心穏やかではいられない
「死にたいか!!」
その声を聴いた辺りで静寂につつまれ、私の視界は遮られた。
うん、後ろからリサに耳を塞がれ、目の前にはマントを広げてスレイが
立っている。マントを広げて立っているって聞くと変態チックに聞こえるけど
私に背を向け片手でかっこよくマントを持って広げてるんだからね、
変態じゃあないよって誰に説明してるんだ?私は。。
何が起こってるのかわからない、しかし耳を塞がれたからってまったく聞こえないわけではないけど、
くぐもったアレイド様?の声が聞こえる。なんか怒ってるみたいなんだけど、
カートが迷子になったから怒られてるのかしら?
でも、私のこれはなんだ??なんで耳を塞がれてスレイは前に立ってるんだろう?
見聞きしてはダメなこと?ワタワタと暴れてみるもがっちり塞がれている。
ならば、静かにして耳を澄ましてみよう少しくらいは聞こえるかもって耳元で
リサが歌うたってる~!そこまで!!
そうこうしている、気が付けば遠くに何かを担いで走る副団長さんの姿が見え
目の前からスレイがどいてアレイド様が目の前にいた。
リサも歌をやめ、手を離してくれた。
「アーレン様なにがありましたか?おこってましたか?」
アレイド様は少し困ったような顔をして
「怒ってないよ、遅くなってごめんね。体調はどう?待ってる間に気分が悪くなったり
してないかな」
いつもの優しいお顔にホッとする。
「だいじょうです」
「ケーキもあるよ、先生も食べていいって言ってたから安心して」
アレイド様の手にあるショートケーキにくぎ付けになる。
イチゴのショートだけど大きなイチゴを乗せるのではなく、
薄切りにしたイチゴが幾重にも敷き詰められている。
食べやすいように工夫してくれてあるのだ。
ここのシェフはいつも私の体調に合わせてくれるシェフが大好き!
ケーキを貰おうと手をだすと、ひょいっと引っ込められた。
え~~~!!意地悪ですか!!
「サラ、はいあ~ん」
マジか!まあ妹ができたばかりの兄ならばあ~んもしたかろう。
それ位で照れることもないので、素直にあ~んする。
だって、食べたいんだもん。
なのになかなか口にケーキがこない、なぜに?
あれ?アレイド様かたまってる?口を大きく開けすぎてびっくりされてる?
恥ずかしい!!口を閉じて下を向いてしまった。
泣きそうだ。。。
慌てたアレイド様が可愛くてつい見とれちゃったんだよ、ごめんね、と。
膝にのせて謝ってくださった。
頭にキスをしてケーキを食べさせてくれたので、ちょっと元気になった。
とても美味しいケーキでとても幸せ。
「さあ、あんまり長く外にいるとまた熱がでるかもしれないから部屋にはいろうか」
「あい、たのちかったです」
すっと抱き上げられて部屋に向かう。
もう運んでもらうのが当たり前になってる気がする。
早く足を治して自分で歩きたいな~。
部屋のソファーに座らせてもらうと流石に少し疲れたかな、久しぶりの外出だもんね。
リサが温かいミルクをだしてくれてほっこりした。
「じゃあゆっくり休むんだよ、私は仕事に行くからね」
ニッコリ微笑み安定のおでこにキスをして仕事に向かわれた。
執務室に入るとリカルドがソファーに座って待っていた。
「落ち着いたかアレイド」
先ほどの事を言っているのだろうが、余計なお世話だ。
「うるさい!」
「まあ怒るなよ、しかしお前があんなに怒るなんてめずらしいな、あいつサラとお似合いだったしな」
リカルドを睨みつける。
あの時。。。
「死にたいか!」
振り下ろされる剣をカートは飛んでよける。
「なんなんですか!いきなり!」
それに答えず胸倉を掴んで持ち上げて睨みつける。
サラの方に目をやればリサとスレイがこちらが見えないようにしているのを確認してから
「何をしていた!ここは立ち入り禁止だ、お前がいていい場所ではない!」
「ちょっとよそ見をしたらはぐれただけです」
アレイドは力任せにカートを放り投げた、カートはしたたかに地面に叩きつけられ
呻きながら体をおこした。
「なんなんですか!ちょっと迷っただけでしょう!」
殺気を隠しもせずアレイドが怒鳴る。
「お前がしなければならないことは、しっかり上官の後を付いていくことだ
女の子についていくことではない!」
カートはピンときたようで
「団長は何にお怒りですか?サラの横に座ったこと?それともプロポーズしたことですか?
あれだけ自分の色をまとわせて独占欲まるだしですもんね」
カートの言葉に副団長がいさめる。
「カート!お前にそんなことをいう資格はない、口を慎め!」
「入って直ぐに退団したいようだな」
アレイドが冷たく笑う。
流石にまずいと思ったのか
「申し訳ありません、はぐれたのは私の失態です。また、団長に対して立場もわきまえず
失礼をいたしました」
アレイドがフーッと息を吐き副団長に連れて行けと合図した。
「ですがサラのことは本気です、一目ぼれなんです」
「ほう、面白いことを言う」
アレイドを纏う空気が氷のように冷たくなっていく、顔は笑っているが目は全く笑っていない。
ヤバいと思った副団長が後ろからカートを殴って気を失わせ担いで走って行く。
「親友を殺人者にするわけにはいかない!!なんなんだお前、立場をわきまえろ~!」
副団長の叫び声が響き渡った、が、そのころ当事者のサラはリサの歌声でいたって一人平和だった。
アレイドはスレイの前に行き
「なぜ、あいつがサラの横に座っていた?お前はな護衛だろう?俺の勘違いか?」
殺気のこもった声でスレイに話しかける。
「申し訳ありません、以後気を付けます」
「以後があればな、どけ」
スレイの陰にいたサラのキョトンとした顔を見ると少し落ち着きを取り戻した。
俺はどうしたんだろうな。
「とりあえず、入団そうそう謹慎処分にしてあるから落ち着てくれよ
あの子のことになると冷静でいられないんだからな、あの子が大人になるまで兄でいるんだろう。
まあ無理だろうがな、お兄ちゃんって呼ばれて切なそうな顔しやがって」
遠くを見つめながら呟くように
「わかっている、どうしても一人の女性として見てしまうんだ。しかも悔しが年回りも
あの新人の方が似合いだろう」
切なげな顔にリカルドは何も言えなかった。




