから優しく語りかけて

くれてるし、よく見たら羽がないわ。

あんまり綺麗で勘違いしちゃった、恥ずかしい。

触る手が温かくて優しくて、声も素敵すぎて痛みよりそっちの方に

ドキドキしっぱなし。

惚れてまうやろう!どこかのお笑い芸人さんが叫んでたなあ。

どうでもよい懐かしの前世の記憶を思い出して、気が抜けると

呆気なく意識を失った。




いったー!あまりの痛さに目覚めると、知らないおじさん。

目を見開いて見つめると、おじさんが「痛かったかい、ごめんね」と言った。


「今から傷を縫うけど、麻酔草をつけたからもう痛くないよ。ちょっと

我慢してね」


おじさんが指を器用に動かすとキラキラした糸が指先から

つむぎだされた。

手品か!と心の中でツッコむ。


紡がれた糸が手の動きにあわせて傷を縫っていく。

本当だ痛くない、縫われていく傷口がキラキラと光っている。

不思議だあ、と思っているとおじさんが教えてくれた。


「私は治癒の精霊の加護を受けていてね、色々と治療する力があるんだよ。

体の悪い所も見つけられるんだよ。パッと治せないのかって思っているね、

あくまでも精霊は力を貸してくれるだけなんだよ」


コクコクと頷く。


中世のお医者さんぽいな、そう言えば皆んな中世っぽいカッコしてる。

メイドさんっぽい人や執事さんっぽい人もいるなあ。

キョロキョロしていると

お医者さんが「団長を探しているのかい?団長は今、部下と君のご両親を

探しにいってるよ君は言葉はわかるようだが、外の国の子かい?」


まだ、声もうまく出せないし、どう言えばいいのか考えあぐねていると

バタン、と扉を開ける音がして団長さんが帰ってきた。


「気がついたかい、痛みはないかな?ご両親を探したんだけど

見つからなくてね。大丈夫だ、必ず見つけてあげるから」

そう言っておでこにキスを落とした。


あまりの衝撃に疲れも重なって再びきを失った。



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