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哀れな女

《よく、ここがわかったな》

下卑た声の主はマリアンヌだった。


黒いオーラをまとい、サラを押さえつけている。


「サラ!」

叫ぶように名を呼ぶとピクリと反応し伏せていた顔を

少し上げた。青白い血の気の失せた顔だった。


「・・アー・・レ・・ン」


“プツリ”


か細いサラの声を聴いた瞬間アレイドの中で何かが切れた。


アレイドはすごいスピードで走り込みマリアンヌと距離を

つめた。


《がはは、この女はわしが乗っ取っている、わしを倒し

たければ、この女も死ぬことになるぞ。よいのか?》


周りの団員達も何が起こっているのかわからないが、

マリアンヌ譲が何かに乗っ取られサラに危害を加えている。

それは分かっていても侯爵令嬢に切りつける訳にもいかず

現状に手が出せずにいた。

ひとりを除いて。


つかつかとマリアンヌに近づき、思いっきり顔面を殴った。


   「「「殴ったー!!」」」


マリアンヌは吹っ飛び周りの団員たちは顔面蒼白になった。

吹っ飛び転がるマリアンヌに剣を向け切りかかろうと

すると、黒い霧がマリアンヌから浮かび上がり離れていく。


それを確認したアレイドはサラに駆け寄り抱き起した。

「サラ、サラ、大丈夫か!」

そっと目を開けアレイドの姿を確認したサラは目から

大粒の涙をながした。

「アーレン・・・」

「遅くなってすまなかった」

サラは横に首を振りアレイドの首にしがみついた。

「助けに来てくれてありがとう」


か細い声に抱きしめる力がこもる。


「イチャつくのは後にしてくれってかあれは何だ?」

リカルドが叫ぶ。


「そうだサラあいつの正体を知っているのか?」

アレイドが尋ねると悲し気に頷き

「悪い精霊・・?」とだけつぶやいた。


「よし!わかった!」


「「「なにがーー!!」」」


「サラが悪い奴と言えばそれでいい!スレイ今度こそ

彼女を守れ!」


「はい!!」

サラをスレイに渡し黒い霧と向き合う。


炎を剣に纏わせ黒い霧に切りかかる。

だが実態を持たない精霊には効かなかった。

黒い霧が散りまた集まる、その繰り返しにアレイドや

団員達が疲れを見せ始めた。


「ちっ!きりがない!何か手立てはないのか!!」


「アレイド!あいつが何かわからないんじゃあ弱点を

知ることもできないぞ!空気のようじゃあ切っても

切ってもきりがない!」


空気?そうか!実体のない精霊が唯一殺せるとしたら

何かに憑依させればいいんだ。

体に繋がった瞬間に切る!

よし!


アレイドは覚悟を決めたように皆を呼び囁いた。


「やっつける方法がわかったぞ!実体がないなら体を

与えてやればいいんだ、そして憑依したところを切る!」


「理屈はわかったが誰に憑依させようと言うんだ、切ったら

そいつも死ぬんだぞ・・お前まさか・・・!」


「ああ・・俺が・・・」

「アレイド!!」

「「団長!!」」


「俺が責任もってマリアンヌに憑依させる!」


    《《えーーーー!!》》


「お前、ほんとサラちゃん以外には容赦ないな・・・」


「あたりまえだろう!と言いたいがマリアンヌ

以外適任者はいないんだ、あいつはたぶん、まだマリアンヌ

と繋がっているだろう。よく見てみろ」


リカルドが目を凝らすとうっすら黒い霧がマリアンヌへと

続いていた。


「だから、もう一度体に入れやすいと思う、あいつは

女の執念深さを甘く見ているからな、それにあれだけ

精神を乗っ取られたら、たとえ切り離せても、もとには

戻れないだろう」

「そんな・・」

「だったら役に立ってもらおうか、サラを傷つけたんだ」

「そっちか!だが操られていたんだろう?」

「たとえ操られたとしても根底になければ、あんなことは

しない」

「了解、残念だがしかたないな」

「意外と見切りが早かったな」

「俺だって怒ってるからな」


《何をゴチャゴチャ言ってるんだ、さあどうする?

諦めるか?その女を渡すか?》


こそっとリカルドに耳打ちをする

「マリアンヌに憑依させるから、やつの気をそらしてくれ」

「了解」


アレイドはマリアンヌに向かい話しかける。

「マリアンヌ、お前はいつもつまらん女だな」


アレイドが声をかけるとピクリと肩を震わせむくりと

体を起こし顔を上げる。

血走った眼をギラつかせ鼻血を滴らせる光景は気の

弱いものなら悪夢を見てしまいそうだった。

アレイドはそんな光景をものともせず畳み掛ける。


「お前だけの力では俺をモノにすることはできないぞ!

さあ、どうする?」

「お前を私のモノにする!モノにする!モノにする!

侯爵夫人になるのは私だ~!!」


マリアンヌが叫び声をあげた途端、風が巻き起こり霧が

引き寄せられる。

《なんだ、なにがどうなっている!あの女にこんな力は

ないはずだ!!》

黒い霧がどんどんマリアンヌに引き寄せられる。


「女の執念ってこえ~」

リカルドがつぶやいた。

「のんびりするな入った瞬間やるぞ!躊躇するなよ」

アレイドは剣を構える。

「了解!」


《させるか!下等な女め!》

もう少しでマリアンヌにすべての霧が吸収される瞬間

まがまがしい声が響いた時、吸収されかかった黒い霧が

爆発したように弾け、マリアンヌの体が飛んで行った。


「ちっ!もう少しだったのに」


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